野村友里×UA 暮らしの音
連載をフォローする

UAさん「この名前、もう覚悟を決めるしかないのね」

菊地成孔氏とCure Jazz (9/14 1st set in Blue Note Tokyo Photo by Atsuki Iwasa)

「eatrip」を主宰する料理人の野村友里さんと、現在カナダの島で暮らす歌手UAさんの往復書簡「暮らしの音」。7月に誕生日を迎え、半世紀生きた思いをつづった野村さん。今回は、友里さんの母の名言をきっかけに、ふと考えたというUAさんからのお便りです。

野村友里さんの手紙「5歳も80歳も、今生きているんだから同世代」から続く

友里へ

お誕生日おめでとう。ずいぶん経っちゃってるけど、あらためてね。

”のむらゆり半世紀誕生祭”は、どんなお祝いになったんだろう。あなたのお誕生日は、虹郎の誕生日の日付をちょうど逆さにするもんだから(笑)、それもあって毎年忘れたことはない。海の向こうから思いを馳(は)せていたのよ。

UAさん「この名前、もう覚悟を決めるしかないのね」
お散歩トーク。向き合うより話せることもある

それにしてもあなたの母上は、全く素敵な台詞(せりふ)がきらめくかたよね~! 生まれたての毎日に、おはようと声をかける。おはようの相手が今日の日なのね。意志をもって意識して、ほんの少しの言動を変える。毎日、心と身体(からだ)を微調整していく、この命ある限り、大事なことね。

でもその微調整って、死んでからはないのだろうか、とふと考えた。というのも、常々、この世のいわゆる空気と言われてるパートに、見えない何かが、秘密があるように思ってるの。それは例えば、死者たち。私たちって、壮大な数の死者たち、ご先祖様の先端に現れてる存在でしょ。

あらゆる出会いと別れ、数奇な運命の中でとんでもない確率をサバイブして、今ここに現れている。霊感が強いとかお化けを見るとか、まるでそんなタイプじゃないんだけど、得も言われぬ感覚があって、何かふとした瞬間に自分を客観視する大きな視線みたいなものを意識することがある。

そう言えば、奄美の加計呂麻島で、一人、森に続く道なき道を歩いた時を思い出す。どこからともなく強い視線を感じてゾッとして引き返した。でも後から思うと、ハブがみんなで睨(にら)んでたのかなあ、とか(笑)。または、「ハブがいるから危ないよ」ってご先祖様からの睨みだったのか!? 

UAさん「この名前、もう覚悟を決めるしかないのね」
島のビーチで

それはさておき、生きている人間を取り巻く、見えない空気の部分には、まるで陰陽のマークみたいに、ぴったりと、死者たち、またはこれから生まれてくるものたちのサポートがあって、だから、遠く離れていても想(おも)いが伝わったり、はたまた虫の知らせだったり、創造する時のインスピレーションが与えられたりしているんじゃないかと思う。生と死は表裏一体、生きてる量と同じかそれ以上の死が生を支えてる。

ところで、友里の虹の写真、とってもきれいだね。夕方なのかな。私も、島に帰る水上飛行機から、遠く水平線に立ち昇る虹を見たよ。同乗者の方々にも教えようと見回したら、6人乗りの小さな飛行機、皆お年寄りだったんだけど、騒音がすごいから耳栓してるし、それぞれ、水面から近い空路をまどろんでるようだったから、ま、いいかとまた窓の方に向きなおした。

それにしても、海と空しかないような光景の中で、私以外誰もその虹を見つけてないとしたら、やっぱり人生は不思議なもの。

物心ついた頃から、虹が好きでね。まあ、嫌いって人も珍しいだろうけど。26年前、自分がデビューするときも、最初は、意味としてだけでもアーティスト名にできないかと探ってた。大阪梅田の紀伊國屋書店で、スワヒリ語の辞書を買ったりしてね。でも日本語から引けるような便利なものは置いてなかったから、スワヒリ語のAからZまでを見ていくしかなくてね、虹という言葉を探してみた。

UAさん「この名前、もう覚悟を決めるしかないのね」
AJICOツアー最終日(Photo by Atsuki Iwasa)

けど、なかったんだよね。実はその時に見つけたのが”UA”で、「花」または「殺す」って意味を知って、ドキリとした。

とりあえず、その辞書の著者である外語大学の教授に電話して、歌手としてデビューするために、虹の意味のスワヒリ語を名前にしてみたい、と話したところ、虹は「なんちゃらでなんちゃら(←覚えられない)」と、長めで、単語ではないことが判明。つまり”雨の弓”を直訳する言葉だったのね。

それは、これからデビューするための名前にはそぐわず(言えもしない)、そこで急きょ浮上してきたのが、”UA”だったの。仲の良かった友人にも、「だって、すごいもの見たら『うわーっ』て言うし、いいやん!」と後押しされ、それでデビューすることに。

UAさん「この名前、もう覚悟を決めるしかないのね」
配信もあった9/14の2nd set in Blue Note Tokyo(Photo by Atsuki Iwasa)

それから10年ほどして、”殺す”の意味はもう要らないか、と思い至り、それからは、”花”の意味だけにしている。

実はもっと言うとね、スワヒリ語の”UA”なら、カタカナで書けば”ウーワ”になるようで、ある時、デビュー時の契約書のフリガナにもそう書いてあったのを見てハッとした。いつの頃からか私は、多分に“ウーア”と呼ばれているし、自分でもいつの間にかそう思ってしまってた。

もしかしたら、2004年にリリースした「うたううあ」と言う、NHK教育TV「ドレミノテレビ」で歌った童謡を収録した作品名のせいもあるのかもしれない。

そんなわけで、名前も微調整されてきて、もはや、スワヒリ語じゃなくね!?みたいな(笑)。

UAさん「この名前、もう覚悟を決めるしかないのね」
Blue Noteの楽屋にて虹郎と。奥に小さな菊地氏(笑) 野村友里撮影

前に、独特の姓名判断をするかたに、この名前だと、ものすごい覚悟が必要で、真逆のような世界を大股びらきで立っていかなくてはならないような名前だから、それがキツければ、小文字にするのはどうか?とご提案いただいたことがあったけど、「じゃ明日から”ua”で!」ってのもねー。。。

だから、もう覚悟を決めるしかないのね(笑)。だからなのかどうなのか、こうしてカナダの小さな島暮らしと東京借り暮らし、太平洋またいで大股びらきしてるのかしら、なんてね。

いやはや、何だか夏はあっという間に過ぎた気がするけど、AJICOもCure Jazz in Blue Note Tokyoも足をお運びいただき本当にありがとう。あなたの採点がいつも気がかりなのよ。

UAさん「この名前、もう覚悟を決めるしかないのね」
表参道交差点の信楽焼の狸(たぬき)。日本を離れて暮らしていると、それまで何でもなかったものがやけに可愛く見えたりする

お次は、年末、いよいよUA単品、POP大作戦のお披露目前夜です。こちらのドラマもずっと見守ってくれて、本当にありがとう。レビューとか頼んじゃおうかなー、うふふ!

うーこ

1通目から読む

REACTION

LIKE
COMMENT
1
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら