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近代建築の巨匠ル・コルビュジエ、幻の自動車構想

「ル・コルビュジエ—旅・オブジェそしてコレクション」展の会場 (photo : Pinacoteca Agnelli)

パリの車社会を見据えて

さらに1925年の現代装飾美術・産業美術国際博覧会で彼が公開したパリ大改造構想では、ヴォワザン社の後援を得ていたことから「ヴォワザン計画」と名づけている。計画は、幅120メートルの幹線道路と碁盤目の自動車道を組み合わせたもので、来たるべき車社会を想定した大胆な試みだった。

ル・コルビュジエ
ル・コルビュジエの愛用品も展示された。彼のトレードマークでもあった眼鏡 (photo : Pinacoteca Agnelli)

参考までに、彼と並ぶ20世紀建築の巨匠フランク・ロイド・ライトも1920年代から30年代、アメリカで自動車を想定した建築や都市構想を打ち出している。コルビュジエが拠点としていたパリは、ヨーロッパでは最も早くから車が普及した都市であった。だが、自動車の大衆化という点で米国より遅れていた同地で、来たるべき時代を考えていたことに、彼の先見性が見て取れる。

1935年の米国旅行ではデトロイトに降り立ち、フォード工場を見学していることからも、自動車への並々ならぬ関心が窺(うかが)える。

トリノの企画展で特筆すべきは、彼が考案した自動車と、フィアット社との関係に関する資料が回顧されていたことである。

今回展示されていなかったものの、彼がスケッチした自動車で年代が記された最も古いのは、1928年のものだ。後年にみられる短いフロントノーズや平面的なサイドが早くも提案されている。

「ヴォワテュール・ミニマム」

これはのちに「ヴォワテュール・ミニマム」と称する自動車構想に発展する。Voiture minimumとは最小限自動車の意味である。ル・コルビュジエは「最大限の機能を備えた最小限の車」と解説している。そのため、ヴォワテュール・マキシマム(最大限自動車)の別名でも呼ばれることがある。

ル・コルビュジエ展
「ヴォワテュール・ミニマム」構想図から。フロントウィンドー、サイドおよびルーフから後部へは二次元曲面で構成されている (photo : Akio Lorenzo OYA)

フロントウィンドー、サイド、およびルーフから後部のスロープはシンプルな二次元曲面で構成されている。エンジンの搭載位置は、図面によって冷気の取り入れ口や後方にクランクが描かれていることからもわかるように、当初からリアエンジンを前提としていた。

ル・コルビュジエ展
側面に支持金具を介したステップをもち、後部バンパーは半円状のユニークなものである。その間には、クランクも描かれている (photo : Akio Lorenzo OYA)

1936年には、いとこのピエール・ジャンヌレとともに、ヴォワテュール・ミニマムでフランス自動車技術者協会(SIA)の設計コンクールに応募している。前年である1935年の募集要項を参考にすれば、低価格・低維持費・かつ十分な性能の乗用車設計を競うコンペティションであった。

興味深いのは、彼の建築同様に人間のサイズから周到に割り出したとされる、その車体寸法だ。全長約3.7メートル×全幅約1.8メートルはいずれも今日の日本における軽自動車規格(3400mm×1480mm以下)より大きい。したがって、現代のサイズ感覚でいえば”最小限”ではない。後述する原寸大モックアップが人々に与える印象も同様である。とりわけ全幅は1934年に発売されてセンセーションを巻き起こした「シトロエン・トラクシォン・アヴァン」よりも大きい。だが、その余裕ある幅を生かして、3名の乗員を横並びに座らせている。

ル・コルビュジエ展
ジョルジェット・ジウジアーロ『ヴォワテュール・ミニマム原寸大模型』1987年、木 トリノ自動車博物館蔵 (photo : Italdesign)
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