楽園ビーチ探訪
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日本唯一、淡水湖に浮かぶ有人島「沖島」(琵琶湖) 衝撃のふなずし

源氏の落人が山裾を切り開いて移り住んだのが始まりとされる沖島=滋賀県近江八幡市

琵琶湖が日本一大きな湖だということくらいは、知っていました。けれど、そこに人が暮らす島があったとは! これは世界を見まわしてみても、珍しいことだそうです。それは、滋賀県近江八幡市沖約1.5キロの沖島(おきしま、おきのしま)。海水と淡水が混ざる汽水湖では国内に有人島がありますが、いずれも橋がかかっており、離れ小島として淡水湖に浮かぶ唯一の有人島です。

連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する筆者が訪れた、各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。

本土から船で10分、270人が暮らす漁業の島

台風が関東に迫る10月1日、前日まで強風と余波の影響を受けながらも、通船「おきしま」は、定刻に出港しました。

本土の堀切港から約10分。昭和レトロな装飾の船内では、沖島マダムらしき女性たちが会話に花を咲かせていました。楽しそうな声が、船のエンジン音に紛れて切れ切れに聞こえてきます。

沖島は周囲約6.8キロ、面積は1.53平方キロメートル。小高い山がデンと陣取り、平地が限られているため、約270人(2018年)の住民のほとんどが湖岸で生活しています。

湖岸から一本内陸に入った島の路地「ホンミチ」。水産庁の「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」に選定されています
湖岸から一本内陸に入った島の路地「ホンミチ」。水産庁の「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」に選定されています

沖島周辺の湖底から縄文土器が発見されるなど、かなり昔から人は住んでいたようですが、保元平治の乱の後、源氏の落人(おちうど)7名が移り住んだのが始まりとされています。彼らが今の島民たちの祖先だという説もあります。

島民の多くが漁業に携わっているそう。回遊のない湖でも魚によって産卵期が違うので旬が異なります
島民の多くが漁業に携わっているそう。回遊のない湖でも魚によって産卵期が違うので旬が異なります

室町幕府8代将軍足利義政の命で水路を監視したり、戦国時代に織田信長を手助けしたり、徳川家康の元で水軍として活躍したり。その功労として、漁業権を獲得。沖島は時の権力者と持ち持たれつ、の関係だったようです。

小高い山を抱く沖島。港内に入り、船脚がスローになると、湖岸に沿って連なる瓦屋根や舟板張りの民家、港にびっしりと係留された漁船など、人々の暮らしが見えてきました。

民宿から湖上の絶景、そして湖の魚「フルコース」

目指すのは、民宿業態としては、沖島で今や1軒のみとなった「漁家民宿 湖上荘」。港に掲げられた島内マップを見ると、集落から離れた島の西のはずれにポツンと立っています。

沖島漁港から徒歩10分くらいでしょうか? 途中、不安になって電話してしまいました
沖島漁港から徒歩10分くらいでしょうか? 途中、不安になって電話してしまいました

湖上荘のテラスからは比良山系や比叡山、琵琶湖大橋などが望めます。先ほどまでの雲が切れ切れになったサンセット時、山並みと向き合いながら、ビールで乾杯。無事に到着できたことに感無量です。

そして、夕食は湖の魚尽くし! 川に遡上(そじょう)してきたアユのつくだ煮、焼いたモロコの酢漬け、ゴリと玉ねぎの天ぷら、ビワマスの煮付け、ビワマスの刺身、ヒラスゴの焼き物……。アユ以外は聞いたことのない名前ばかり。淡水魚なのであっさりしているかと思いきや、どれも脂がのっていて、美味!

