料理家・冷水希三子の何食べたい?
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滋味深い鶏スープがしみる、自家製きりたんぽ鍋

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回はご当地お鍋の第1弾。鶏肉の旨味(うまみ)を感じる、秋田名物のきりたんぽをご紹介します。

―― 冷水先生、こんにちは。だんだんと冬の気配が濃くなってきましたね。

冷水 そろそろ厚手のコートが欲しい季節ですね。

―― 温かいお料理がおいしく感じられてきたので、くいしんぼう的には正式に冬です。

冷水 本当に。食べたいものが変わってくるのは、ひとつの季節の変わり目ですよね。

―― その証拠に、最近の読者リクエストは急激にお鍋への欲求が高まってきています。

冷水 冬はお鍋ですよね〜、賛成です。

―― 中でも目立つのは、お鍋のマンネリ化を脱したい!という声です。

冷水 定番のものもおいしいですけど、たまには新鮮な味も楽しみたいですものね……。でも、どんな感じのものがいいですかね? 洋風のお鍋とかもできますし。

―― そうですねぇ……。あっ、このところお出かけできない日々が続いていたので、ご当地お鍋なんていうのはどうでしょうか? 地方ごとに名物のお鍋があると思うんですけど、もし自宅でそれを再現できたら旅気分を味わえて楽しいかなと思ったりして。

滋味深い鶏スープがしみる、自家製きりたんぽ鍋
自宅で鶏スープを作る場合は、直径22~24cmくらいの鍋に、水、骨付き鶏肉(ぶつ切り)、長ネギの青い部分1本分を入れて、1~2時間ほどコトコト煮込みます

冷水 それは面白いですね! どこのお鍋が気になりますか?

―― お鍋といえば寒い地方ですから、東北ですかね? 宮城のせり鍋も気になるし、芋煮もいいですよね……。あっ、秋田のきりたんぽもいいかも! でもあの棒状のきりたんぽ、どうやって作るんだろう?

冷水 あら、あれはご飯が材料なので、自宅で簡単に作れますよ。

―― そうなんですか! なんだか楽しそうですね。じゃあ今回はぜひ、きりたんぽに挑戦してみたいです!

冷水 きりたんぽに欠かせないせりも出回ってきたので、ちょうどいいですね。

―― よろしくお願いします!

冷水 どんなお鍋でもそうですが、一番重要なのは出汁(だし)、スープです。きりたんぽは地鶏をコトコトと煮て、旨味たっぷりの鶏スープを作るところから始めるのが理想なのですが、時間的にも大変だという場合は市販の鶏だしスープを使っても大丈夫です。

―― ぜひ今日はスープを作るところから見せていただきたいです。

冷水 スープ用には骨付きの鶏肉を使うと、より旨味と深みのある出汁が出ます。水2000mlに対して、霜降りした骨付き鶏肉のぶつ切り500~600g、長ネギの青い部分1本分を鍋に入れ、沸いたら弱火で1~2時間ほど煮ます。

―― わあ、ぜいたくに鶏肉を使うんですね。これ、スープを取り終わった後の鶏肉はどうするんですか?

滋味深い鶏スープがしみる、自家製きりたんぽ鍋
ごぼうはよく土を落としてから、ささがきに。ごぼうをまな板に斜めに立て、くるくる回しながら先端を包丁で削るようにして切っていきます

冷水 お肉の旨味がスープに出てしまっているので、例えば唐揚げのように揚げて、そこに香味ソースをかけて油淋鶏(ユーリンチー)風にするとか、あとは細かく割いてサラダの具材にするなど、少し味を加えて調理するとおいしく食べられますよ。

―― 無駄にするにはもったいないですものね!

冷水 スープは大体1時間ほど煮る必要があるので、その間に具材の準備をしましょう。野菜の下準備で注意していただきたいのは、せりの根っこを切り落とさないことです。

―― 根っこも食べるんですか!?

冷水 はい、宮城県名物のせり鍋もそうですが、せりは根っこの香りと風味こそが醍醐(だいご)味なんです。だから根っこは切り落とさず、きれいに洗ってそのままお鍋に入れるんです。煮込みすぎるとせっかくの香りが飛んでしまうので、ほかの具材が煮えたところで、食べる直前に入れてくださいね。

―― ご当地鍋には学びがたくさんありますね。

冷水 次に肝心のきりたんぽを作っていきます。炊き立てのご飯をボウルに入れて、麺棒やすりこぎなどで“はんごろし”にしていきます。

滋味深い鶏スープがしみる、自家製きりたんぽ鍋
きりたんぽは米粒の食感を完全に無くしてしまわないよう、“はんごろし”の状態に。麺棒などで叩くようにして潰します

―― “はんごろし”……。どういう感じですか?

