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On the New York City! ~現代美術家の目線で楽しむニューヨーク~
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廃虚が文化施設に変身 現代美術家目線で見たガバナーズ・アイランドの魅力

現代美術家・伊藤知宏さんがアーティスト目線でニューヨーク(以下、NY)の街をリポートする連載「On the New York City! 」。

今回の舞台は、マンハッタンの南約1キロに位置し、1960年代までアメリカ陸軍の駐屯地が置かれていた島「ガバナーズ・アイランド」です。今では夏季限定で一般公開され、観光地として人気ですが、実は多くのアーティストが滞在しながら創作活動に励む、美術関係者の間でも注目のスポットなのだとか。

島ではどんなことが行われているのでしょうか。伊藤さんが島内の様子を美術家目線でリポートします。

現代的な施設と廃虚が入り混じる島

以前から、友人のアーティストに「ガバナーズ・アイランド(=総督の島、以下GI)は一度行った方が良いよ」と言われていたが、離島という立地から行く機会を見つけられずにいた。今年10月半ばにこの島の施設でパフォーマンスを行うことになり、下見も兼ねて訪れたところ、思っていたよりも自然が多く、気持ちの良い場所だった。

GIはマンハッタン島の南側にあり、歴史的には 1783年から1996年まで軍事利用されてきた。その後、島の再開発が何度も計画され、2005年に公共利用のため開放された。

緑あふれる172エーカーの敷地には、高額だがおしゃれな宿泊施設もあり、マンハッタンの近場でリゾート気分を味わえる。その一方で、軍事基地時代の古い住居や建造物(用途不明の建物、劇場なども含む廃虚)なども無数にあり、それらは用途が見いだされるのを今か今かと静かに待ち続けているかのように見えた。

そんな建造物の一部が近年、芸術・文化・環境・教育に関わる非営利団体に積極的に利用されている。具体的に言うと、NY内の非営利団体や大学などが、使われていない建物を借りて文化施設として利用し、島に人を呼び込んでいるのだ。

アーティストが普段の制作環境とは異なる場に一定期間滞在し、作品制作やリサーチ活動を行うことを「アーティスト・イン・レジデンス」と呼び、多くの芸術家たちがその目的でGIを訪れる。

そのため島が一般公開されている5月~10月の間は、島内の各地の施設で様々なアーティストが活動し、彼ら彼女らが自身の制作環境を一般に公開する「オープン・スタジオ」と呼ばれるイベントも多数開かれている。

それもあってこの島は、美術関係者の間では、バカンスの島というよりNYでアーティスト・イン・レジデンスが最も盛んな場所として知られている。

僕の訪れた9月第2週の週末は、オープン・スタジオと題して10以上の建物でアーティストの制作環境が公開されていた。本稿ではその中から注目のイベントや文化施設などについて紹介したいと思う。

廃虚が文化施設に変身 現代美術家目線で見たガバナーズ・アイランドの魅力
僕の住むブッシュウィック地区(B)からGIへは地下鉄のLトレインで14ストリートステーション駅で3ラインに乗り換え、ウォール・ストリート駅を出て5分ほど徒歩で南下。11Pier(11埠頭)からフェリーで8分ほどで着く。ブルックリンからも数種類のフェリーが出ている

GIで感じられた現代美術の呼吸

NYは地下鉄やバスなどに加え、フェリーもかなりあり、川や海を越えて移動するには便利だ。僕はフェリーを利用した経験がほとんどなくて、最初は抵抗があったが、いまでは潮風が気持ち良いのでたまに交通手段として利用している。

フェリーからGIに降りて3分ほど歩くと、右側に見える白い2階建ての建物がある。その見た目からはわかりにくいが、これが島内で最も大きな文化施設「ロウワー・マンハッタン・カルチュラル・カウンシル ザ・アーツ・センター・アット・ガバナーズ・アイランド」だ。

ロウワー・マンハッタン・カルチュラル・カウンシル ジ・アーツ・センター・アット・ガバナーズ・アイランド 

この建物は1973年に設立されたロウワー・マンハッタン・カルチュラル・カウンシル(以下LMCC)によって運営されている。この組織は、芸術家らと公務員や不動産関係者らをつなぎ、空きスペースの有効利用などを通じて地域振興を行っている。

