パリの外国ごはん ふたたび。
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ぷくぷくのモモから、飛び出す肉汁。湯気が恋しい秋の粉物ざんまい/Bar à momos

連載「パリの外国ごはん」では三つのシリーズを配信しています。
《パリの外国ごはん》は、フードライター・川村明子さんと料理家・室田万央里さんが、暮らしながらパリを旅する外国料理レストラン探訪記。
《パリの外国ごはん そのあとで。》では、室田さんが店の一皿から受けたインスピレーションをもとに、オリジナル料理を考案。レシピをご紹介します。
今週は、川村さんが心に残るレストランを再訪する《パリの外国ごはん ふたたび。》です。

秋分を迎える週の始まりに週間天気予報を見たら、朝の気温が10度を切る日が2日あった。日中の気温は20度前後まで上がるものの、いよいよ秋が本格化することを察してうれしくなる。湯気立つ何かを食べに行きたい。湯気を囲んで食事を楽しみたい。そんな気持ちがむくむくと湧き上がって脳裏に浮かんだのは、蒸篭(せいろ)。そうだ! 蒸し餃子(ギョーザ)を食べに行こう!と心が決まった。

バスチーユ広場とナシオン広場を結ぶ、フォーブール・サンタントワーヌ通りに店を構えるチベット料理店Bar à momos(バー・ア・モモ)は、その名が示すようにモモ=チベット餃子を堪能するのに打ってつけだ。

ぷくぷくのモモから、飛び出す肉汁。湯気が恋しい秋の粉物ざんまい/Bar à momos

店内右手にある厨房(ちゅうぼう)は、壁が一部、額縁のようにくりぬかれている。ガラスなどははめ込まれておらず、だから、店内から直接話しかけることもできるその場所で、ご主人が生地をこねたり麺を打ったりしている。その光景を思い出し、粉物ざんまいを楽しみたい!と、近くに住む友人を誘ってランチに出かけた。

朝起きたときには10度で、ニットの羽織りものが必要だったけれど、お昼には、日の当たるところだと軽く汗ばむくらいの見事な快晴となった。店に着くと、入り口の扉は開け放たれ、外にはテラス席が4卓。食べている途中に寒くなるだろうかと迷ったものの、あまりに気持ちのいいお天気に、外で食べることにした。

ぷくぷくのモモから、飛び出す肉汁。湯気が恋しい秋の粉物ざんまい/Bar à momos

メニューをもらったら、前とデザインが変わっていた。でも料理のレパートリーはほぼ同じでホッとする。

スープと花捲(ホワチュワン、中華料理の饅頭の一種)が書かれた前菜にちらっと目をやりつつも、モモも手打ち麺も食べたかったから、前菜は取らない方がいいだろう、と判断した。メイン料理の最初に掲げられているのはモモで、牛肉、豚肉、ジャガイモ、それに、ホウレン草とキャベツにチーズ、という4種があるようだ。

続いて書かれたスープの欄には、手打ちの麺入りが二つと、一口大のパスタのような麺入りが一つ、あと、モモ入りがあった。このモモは、具も選べる。さらにチャーハンや焼きそば、揚げ餃子などのスペシャリテもあって、選ぶのに難儀した。

考えに考えた結果、「今日はモモを味わおう!」と行き着いた。蒸しバージョンの方は、友人とシェアすることにして、豚肉を選択。スープに入っている方は、ベジタリアンを選んだ。蒸すものよりもサイズは小さいとのことだが、15個も入ってくるという。それに、チベット茶なるものも試してみることに。

ぷくぷくのモモから、飛び出す肉汁。湯気が恋しい秋の粉物ざんまい/Bar à momos

ほどなくして、これはビールのジョッキだろうか?と思うほど大きなコップにお茶が出てきた。クコの実やナツメが浮いている。これは温まりそうだ。飲んでみると、ほのかに甘みがあり、身体(からだ)の内側からほぐれていく感じがした。

最初に運ばれてきたのは、友人が頼んだ、ひき肉の煮込みが具の麺だ。以前来たときに、ジャージャー麺を注文したのでそれかと思っていたら、麺は同じようだけれど、全体像は違った。でも、その皿を見て「そうだ、この店、太っ腹な量なのだった」と思い出した。

ぷくぷくのモモから、飛び出す肉汁。湯気が恋しい秋の粉物ざんまい/Bar à momos

と、そこへモモがやってきた。蒸籠は2段重ねられている。それぞれに四つずつ入って、計8個。ふたを開けると、待ちかねていたかのように湯気が立った。それにしても、モモが大きい。麺の皿と並べて見てみると、その大きさがよくわかった。横から見ても、ぷっくら膨らんでいて、なんとも食べ応えがありそうだ。

ぷくぷくのモモから、飛び出す肉汁。湯気が恋しい秋の粉物ざんまい/Bar à momos

大口を開けてかじりついたら、反対側(底の方)から汁が飛び出した。うわっと慌てて口元から離し、かじりついたところを見てみるとあふれんばかりの肉汁が見て取れた。こぼれてしまう前に、逃したくない一心ですぐさまもう一口。ジューシーな肉ダネにはニラだけが加えられているようだ。

ぷくぷくのモモから、飛び出す肉汁。湯気が恋しい秋の粉物ざんまい/Bar à momos

十分味付けがされており、添えられた唐辛子のタレは必要なかった。具材はシンプルなのに、肉汁のうまさとニラがパンチを効かせて、味にボリュームがある。それに何より、皮がおいしい。それほど分厚くなく、むしろ薄めなくらいなのに、ぷりっとした弾力と、粉の風味を感じた。

友人の麺を味見させてもらうと、こちらはとても優しい味で、玉ねぎの甘みとみずみずしさが立っている。調味料は最小限しか使っていないように思えた。輪郭のはっきりした味付けではなくて、ゆえに、ずっと箸が進んでしまう感じの味だった。

ぷくぷくのモモから、飛び出す肉汁。湯気が恋しい秋の粉物ざんまい/Bar à momos

そこへ登場したスープのモモは、これまたぷくぷくしている。汁があふれ出すかもと、今度はあらかじめレンゲを下に添えてかじると、野菜ベースだからか汁があふれ出すことはなかったのだけれど、バターのような風味を感じた。ベジタリアンのモモには、チーズが具材に名を連ねていたからそれだろうか。試しに、と唐辛子のタレをつけてみたら、味に膨らみが増して、よりおいしくなった。唐辛子を水で溶いてほんの少ししょうゆを加えただけかに思える油っ気のないタレもまた、香ばしくて、おいしいのだ。そしてやっぱり、皮が美味。

一歩と言わず、二歩ぶんくらい控えめな味付けのおかげで、野菜の味も、皮の食感も、粉の風味もしっかり堪能し、十分すぎる量を完食して、文字通り満腹になった。

帰り際、厨房に立つご主人に、ベジタリアンのモモに入れるチーズは、何の乳で作られたチーズか尋ねたら、「フランスにはヤクがいないから、普通の牛」と答えが返ってきた。

もう少し寒くなったら、別の具のモモ入りスープを食べに再訪したいと思う。その時は、店内で、麺を打つ厨房の様子を時々うかがいながら、食べることにしよう。

ぷくぷくのモモから、飛び出す肉汁。湯気が恋しい秋の粉物ざんまい/Bar à momos

Bar à momos(バー・ア・モモ)

218, rue du faubourg Saint-Antoine 75012 Paris

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