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渡辺早織の思い出ちょっぴり、つまみぐい。
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引っ越し×エビ蒸し餃子 自分だけの宝物、いまは誰かと

料理好きな俳優・渡辺早織さんが心に寄り添った手料理を紹介する新連載です。ほろ苦かったり、甘酸っぱかったり、思い出とつながったご飯は何だか忘れられません。明日を頑張るあなたの活力になりますように……。そんな思いを込めた料理エッセーです。詳しい作り方はフォトギャラリーでご紹介します。

「一番好きな食べ物はなんですか?」

その答えを探すのはだいたい困難で、時に口元をニヤニヤさせながら時にうなるように考え込んで最適の答えにたどりつくよう頭をひねる。

なんてことない質問だけど、それは同時に人生をかけて真剣に答えを探さねばならぬような意味深さをもっている、気がしている。

「好き」の過程には、どこかに思い出がひそんでいるものだ。値段や知名度では計ることができないその人にとっての価値。とっても気になるから、「一番なんて決められないよ」と困らせながらもつい色々な人に聞いてしまう。聞いておいて自分で答えないのはずるいから、私も必ず答える。

私の一番好きな食べ物は、しゅうまいだ。

渡辺早織さん

時をさかのぼって、私は小学生になったばかりだった。引っ越してきた新しい街で、自分のことを口に出すことがさらに苦手だったあの頃に、人知れず楽しみにしていた時間があった。

その街にはミスタードーナツがあって、家族で買い物したあとによく立ち寄った。そのとき注文した当時の汁そばセット。肉まんとしゅうまいとエビ蒸し餃子(ぎょうざ)がセットになっていたもので、その当時の私への破壊力たるや、すさまじいものだった。

ふたをあけると、ふわっと広がる湯気の下に顔を出す小さな点心。初めて見るそれらはピカピカと輝いていて、かわいらしくてぎゅっと心をつかまれた。たとえるならば、化粧箱をパカッとあけてキラリと光る指輪が入っていた時の、ダイヤの美しさだけではないシチュエーションを含めたトキメキを、そこに感じていたのだ。一口で食べたらすぐなくなってしまうその小ぶりさも、それらをより大切な気持ちにさせた。

暗闇照らすランプのような存在

私の点心の原体験。全部好きだったけど、その中で日常に寄り添ってくれたのがしゅうまいだったから、気がつくと一番の存在になっていたのだ。お弁当や、留守番中に冷凍食品をチンすることだって楽しい時間に変えてくれた。今でも蒸しあがった小さい何かは、私を特別な気持ちにさせてくれる。

今思えば、引っ越したばかりの心細い胸の中の暗闇をポッと明るく照らしてくれるランプのような存在だったのかもしれない。とにもかくにも、それが私の好きな食べ物だ。

今日はあえてエビ蒸し餃子に挑戦する。その理由は、自分を更新するためだ。しゅうまいよりも特別感があるから憧れの存在になっていたけれど、大人になった今なら自分でも作れるのかもしれない。エビのピンクがほんのり透けたきれいでかわいいもちもちの餃子。今日はいつもと違う自分になってみよう。

NEXT PAGEもちもちの皮はコツいらず、エビもプリッと

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