2019年にはGIに文化施設を設置。この建物は1階と2階に、ギャラリー・スペースとカフェ、パフォーマンス・スペース、アーティストのスタジオを有している。毎月一度「Take Careシリーズ」と題して、オープン・スタジオやワークショップなどが開催される。作品の完成度は高く、まるで美術館に来たような印象を受ける。この島を訪れる際には必ず立ち寄ってほしい場所だ。

併設のギャラリーでは、1階と2階でそれぞれ展覧会が開かれている。今年の開催期間は6月から10月末までの週末で、オープン・スタジオは月に一度のみ。

(写真上)LMCCの外観(筆者撮影)
(写真下)LMCC内のJordan Jonesさんのアーティスト・スタジオのオープン・スタジオの様子 Photos by Ian Douglas, courtesy of Lower Manhattan Cultural Council
(写真上)ロウワー・マンハッタン・カルチュラル・カウンシル ジ・アーツ・センター・アット・ガバナーズ・アイランドの外観(筆者撮影)
(写真下)ロウワー・マンハッタン・カルチュラル・カウンシル ジ・アーツ・センター・アット・ガバナーズ・アイランド内のJordan Jonesさんのオープン・スタジオの様子 Photos by Ian Douglas, courtesy of Lower Manhattan Cultural Council
1階ギャラリーの写真。この展覧会はLMCCとGIにレジデンス・スペースを持つブルックリンの非営利団体Pioneer Worksが展覧会を共同で開催。Onyedika Chukeの「 The Forever Museum Archive 展」
ギリシャやローマの彫刻をデッサンしてきた僕にはなんとなく懐かしさすら感じさせる巨大な足の作品。作品を見ていて嬉しくなるほどクオリティが高い。(写真上)Forever Museum Archive/The Untitled/Hermes_and_Reflection Pool_Blue, Circa 2020, 2021 (installation view), photo credit: Paula Lobo
(写真下)Forever Museum Archive/The Untitled/Hermes_and_Reflection Pool_Blue, Circa 2020, 2021 (installation view), photo credit: GregoryGentert 
Photos courtesy of Lower Manhattan Cultural Council
1階ギャラリーの写真。LMCCとGIにレジデンス・スペースを持つブルックリンの非営利団体Pioneer Worksが共同で開催するOnyedika Chukeの「The Forever Museum Archive 展」。ギリシャやローマの彫刻をデッサンしてきた僕にはなんとなく懐かしさすら感じさせる巨大な足の作品。作品を見ていてうれしくなるほどクオリティーが高い

(写真上)Forever Museum Archive/The Untitled/Hermes_and_Reflection Pool_Blue, Circa 2020, 2021 (installation view), photo credit: Paula Lobo
(写真下)Forever Museum Archive/The Untitled/Hermes_and_Reflection Pool_Blue, Circa 2020, 2021 (installation view), photo credit: GregoryGentert 
Photos courtesy of Lower Manhattan Cultural Council
2階ギャラリーの写真。Meg WebsterのWave展の様子。映像や苔や植木、ガラスなどを素材にした彫刻作品を使ったインスタレーション。様々な要素があるが、一貫して言えるのは、どれも地球の自然環境を考えさせられる芸術作品だということだ。写真下の植木の苗は展示後に島内の温室に移されるそうだ。
(写真上)Growing Piece, Galvanized steel, peat, potting plants, plants, grow lights, 54ft x 3ft, 2021; Moss Mound, Peat Moss, earth, hay, plastic tarp 17ft x 4ft, 2021
(写真下)Growing Piece, Galvanized steel, peat, potting plants, plants, grow lights, 54ft x 3ft, 2021 両写真ともにPhotos by Ian Douglas, courtesy of Lower Manhattan Cultural Council
2階ギャラリーの写真。「Meg WebsterのWave展」の様子。映像やコケ、植木、ガラスなどを素材にした彫刻作品を使ったインスタレーション。様々な要素があるが、一貫して言えるのは、どれも地球の自然環境について考えさせられる芸術作品ということ。写真下の植木の苗は展示後に島内の温室に移されるそうだ

(写真上)Growing Piece, Galvanized steel, peat, potting plants, plants, grow lights, 54ft x 3ft, 2021; Moss Mound, Peat Moss, earth, hay, plastic tarp 17ft x 4ft, 2021
(写真下)Growing Piece, Galvanized steel, peat, potting plants, plants, grow lights, 54ft x 3ft, 2021 両写真ともにPhotos by Ian Douglas, courtesy of Lower Manhattan Cultural Council

