小川フミオのモーターカー
連載をフォローする

フェラーリ「SF90ストラダーレ」に試乗 エレガントなハイブリッド

ヘッドランプはブレーキ冷却用のエアインテークと一体化/写真提供=フェラーリ・ジャパン

世にいうスーパースポーツカーも、ハイブリッドの時代に突入した。ハイブリッドって、意外ですよね。でもあのフェラーリも流れに乗ったのだ。それが「SF90ストラダーレ」。モーターだけでも走ってしまう、新しい時代のスポーツカーだ。実際に、純粋なガソリンモデルより速い。

前輪をモーターで、後輪をエンジンとモーターで駆動する、2人乗りとしてはフェラーリ初の4WDモデル。メーカーによる静止から時速100キロまでの加速タイムは2.5秒。たとえばフェラーリF8トリブートで2.6秒、ポルシェ911ターボの速い仕様で2.8秒なのだ。

ハイブリッドには、環境コンシャスなやさしいイメージがあるかもしれない。じっさいは、大容量の駆動用バッテリーと高性能のインバーター(直流→交流への変換器)を搭載できるプラグインハイブリッドだと、ピュアEVのスポーツモデルと同等に、かなりパワフルに仕立てることが出来るのだ。

フェラーリ「SF90ストラダーレ」に試乗 エレガントなハイブリッド
伝統的な丸型でなくなったリアコンビネーションランプが特徴的/写真提供=フェラーリ・ジャパン

「フェラーリのロードカーとレースカーとの強い絆を強調するもの」というのが、フェラーリによる、SF90のコンセプトの定義。美しい、みせびらかしのためのスポーツカーでなく、1000馬力のパワーをフルに活かして速く走るために、電動のスポイラーをはじめ、さまざまな空力技術が採用されているということなのだ。

ハイブリッド化が進む理由はもうひとつ。環境対策だ。CO2発生量が多い(燃費が悪い)と、企業に課せられる税金が高くなったり、投資家の間での評価が下がったりする懸念がある(フェラーリは上場企業)。さらに、将来欧州では内燃機関での走行を禁止する区域が市街地で増えてくると予想されているため、そこではモーターだけで走る機能が必須となる。

諸条件を満たすために、スーパースポーツカーにとっても、ハイブリッドあるいはピュア電動であることが、もはや避けて通れない道なのだ。英国の競合メーカー、マクラーレンも「アルトゥーラ」というプラグインハイブリッドを発表したばかりだし、ランボルギーニもアストンマーティンもプラグインハイブリッドへの移行を公言している。

フェラーリ「SF90ストラダーレ」に試乗 エレガントなハイブリッド
乗員が乗るキャビンは比較的前に配置され、ノーズは短い/写真撮影=筆者

そこにあって、フェラーリがSF90を発表したのは、2019年と早かった。ただしコロナ禍などもあって、日本で試乗できるようになったのは、21年9月。乗っての印象は、さきに書いたとおり、数字はウソをつかない。とにかく速い、というものだ。

新設計のV8エンジンに加えて、前に2基、後ろに1基の電気モーター搭載。最高出力はイタリア式表示で1000CV(馬力)とされている。ドライブモードは、ウェット(濡れた)路面、スポーツ、レースと選択できる。同時に、モーター走行、ハイブリッド走行、エンジン走行も選べる。

東京から高速道路に乗って郊外へ、という試乗の際、フェラーリジャパンの”お勧め”は、出力がしