不条理とのつきあい方
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イノベーションを阻む「先例おじさん&おばさん」は、余裕がある証拠

コロナやデジタル化の影響で「働き方」にも変革が迫られる中、組織や人間関係から生じる「ビジネスの不条理」をどう乗り越えていけばよいのでしょうか。連載「不条理とのつきあい方」では、ビジネス、テクノロジーなど幅広い分野で発信するコンサルタントの塩野誠さんが、ビジネスパーソンの悩みに答えます。

【質問】既存事業の落ちこみが大きく、新しい取り組みに挑戦しようとしています。イノベーションを生む組織作りの肝は何でしょうか。逆に、衰退する組織の特徴を教えてください。(50代会社員)*質問は編集部が取材したものですが、読者のみなさんからも募集しています。

変化の近くにビジネスチャンスがある グズグズしない

iPhoneがはじめて発売されたのは2007年ですが、技術や社会が変わる時、イノベーションというか、組み合わせに変化が起きます。iPhoneがないとiPhoneケースは存在しないですし、アプリもありません。

iPhoneを世に送り出すのは、簡単なことではありません。しかし、イノベーションが生まれる時や社会が変化する時に近くにいると商売のチャンスが生まれます。小さな会社でも新しくできた市場の近くにいると一緒に大きくなれますし、iPhoneケースを売れるかも知れません。

大企業でも中小企業でも、グズグズしていると、「あの時、ウチも考えていたんだけど、結局やらなかったんだよね」という数年後を迎えることになります。

また、最初にはじめた人が勝つわけでもありません。ゴールドラッシュでも採掘道具が売れたように、例えばネットの勃興期であれば ネット起業家に道具を売る商売、例えばサーバーの運用保守ビジネスはもうかりました。ただ、その後は競争が激しくなり、初期のような利益は確保しづらくなりました。 時代の変化を見て、新しい組み合わせを世に出すと事業になります。検索エンジンに広告を組み合わせたグーグルのサービスを今では老若男女が利用しています。

イノベーションは新しい組み合わせで新しい価値を生み出すこと

このようにビジネスにおける「イノベーション」は、新しい組み合わせで新しいお客さんをつくり出すことです。今はどこの会社の経営計画にも「イノベーションの推進」「イノベーション人材の育成」という言葉が躍ります。多くの会社で長年にわたり、「いつものやつで」とやってきた事業は業績不振となり、経営陣は「次の10年を見据えて新しい事業の柱を創出するぞ」と言ってはみたけれど、悩んでいます。

そこで「イノベーション」さえ起きれば、ドラマのように社員が立ち上がって、「これだ!」となると。でも周りを見渡すと、「やっぱり人材がいない。野球ばかりやってきた人間に、急にサッカーをやらせるのは無理か……」と悩みは深いのです。ご質問には、「イノベーションとは何か問題」を整理した上で、「あるべき組織」の順にお答えさせていただきます。

まず、「イノベーション」には、例えばつい最近まで使われていた白熱電球がLEDになり、電球を交換することが劇的に減るような技術革新があります。

イノベーションを阻む「先例おじさん&おばさん」は、余裕がある証拠
LEDのような技術革新は、代表的なイノベーション 写真=Pornpak Khunatorn/Getty Images

ただ、この記事で強調したいイノベーションとは、モノやサービスの「組み合わせ」を変えることでお客さんに価値を提供して、お金がもらえるものです。それらは新しいモノづくりだけでなく、新しい原材料、新しい売り方、新しい届け方などと、新しい組み合わせで新しい価値をつくり出すことです。

交通機関が整備されていないような場所にドローンでワクチンを届けるのも新しい届け方でしょうし、調味料を小分けにして売るのも、少量だけ欲しいお客さんにはうれしく、実質的に値上げまでしているイノベーションかも知れません。世界の脱炭素化の流れで、二酸化炭素を出す石炭や天然ガスの代わりに、水素を使って二酸化炭素を出さずに水だけを出すエネルギーインフラをつくることもそうですし、ものづくりのプロセスをリアルタイムにネットで公開してファンを集めることも売り方のイノベーションでしょう。

繰り返しますが、イノベーションとは、組み合わせで新しいお客さんをつくり出すことなので、コンビニのスナックコーナーでは100円だったお菓子が、少し味付けを変えておつまみコーナーに置けば200円で売れるということもあり得ます。

イノベーションを阻む「先例おじさん&おばさん」は、余裕がある証拠
イノベーションはモノやサービスの「組み合わせ」を変えることで新しい価値を提供すること 写真=ALotOfPeople/Getty Images

なぜ、こうした新しい組み合わせが生まれてこないのでしょうか。日本の産業の移り変わりから考えてみましょう。ざっくり言えば、立ち上がり→成長→安定→安定が揺らぎ現在に至る、という流れだと思います。戦後から続いてきた会社であれば、現在の役員は20代でバブル景気の終わりを経験して、失われた何十年と言われる時代を耐えてきた人たちです。今、部長ぐらいの年齢だと、20代後半に日本の銀行が次々と破綻(はたん)し、30代はインターネット企業が巨大化していくなか、リーマンショックで景気低迷を経験した世代です。

そもそも会社人生で、事業成長を経験した人は少ない

つまり、肌感覚として、どんどん新しいものがつくれる、どんどん商売が伸びるという経験をした人は少ないのです。少子高齢化も相まって、事業成長の経験がない人たちが新しい組み合わせに臆病なのは当然です。

イノベーションを大仰なものとして、「特命案件だ! イノベーションで既存事業と同じ売り上げ数百億円を目指せ!」なんて会社もあります。また、野球選手が急にサッカー選手になれない中で、飛び地に突っ込むには、買うか(買収)、借りるか(提携)、自社でつくるかしかないので、外部の力を借りることを検討する会社もあるでしょう。「自社の強みは何か?」や「我々は何者か?」と幹部が合宿するのも良いですが、会社によっては「ウチの強みは今ある現金だな」という結論が出てしまうかも知れません。

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