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福山城、姫路城、松山城……戊辰戦争で分けた命運 「青天を衝け」の城(9)

世界文化遺産の姫路城

戦況次第では焼失していた姫路城

82棟の現存建造物を有し、壮麗な天守群の美しさで知られユネスコ世界文化遺産登録されている姫路城(兵庫県姫路市)も、戦況次第では焼失の危機に立たされた城だ。

8代姫路藩主の酒井忠績(ただしげ)は、1863(文久3)年に江戸幕府の老中首座になった人物だ。桜田門外の変で倒れた井伊直弼の後、1865(慶応元)年に江戸幕府の「最後の大老」に就任した、いわば佐幕派である。戊辰戦争時の藩主である忠惇(ただとし)も1867(慶応3)年に老中を拝命しており、幕府に忠義を尽くす立場にあった。

姫路城「はの門」へ至る道筋
姫路城「はの門」へ至る道筋

姫路藩は会津藩や桑名藩などとともに、旧幕府軍として鳥羽・伏見の戦いに参陣。しかし敗れて姫路城へ撤退する頃には、賊軍となって備前岡山藩の追討を受けることとなってしまった。

城下に迫った岡山藩の軍勢に対し、不在の藩主に代わり重臣たちは城を明け渡すことを申し出たという。しかし長州軍は平和的な引き渡しではなく、交戦して城を手に入れようとした。すでに開城の交渉を進めていた岡山藩は焦り、景福寺山と男山から姫路城に大砲を撃ち込んだ。中堀と外堀の間にある備前門(福中門)の屋根瓦が飛び散るなどしたものの、すぐに姫路藩は降伏し、開城した。

中堀沿いの西の玄関口、埋門。備前門(福中門)はここからさらに南側にあった
姫路城中堀沿いの西の玄関口、埋(うずみ)門

姫路城も福山城と同じく、もともとは西国鎮護のために築かれた徳川家にとって重要な城だった。1600(慶長5)年の関ケ原の戦いの後、家康からこの地を拝領した池田輝政が1601(慶長6)年から築城した。豊臣家との決戦を見据え、豊臣恩顧の大坂城の結集を阻止し、いざというときは戦いを想定していた城と考えられる。池田家の後は本多家、松平家、榊原家、酒井家と城主がめまぐるしく変わったが、いずれも徳川家の信頼があつかった。

天下の形勢を察して新政府軍との戦いを避けた姫路藩は嘲笑(ちょうしょう)されたというが、おかげですばらしい城が残されたと思うと感慨深いものがある。

 姫路城内の瓦には、歴代城主の家紋が用いられている
姫路城内の瓦には、歴代城主の家紋が用いられている

親藩ゆえ朝敵として追討 松山城

姫路城のほかにも、現存する国宝天守を擁する城にも危機はあった。全国に残る12の天守のうち、葵の御紋が唯一付されている松山城(松山市)も、戊辰戦争の難局を乗り越えた天守といえる。

松山城は1602(慶長7)年から加藤嘉明が築城を開始し、1635(寛永12)年に藩主となった松平定行が大改修した城だ。定行は家康の異父弟である松平(久松)定勝の次男にあたり、松平姓を名乗り葵の御紋を使うことを許されていた。伊予を拝領したのは四国の外様大名を押さえるためと考えられる。

松山城天守。鬼瓦に葵御紋が葺かれている
松山城天守。鬼瓦に葵御紋が葺(ふ)かれている

松山藩は親藩大名ゆえに一貫して旧幕府に味方し、やがて朝敵とされて追討を受けることとなった。恭順派か抗戦派かの難局に対峙(たいじ)した末、14代藩主・松平定昭は恭順の道を決断。土佐藩・山内家の助力もあって、松山城は運よく、戦場とならずに開城した。城は土佐藩に占領された後、松山藩に返還されている。

松山城の搦手、乾門・乾門東続櫓付近
松山城の搦手(からめて)、乾(いぬい)門・乾門東続櫓付近

譜代大名筆頭も新政府側に 彦根城

江戸幕府の役職に就いていたからといって、必ず新政府軍と戦ったわけではない。動向を見て、新政府側についた藩も少なくなかった。例えば彦根藩は譜代大名筆頭であるものの、慶喜に従い大坂城(大阪市)へ参陣してはいるが、藩の大多数は新政府側に加勢していた。

井伊直弼が桜田門外の変で暗殺された後、後継した直憲(なおのり)は動向を冷静に見つつ、存続のための判断を下したらしい。戊辰戦争では新政府軍として参戦し、やがて新選組の近藤勇の捕縛に携わる武功も挙げた。そして、後に朝廷から2万石を拝領している。

楽々園から見上げる彦根城天守
楽々園から見上げる彦根城天守

戊辰戦争は、それぞれの藩が大義名分を盾(たて)に戦った大戦だった。江戸城の無血開城で事は収まらず、関東・東北地方へと戦場を移していったのである。

(この項おわり。次回は11月1日に掲載予定です)

#交通・問い合わせ・参考サイト
■福山城
https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/fukuyamajo/(福山城博物館)

■姫路城
https://www.city.himeji.lg.jp/castle/(姫路市)

■松山城
https://www.matsuyamajo.jp/(松山城管理事務所)

■彦根城
https://hikonecastle.com/(国宝彦根城)

フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)

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