LMCCの施設から少し南西に移動するとアメリカの田舎では馴染(なじ)みのある木造2階建ての黄色い小屋群がある。ここには「NOLAN PARK」というエリアがある。

廃虚が文化施設に変身 現代美術家目線で見たガバナーズ・アイランドの魅力
NOLAN PARK写真。このエリアにはこのような黄色い小屋が、20棟近く並んでいる。写真の建物の右半分はNARS FOUNDATIONの施設(筆者撮影)

NARS FOUNDATION

2006年設立のNARS (New York Art Residency and Studios)Foundationは、滞在制作用の施設運営や、併設ギャラリーでの作品展、異文化交流、専門能力開発などのプログラムを通じて、主に新興および中堅アーティストをサポートしているブルックリンの非営利芸術団体。2020年よりこの島にサテライト施設を設置し、活動を始めた。

廃虚が文化施設に変身 現代美術家目線で見たガバナーズ・アイランドの魅力
NARS Foundationのオープン・スタジオの様子。このレジデンスが取り上げるアーティストは作品に独自の清涼感があるところが共通している気がした

(写真上)Joseph Wilcox’s Studio at NARS Satellite Residency Season II, 2021, Governors Island, Image courtesy of the artist
(写真下)Becs Epstein’s Studio at NARS Satellite Residency Season I, 2021, Governors Island, Image courtesy of the artist

West Harlem Art Fund

今年で23年の歴史を持つ、パブリック・アートおよびニュー・メディアの作品を紹介する団体。屋内に限らず、屋外でも作品を展示するほか、ワークショップなどの芸術・文化を通して地域を活性化させている。

(写真左)自然の花びらをそのまま平面作品にしたコラージュ。凄さと美しさの中に、どこか和ませる魅力的な作品だ。Deflores by Valerie Hallier, picture taken by Valerie Hallier
(写真右)テキスタイルを使って作品を制作するアーティスト、Sagarika SundaramのMSR。この作品は彫刻的・工芸的な目線によるもので、作品の量感が非常に気に入っている。Photo by Sagarika Sundaram
(写真左)自然の花びらをそのまま平面作品にしたコラージュ。凄さと美しさの中に、どこか和みを感じる魅力的な作品だ。Deflores by Valerie Hallier, picture taken by Valerie Hallier
(写真右)テキスタイルを使って作品を制作するアーティスト、Sagarika Sundaramの「MSR」。この作品は彫刻的・工芸的な目線によるもので、作品の量感が非常に気に入っている Photo by Sagarika Sundaram

HARVEST WORKS

1977年設立のマンハッタンにある非営利団体。主に新しいテクノロジーを使った作品を創るアーティストをサポート、紹介している施設だ。このスペースは特に展示されている作品数が多く見ごたえがある。GIにあるのはサテライト施設で、本館はマンハッタンに置かれている。

(写真左)Dafna Naphtaliさんの「AUDIO CHANDELIER: POLYÉLAIOS」マルチ・チャンネル・オーディオ・スピーカーは 鍜治屋/デザイナーの Ayala Naphtaliさんとのコラボレーション。スタイリッシュな作品だ。Photo courtesy by HARVEST WORKS
(写真右)Valerie Hallier さんの「Scream Now with ceiling visualization」アーティスト曰く、この作品はコロナかの生活からインスピレーションを得た、初めての公共施設での叫ぶ場所。スペースの中で叫ぶと目の前のモニターに様々な波形が形を変える。共感しやすいコンセプトのアイデアと完成度が素晴らしい。
Photo by Valerie Hallier. Inspired by the French Medieval Photo courtesy by HARVEST WORKS
(写真左)Dafna Naphtaliさんの「AUDIO CHANDELIER: POLYÉLAIOS」マルチ・チャンネル・オーディオ・スピーカーは鍜治屋/デザイナーの Ayala Naphtaliさんとのコラボレーション。スタイリッシュな作品だ Photo courtesy by HARVEST WORKS 
(写真右)Valerie Hallier さんの「Scream Now with ceiling visualization」アーティストいわく、この作品はコロナ下の生活からインスピレーションを得た、初めての公共施設での叫ぶ場所。スペースの中で叫ぶと目の前のモニターに様々な波形が形を変える。共感しやすいコンセプトのアイデアと完成度が素晴らしい  All photos are by Carol Parkinson Photo courtesy by HARVEST WORKS

