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コロナ禍と向き合うエーゲ海の夏 ギリシャ・ミロス島 

欧州の人びとにとってなくてはならない夏の休暇。観光に頼る国々にとっても夏は勝負所だ。ロックダウン解除とともにEU域内の移動がある程度自由になった2021年夏、ギリシャのエーゲ海に浮かぶミロス島を7月に訪れた。ミロのヴィーナスが発見された古代の歴史と雄大な自然が溶け合う美しい島は、コロナ禍と向き合いながら落ち着きを取り戻しつつあった。(文・写真・動画:クレイトン川崎舎裕子=在ベルリン)

【動画】ギリシャ・ミロス島のサラキニコ

デジタルワクチン証明携えギリシャへ

今年の冬は長かった。

私が住むドイツでは昨年末からおよそ半年間、コロナ禍のためロックダウンが続いた。カフェに座って体を温めることもできない中、人びとはわずかな日照時間に黙々と散歩をするだけだった。

欧州の冬が厳しい国に住む人にとって、夏休みは特別な意味がある。太陽が照りつける南へ旅して、欠乏していたビタミンDを取り戻すのだ。夏休みを見計らったように7月、ワクチン接種を示す欧州連合(EU)共通のデジタル証明が本格運用を開始した。ドイツから隔離なしで行ける国もある。

太陽が浴びたい。

ワクチン接種を2回終えた私たち夫婦は、証明となるQRコードをスマートホンに取り込んだ。国によってはこれで、入国前の新型コロナウイルス検査が免除される。ワクチン未接種で陰性証明が必要な子どもたちの抗原検査を前日に済ませ、私たちはギリシャへ飛んだ。

「規制は更新される」を実感

「感染者の増加で、フェリーに乗る際の規制が厳しくなったみたい」

そう教えてくれたのは、ベルリンからの直行便で到着したギリシャ・サントリーニ島のレンタカー会社の女性だった。サントリーニ島からフェリーで2時間のミロス島へ向かおうとした時だった。

調べると、ワクチン接種証明がない人は、本土から島へ移動する際に検査が必要になったようだ。島から島へ移動する私たち家族には検査の必要がないことを確認。常に最新情報を確認する手間があっても、状況に応じて規制を調整していることにむしろ安心する。

「マスクをしてください」。フェリーに乗り込む乗客に声がかかる。着席するとまた、クルーがマスクのチェックにまわる。ギリシャでは、屋外でのマスク着用義務は混雑した場所を除き6月に解除されたが、屋内ではマスクが必要。休暇でリラックスした観光客を制するのはひと仕事だろう。

ギリシャ政府は5月、観光地である島々の、全住民へのワクチン接種を目指す計画も発表している。観光客は安心できないと戻ってこない。観光に頼るギリシャも必死なのだ。

洞窟ワイナリーに泊まり、泳いで、食べる

「去年は海外からの観光客はほとんどいませんでした。今年は順調です」

日に焼けた笑顔で話すのは、ミロス島で滞在した宿泊もできる「コスタンタキス ミロス洞窟ワイナリー」のアネタ・ミゼルスカさんだ。ここで受付をするミゼルスカさんは、おすすめのビーチをいくつか教えてくれた。ミロス島の海は、場所によって色も波も表情も違うという。

アネタ・ミゼルスカさん
アネタ・ミゼルスカさん

私たちはそれをひとつひとつ訪れてみる。気に入ったビーチをまた訪れる。6日間の滞在ではとても足りない。

「コスタンタキス ミロス洞窟ワイナリー」
ワインのテイスティングが楽しめる「コスタンタキス ミロス洞窟ワイナリー」

すべてを「こなす」ことをあきらめると、しだいに休暇のペースができてきた。朝にひと泳ぎし、食べて寝て、夕方に泳ぎ、また食べる。

シンプルで、素材が際立つ料理

タコの料理
ギリシャ料理の定番、タコのグリル

ミロス島では、何を食べてもおいしい。オリーブオイルとレモンとオレガノだけで味付けされたような料理が多い。そのシンプルさゆえ、焼いたタコでもゆでた青菜でも素材の味が際立っている。

ゆでた青菜の料理
アマランサスの葉を使った、ホルタと呼ばれる青菜料理

料理に合う地元のワインもある。「イエスのずっと前の時代から、みな自家製ワインを造っていた」と言うのは、「コスタンタキス ミロス洞窟ワイナリー」のコスタス・マリスさん。先祖代々、島北東部のポローニアに住む。「1950年代までこの辺りには家なんかなくて、人は洞窟に住んでいたよ」

コスタス・マリスさん(右)と息子のペトロスさん
コスタス・マリスさん(右)と息子のペトロスさん

その洞窟の脇でマリスさんはワインを造り、温度が安定した洞窟に貯蔵する。毎年売り切れるワインが、コロナ禍で昨年は半分近く残ったと言うのは、息子のペトロス・マリスさんだ。

ワインは洞窟に貯蔵されている
ワインは洞窟に貯蔵されている

「それでもミロス島では、商売をする人は土地も持っていて家賃の心配がないし、観光業のほかに鉱業もあるのでなんとかなりました。感染者がでた時も、島だから抑え込めた。島民のワクチン接種率も8割を超えて、人もリラックスするようになりました」

ポローニアの遠望
ポローニアの遠望

マリスさんのワインは、潮の入り交じった風と、惜しみなく降り注ぐ太陽にきりりと合う。宿のテラスに寝転がって飲む一杯で、コロナ禍をひと時忘れてみる。
 

NEXT PAGE「人のいる風景」に安堵

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