久保純子 LIFE in N.Y.
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多様性の街・NY。誰もが自分らしくいられる社会を

2人が「ドラァグ」を始めた理由

多様性の街・NY。誰もが自分らしくいられる社会を
photo@maryanne.braine。日本が大好きなダッキーさんとパッツィーさんが、10月初旬にコロナ禍で奮闘するアーティストの皆さんを集めて、「紅白」ならぬ「ピンクとゴールド歌合戦」を開催

このイベントを主催したドラァグパフォーマーの“ダッキーさん”と“パッツィーさん”は、小学生の時に初めて自分が男性であるというアイデンティティーに疑問を持ったという。アメリカの中でも保守的な考え方が根強いサウスカロライナ州の小さな町の出身で、母親からは常に「男の子は泣いてはダメ。男らしくしなさい」と言われながら育てられたそうだ。男性が“女性的”な作業やしぐさをするのはもってのほか。バギーを押すお父さんの姿は皆無だと。

多様性の街・NY。誰もが自分らしくいられる社会を
ヘアメイク@saomorris。ヘアメイクやスタイリストなどスタッフは全員日本人。私も2人の活動を応援できればと、お手伝いさせていただいた

そんな環境で自分の存在を肯定するのは容易ではなかった。毎晩寝る前に「神様、明日はストレートにならせてください」と願っていたという。自身の性をはっきりと認識した高校生の頃に、母親へゲイであることを伝え、3日間家から追い出された。学校では好奇の目で見られ、自分とは違う存在への「理解」ではなく「ヘイト」を向ける社会の在り方に悲しみを覚えた。

そんなダッキーさんとパッツィーさんがサウスカロライナの大学で運命の出会いを果たし、すぐに結婚を意識する。しかし、当時のサウスカロライナでは同性婚は認められておらず、意を決してNYに引っ越し、婚姻届を出した。男女の夫婦同様に、互いを認め、いかなる時も支え合える家族ができ、家に帰ると安心と愛情が待っている、そんな環境が心からうれしく、安堵(あんど)しているという。

なぜドラァグを始めたかを聞くと、「ひげと筋肉を強調する洋服が私には似合うといつも言われてきたけれど、華やかな衣装を着てみたら心が解き放たれて、自分の考えを“声”にすることができた」と。ドラァグを通して、さらに多様な人々と出会い、誰しもが「自分らしく生きられる社会」を構築するために、声を上げていきたいと力強く語る。

社会に存在する不平等を是正するための授業

多様性の街・NY。誰もが自分らしくいられる社会を
小学3年生だった娘の授業のひとこま。地球温暖化へ警鐘を鳴らすべく、子どもたちがそれぞれ何が問題かを考え、思いをポスターにしたためた。他にも、リサイクルや海に放棄されるゴミについてなど、日々、環境問題に触れているため、食卓の議題に上がることもしばしば

誰もが自分らしくいられる社会。互いを認め合う価値観。その大切な一歩は教育から始まっていると思う。娘たちが通う学校でも、ジェンダーやセクシュアリティーに関する教育がしっかりと行われている。次女が小学生4年生の頃から「Health」という授業があり、その中で自然に自分の性や体について考える機会を与えられる。

中学生になった今では、娘の友人の中には自ら「レズビアンである」「バイセクシュアルである」とカミングアウトして、学校への提出書類には女性の名前からニュートラルな名前に変更を申し出たり、「She/He」といった呼称に違和感があることから「They」と呼ぶようにと教職員はじめ生徒たちに情報共有したりしている子もいる。これが決して特別なことではなく、ごくごく当たり前のことであるように皆が受け止めている。私自身、学校でジェンダーについて教わった記憶はなく、今、娘たちから多くの事柄を学んでいる。うっかり「女の子らしくね」などと口にすると「ママ、女の子らしいってどういうことなのかな。人としてどうか、でしょ。そういった偏見はよくないよ」と、無知であることは無意識に人を傷つけてしまうと咎(とが)められてしまう。

多様性の街・NY。誰もが自分らしくいられる社会を
「Girls Empowerment」女性の地位・権利向上を目指す高校生のクラブ活動では、それぞれが目の当たりにしている不平等、不利益について活発な議論がなされていた。見学をさせてもらったが、他人事ではなく、自分のこととして皆が真剣に取り組む姿が印象的だった

学校の好きなところを娘に問うと、「INJUSTICE EDUCATION」だという。社会に存在するあらゆる不平等を是正するための授業が一番興味深い、と言う。多様性に限らず、人種差別、環境問題、女性の権利向上などあらゆる意識の共有、知識の根源は教育にあると思う。幼い頃から幅広い事象に触れ、自ら考え、人に寄り添う。真のダイバーシティー教育が、これからを生きる子供たちには必要な力になるのではないだろうか。

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