NOLAN PARKから大きな芝生のグラウンドを西に移動すると、また煉瓦造りの小屋がならぶCOLONELS ROWというエリアがある。このエリアでも、滞在制作をするアーティストたちによるオープン・スタジオが行われていた。

COLONELS ROW写真。このエリアは煉瓦造りの小屋が8棟ほど並んでいる。手前の小屋は野外に設置された作品。緑に赤い色が映えて魅力的に見える(筆者撮影)
COLONELS ROW写真。このエリアは煉瓦造りの小屋が8棟ほど並んでいる。手前の小屋は野外に設置された作品。緑に赤い色が映えて魅力的に見える(筆者撮影)

BronxArtSpace

Linda Cunninghamと日本人のアーティストMitsu Hadeishiによって創設された、その名の通りブロンクスにある文化施設。ブロンクスや世界中の多くのアーティスト、映画製作者、キュレーターと協力して運営されている。ここで開催されるイベントは、視覚芸術、パフォーマンス、実験映画、ダンス、音楽、演劇など。GIにあるのはサテライト施設で、夏の間はGIでの活動が中心となる。

BronxArtSpace/Photos courtesy by BronxArtSpace
BronxArtSpaceのレジデンスの様子。このレジデンスで滞在しているアーティストたちが作る作品は僕をリラックスさせた。 理由はわからない  Photos courtesy by BronxArtSpace

FLUX Factory

1994年設立のロング・アイランド・シティにある非営利団体で、滞在施設用の施設運営やギャラリーを所有する。2021年より、GIにある同組織の施設に25名のアーティストを招き、滞在制作を通じてどんな活動が生まれるかを観察する、実験的なアーティスト・イン・レジデンスを行っている。僕も今季の終わりにアーティストのSally Beauti Twinさんのキュレーションで実験映像と詩の朗読をすることになった。何かと関わりのある場所だ。

(写真上)GIでのSarah Dahlingerさんのコラボレーションアート「Trivial Pursuits Dinner Party」の様子。現代美術特有の堅苦しさがなく、少し自由な感じがこの施設の持ち味の気がする。(参加アーティストは以下のとうりSarah Dahlinger with Danny Crump, Will Owen, Li Ming Hu, Sally Twin MG, Jon Sims, Amir Badawi, Seth Timothy Larson, Jevijoe Vitug, Aliya Bonar and Viva Soudon.)
(写真下)Jevijoe Vitugさんの絵Mother Tongue Karaoke。ネオン色に光っているので、おそらくブラックライトのカラオケをイメージしたのだろうか。細かくよくできている作品だ。
Photo courtesy of Flux Factory
(写真上)GIでのSarah Dahlingerさんのコラボレーションアート「Trivial Pursuits Dinner Party」の様子。現代美術特有の堅苦しさがなく、少し自由な感じがこの施設の持ち味の気がする (参加アーティストは以下のとおり。Sarah Dahlinger with Danny Crump, Will Owen, Li Ming Hu, Sally Twin MG, Jon Sims, Amir Badawi, Seth Timothy Larson, Jevijoe Vitug, Aliya Bonar and Viva Soudon.)
(写真下)Jevijoe Vitugさんの絵「Mother Tongue Karaoke」。ネオン色に光っているので、おそらくブラックライトのカラオケをイメージしたのだろうか。細かくて、よくできている作品だ 
Photo courtesy of Flux Factory

4HEADS

2008年からアートフェア「Portal:Governors Island」(旧称Governors Island Art Fair)を運営している非営利団体。無料の大規模なアートフェアを主催するほか、過小評価されているアーティスト向けの滞在制作施設を運営する。

廃虚が文化施設に変身 現代美術家目線で見たガバナーズ・アイランドの魅力
(写真上)自身の絵を描いた椅子の作品に座る、アメリカのアーティストTim Fiteさんと彼の作品 “SIT WHERE YOU EAT”。この場でしか見られない彼のスタジオの全壁画のプロジェクト。よく見ると窓ガラスにも絵が描かれていた。彼のスタジオに入ると、青に包まれたからか、少しひんやりした気分になったような気がした  “SIT WHERE YOU EAT” by Tim Fite / Acrylic Ink On Old House, Collage Panels, Chairs, Chain, Stick, Plaster Hand, Bells Site Specific – 408A Colonels Row, Governors Island, NYC Photo courtesy of Tim Fite
(写真下)巨大な顔の絵を使ったティネ・キンダーマンさんの野外でのパフォーマンスの様子。迫力があるがどこか魔術的でかわいい Tine Kindermann’s performance in Governor’s Island photo by Daniel Efram

