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ジェームズ・ボンドの現役パートナー アストンマーティンDB5

イタリアのカロッツェリア・ツーリングが特許をもつ軽量化技術によるボディも特徴

この記事が公開された頃は、多くの人が「もう観たヨ」って言っているかも。「007」シリーズの最新作「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」。驚いたのは、冒頭からアストンマーティンDB5が大活躍すること。

「ゴールドフィンガー」(1964年)で初登場したときに搭載されていた煙幕をはじめ、「スカイフォール」(2012年)で追加された機関銃やまきびし、さらに今回、マシンガンによる銃撃を受けても割れないウィンドウガラス、といった新機能が盛り込まれている。

DB5、64年に発表されたモデルなのに、いまも現役でボンドにとって頼りがいのあるパートナーになっているのが、なんだかおもしろかった。老兵は死なず、かつ、消え去りもしていない。

ジェームズ・ボンドの現役パートナー アストンマーティンDB5
フェンダーとキャビンのルーフラインの組み合わせが美しい

そもそもDB5は、59年発表の先代DB4GTのパワーアップ版として登場した。ボディはフレーム付きだからだいぶクラシックだ。このクルマの魅力は、伊・ウェバー製の気化器を3基そなえた「ヴァンテージ」や、ZF社製の5段ギアボックスが用意されたところにある。

DB4にもヴァンテージモデルはあったものの、DB5ヴァンテージはエンジン排気量が増えて、パワーがあがり、しかも、5段ギアボックス搭載モデルだと、より高速が出せるようになった。このクルマならではの特長だ。

ジェームズ・ボンドの現役パートナー アストンマーティンDB5
当時のアストンマーティンのダッシュボード。実に魅力的

そういえば、イアン・フレミングによる「ゴールドフィンガー」の原作(59年)では、ボンドカーは「アストンマーティン・マークⅢ」。「ゴールドフィンガー」とゴルフをプレイするために、ジャガーマーク2と、どちらを選ぶかとMI6の車両係から訊ねられ「近代的なスマートさがある」との理由でアストンマーティンを選ぶことになっている。

そもそもアストンマーティンは、1913年に創業した英国のスポーツカーメーカー。自動車史上ユニークとされるのは、22年に市販車第1号を発表するまで、約10年間かけてレースなどを行っていたこと。マーケティング的には、長期的視野にたったブランド戦略といえるだろうか。

「最初の市販車が世に出た頃には、アストン・マーティン(原文ママ)の名は英国のスポーツマンに広く知られていたのである」。自動車評論家の草分けで、自身アストンマーティンDB4GTザガートを所有していた故・小林彰太郎氏は編著「世界の自動車 アストン・マーティン アルヴィス インヴィクタ」で書いている。 

そういえば、以前小林さんに直接うかがった話では、「DB4GTのブレーキは思いっきり踏まないと効かないので、フルブレーキングすると、自分のからだのほうが持ち上がって頭が天井についちゃった」とのこと。腕っぷしの強いドライバーのためのクルマ、それがむかしのスポーツカーだったのだ。

ジェームズ・ボンドの現役パートナー アストンマーティンDB5
ボンネット上の大きなエアスクープが特徴的

アストンマーティンは、しょっちゅうといっていいほどオーナーが変わっている。倒産も数回。これもユニークな事実だ。ボンドカーの車名にもある「DB」とは、47年に譲渡された際、新たなオーナーになったデイビッド・ブラウンの頭文字。そのあともオーナーが変わっても、現在にいたるまで、DBは引き継がれている。

「ノー・タイム・トゥ・ダイ」で女性諜報部員が、最新のアストンマーティンに乗るシーンがある。それは「DBS」。V12気筒で後輪を駆動する、すばらしいドライブフィールをもったモデルだ。ちなみにDBの名をもつモデルは2プラス2(後部に座席をもつ)だ。

ジェームズ・ボンドの現役パートナー アストンマーティンDB5
ふくよかな曲面がうつくしい

小説でボンドが選んだマークⅢは、軽量構造のボディに、ベントレーの創業者であるW.O.ベントレーが設計監修した2.9リッター直列6気筒を搭載。ディスクブレーキも装着していた。

映画では、公開時に合わせてモデルを変更。DB4ヴァンテージをDB5に手直ししてボンドカーを製作したとか。DB5は、4リッター直列6気筒エンジンで286馬力と、当時ではスーパーな高出力を発生。2年間しか作られなかったモデルなのに、自動車史に残る存在となったのは、ボンドのおかげかもしれない。

ジェームズ・ボンドの現役パートナー アストンマーティンDB5
DB5ヴァンテージは324馬力とハイパワーを持っていた

かつての映画に登場したボンドカーとして作られたDB5は、フロリダの空港の格納庫で保管されていたものの、1997年に盗難に遭い、いまだに見つかっていない。2021年夏に、どうやらあのクルマがそれだ、という個体が中東で見つかったという報道も、クルマ好きのあいだで話題になった。

市場では推定で2500万ドルだとか。私も子どもの頃、ボンドカーに憧れたくちだ。モデルカー、何台も持っていた。そういう人が世の東西を問わず多いということか。盗難はダメですけどね。

写真=Aston Martin Lagonda

【スペックス】
車名 アストンマーティンDB5
全長×全幅×全高 4570×1680×1340mm
3995cc直列6気筒 後輪駆動
最高出力 210kW(282ps)@5500rpm
最大トルク 390Nm@3850rpm

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