「海の幸」ならぬ、湖の幸ざんまい。骨までおいしくいただけました
「海の幸」ならぬ、湖の幸ざんまい。骨までおいしくいただけました

船上でやぐらを組む、独特の刺し網「小鮎漁」

琵琶湖には50種もの固有種が生息し、季節ごとに旬の魚も移り変わっていくそうです。琵琶湖全体の漁獲量の半分を、沖島の漁師さんが担っているとか。中でも沖島特有で、春から秋の風物詩となっているのが、「小鮎(あゆ)漁」です。

魚の通り道に網を仕掛け、網の穴に頭を突っ込んだ魚をそのまま引き揚げる刺し網漁です。沖島では船に高さ3メートルはあるやぐら(足場)を組み、夫婦で夜中に出船。やぐらの上に乗り、カンテラで照らす湖から網を引き揚げ、夫婦で網を振って魚を網から外すそうです。

足場を組んだ小鮎漁の船。春から夏にかけて鮎が育つにつれ、網の目の大きさも変えて漁をします=滋賀県水産課提供
足場を組んだ小鮎漁の船。春から夏にかけて鮎が育つにつれ、網の目の大きさも変えて漁をします=滋賀県水産課提供

夜間に高さ3メートル! 恐怖なはず……。それでも漁師さんいわく「若い頃からやっているし、光の当たっているところ以外は見えないから、怖くない」とのこと。宵闇の湖に光量のあるカンテラが揺れ、働く人々のシルエットが浮かびあがる沖島の風物詩、見てみたいものです。

宿自家製、魅惑の鮒ずし そのままでもお茶漬けでも

そして湖上荘の夕食は次から次へと皿が運ばれ、ハイライトの鮒(ふな)ずしが登場。かねがね、「鼻をつく強烈な臭い」がすると、聞きしに及ぶ郷土料理。こわごわと口に運ぶと……。「なにこれ、おいしい!」

こちらが、鮒ずし。女将(おかみ)いわく、「鮒ずしのおいしさはお米のおいしさ!」
こちらが、鮒ずし。女将(おかみ)いわく、「鮒ずしのおいしさはお米のおいしさ!」

今回いただいたのは、湖上荘の女将(おかみ)が漬けた2年物の鮒ずし。沖縄の「豆腐よう」(島豆腐を米こうじと紅こうじ、泡盛で発酵させた食品)のような香りと味わい。カラスミと親戚関係(!?)にあるような後味。ちびりちびりと、お酒のあてにもなる旨(うま)さ。

鮒ずしは琵琶湖固有種のニゴロブナを乳酸発酵させた保存食。いわゆる「なれずし」です。ニゴロブナ(メスが抱卵する2月末~3月末が鮒ずし用の漁期)の内臓を取り出し、塩漬けにする「塩切り」を行い、3カ月発酵させたのち、鮒を洗って乾かし、米と鮒をミルフィーユ状に重ねてさらに発酵させる「本漬け」を行います。本漬けの米の敷き方、重しの乗せ方、保存場所、気候、いろんな条件が重なり合い、家庭ごとはもちろん、同じ味わいは二つとない鮒ずしが完成します。お正月など、ハレの日にいただく、特別な伝統料理です。

翌朝は鮒ずしをお茶漬けにしていただきました
翌朝は鮒ずしをお茶漬けにしていただきました

「もっと臭いかと思った」と女将に聞くと、「本漬け時、かつては水で漬けていたけれど、今はポリ漬物袋を使って密封状態で発酵させるのが主流。だから臭いがないのかな、わからへんけど」と。

奥の深い鮒ずし! 湖上荘の鮒ずしはマイタイプでしたが、他にもいろいろ食べ比べしたくなる魅惑の世界です。

作り手によって十人十色の味があるという鮒ずし。最初に出会った一品で、好き嫌いが分かれるとか=滋賀県水産課提供
作り手によって十人十色の味があるという鮒ずし。最初に出会った一品で、好き嫌いが分かれるとか=滋賀県水産課提供

ちなみに、毎年夏、沖島漁協と琵琶湖汽船が共同企画で行う『鮒ずし手作り講習会』を開催。予約は超激戦だそう。参加者はマイ桶をもって参加するそうです。

【取材協力】漁家民宿 湖上荘 http://www.zd.ztv.ne.jp/kojousou/

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