ESCAPING TIME: ART FROM U.S. PRISONS

アメリカの刑務所の壁の中で作成されたアートワークを展示および販売している。この団体はそれらの活動を通して、受刑者たちや僕らの既成概念を変えることに成功していると思った。

僕も彼らの絵を見て購入した。彼らを助けることで自分自身も助けられているような複雑な気持ちになった。この団体が取り扱うのは、限られた道具と環境の中で作品制作に向き合うアーティストらの作品が中心だったこともあり、世の中に芸術の必要性をうったえるには十分なコンセプトの団体だと僕は思った。このような組織があることに僕は感銘を受けたし、アメリカに根付く多様性というものを感じざるを得なかった。

(写真上)この展覧会のキュリエーターでもあるJay Dardenさんの描いた「Girl with a Bamboo Earring」(写真中央) と来場者。この絵はイタリアの画家、フェルメールのオマージュだろう。
(写真下)Jairo Pastoressaさんの作品とご本人。作品は刑務所の中で描いたので、既存のキャンバスはなく、ベッドシーツや枕カバーなどを代用して描いたそうだ。クリエイティブな姿勢に頭がさがる。
Photo: Escaping Time
(写真上)この展覧会のキュレーターでもあるJay Dardenさんの描いた「Girl with a Bamboo Earring」(写真中央) と来場者。この絵はオランダ人の画家フェルメールのオマージュだろう
(写真下)Jairo Pastoressaさんの作品とご本人。作品は刑務所の中で描いたので、既存のキャンバスはなく、ベッドシーツや枕カバーなどを代用して描いたそうだ。クリエーティブな姿勢に頭が下がる 
Photo: Escaping Time

このほかにも環境芸術と教育と科学の関わりをテーマにした実験的な作品を公開しているNY大学の「NYU Gallatin WetLab」や、ブルックリンのPratt school of Architectureが運営する美術と建築を掛け合わせたような実験的試みを紹介するラボ「Pratt Guad」、火山をテーマにし、美術というより科学寄りの展覧会を行うスペース「NYヴァーチャル・ボルケーノ・オブザーバトリー」など、合計20以上の文化・教育機関が、この島にある歴史的な小屋を利用して無料のイベントやアクティビティー、アーティスト・イン・レジデンスなどを運営している。これらは実際しっかりと見て回るとかなりの量で、1日が簡単に過ぎてしまった。

ほかにもこの島には広大な芝生の広場や巨大なパブリック・アート、子供向けの巨大な迷路やハンモック・スペース、ダンスのワークショップや島から見えるビル群や自由の女神の絶景やレストランなど、様々なものが楽しめる。

廃虚が文化施設に変身 現代美術家目線で見たガバナーズ・アイランドの魅力
アーティスト・イン・レジデンス以外にも、この写真のような絵を使ったインスタレーションなど、いくつかのパブリック・アートも見ることができる。写真はシャンテル・マーティンさんの作品「ザ・マイ・ルーム」。詩的な作品だ。 Shantell Martin’s “The May Room,” credit Julienne Schaer

島内では、各種の団体が構想する文化・娯楽施設を通じて島を再開発する計画が進み、5月から10月までのほぼ毎週末、様々な催し物が行われる。

今現在、島のおよそ1/6のエリアは工事中で入ることができない。またこの島の全てのイベントが完璧な完成度とはいえず、発展途上ではあるが(入り口に看板すら出ていない建物もあり、ネットで調べるまでは、何の施設なのか、入っていいのかいけないのか全くわからないこともあった)、それも今だからこその出来事ととらえて楽しめる人には面白い場所だろう。

友人の話を聞く限り、この島は文化施設を拠点に少しずつ充実してきているのだという。僕個人は、島おこしにアーティストたちが使われているという単純な構図ではないと感じたし、島の緑の気持ち良さも手伝ってか素晴らしい場所だと思った。それは、この場所が新しい何かに変わろうとするエネルギーのようなものを、島全体から感じたからかもしれない。

今年の開催は10月31日まで。スペースによっては閉まっていることもあるので、訪れる際は事前にGIの公式サイトを確認してほしい。

     ◇◆◇

2018年11月にスタートした連載「On the New York City! ~現代美術家の目線で楽しむニューヨーク~」は今回で終了します。長らくご愛読いただきありがとうございました。連載の過去記事はサイト上に残りますので、またぜひご覧ください。

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