冷水 麺棒などでご飯を叩(たた)いていくのですが、完全に米粒を潰してしまわずに、ある程度粒感を残した状態です。

―― 完全に潰すと餅になっちゃいますもんね(笑)。

冷水 たしかに(笑)。ただ、きりたんぽは棒に巻きつけて焼くので、ある程度粘りがないと巻き付けられないんです。

―― 粘りがあるけど、米粒の食感も楽しめる程度ですね。

冷水 もしちょうどいい棒が手に入らなかったり、棒に巻いた状態でフライパンで焼くのが大変だったりする場合は、小判型にまとめても大丈夫です。

―― それは手軽でいいですね。でも、きりたんぽの風情を味わうには、やっぱり棒に巻きたいですね!

冷水 元々は囲炉裏に棒を立ててお米の表面をこんがり焼くというのがきりたんぽですからね。

―― フライパンで焼く時の注意点はありますか?

冷水 お米の表面が乾いた状態で焼くことです。なので、棒に巻き付ける場合も小判型にまとめる場合も、少し時間をおいてから焼くとフライパンにお米がこびり付きません。

―― おお、それはメモ、メモ。

冷水 お米の表面にうっすらと焦げ目がついたら大丈夫です。あとはスープを入れたお鍋に鶏肉とせり以外の野菜、半分に切ったきりたんぽを入れて、鶏肉に火が通ったところでせりを入れて、さっと煮たら完成です。

滋味深い鶏スープがしみる、自家製きりたんぽ鍋
きりたんぽ用の棒は割り箸でも。ご飯がポロポロと剝がれてしまうようなら、もう少し麺棒でたたいて粘りを出してください

―― うわあ、鶏肉からとったスープ、旨味が凝縮されてて、本当に滋味深いですね……。体にしみ渡るような感じです。

冷水 時間をかけてスープをとったかいがあるでしょう?

―― お鍋は出汁が命というのが実感として分かります……。醬油(しょうゆ)味が濃いようなイメージを持っていたのですが、すごく優しい風味ですね。全然しょっぱくない。

冷水 鶏肉の旨味を味わってもらいたいので、味付けは控えめにしました。旨味があれば塩みは少しでいいんです。

―― スープをごくごく飲みたくなっちゃいます(笑)。

冷水 自分で作ったきりたんぽのお味はどうですか?

―― お出汁の中でご飯がほろほろと崩れて、とてもぜいたくな鶏雑炊を食べているような感じです。表面が少しカリッとしていて、香ばしい香りもいいですね。

冷水 スープが余ったら中華麺やうどんを入れてもおいしいですよ。

―― あと、根っこごと入れたせりが素晴らしく香りと風味がいいですね。これまでお鍋にせりを入れることがなかったのですが、爽やかで、どことなく土の香りというのでしょうか? 大地を感じるような力強さがあります。

冷水 それもご当地鍋の魅力なのかもしれませんね。寒い時期に旬を迎える野菜を使っているので、まさに自然の恵みを味わうというか。

―― 秋田の風景が目に浮かんできました……。旅するご当地鍋シリーズ、楽しいですね!

冷水 ぜひまた別の土地のお鍋も作ってみましょうね。

―― 本場のきりたんぽも食べてみたくなってきました!

冷水 お料理から始まる旅というのも、素敵ですね。

きりたんぽ鍋

材料(3、4人分)

  • 鶏もも肉(骨つきぶつ切り)
    500g
  • ごぼう
    30㎝
  • 舞茸
    1パック
  • 長ネギ
    1本
  • せり
    1束
  • 炊きたてご飯
    1~2合

鶏スープ

  • 鶏肉(骨つきぶつ切り)
    500~600g
  • 長ネギの青い部分
    1本分
  • 2000ml

A

  • 鶏スープ
    800ml
  • 50ml
  • 醬油
    大さじ2
  • みりん
    大さじ1
  1. 鶏スープは、直径22~24cmの鍋に、熱湯で霜降りにした鶏肉、水、長ネギの青い部分を入れ、1~2時間ほど弱火でコトコト煮込む。
  2. 鍋の具材の鶏もも肉を熱湯で霜降りにする。
  3. ごぼうはささがきにして水にさらす。長ネギは1㎝幅の斜めスライス、せりは15㎝くらいの長さに切り、根はよく洗う。舞茸(まいたけ)はバラしておく。
  4. 炊きたてのご飯をボウルに入れ、麺棒などでご飯粒を潰す感じに叩き、粘りを出す。
  5. 手に塩水をつけ、3.のご飯を適量とる。割り箸などに15㎝ほどの筒状になるように握りながら巻く。ご飯の表面が乾いたら何も引かないフライパンで焦げ目がつくまで焼く(棒から外せそうなら外して焼いてよい)。
  6. 鍋にAを入れて火にかけ、1.の鶏肉、水気を切ったごぼう、長ネギ、舞茸を加え、半分に切った4.のきりたんぽを加える。鶏肉に火が通ったらせりを加える。

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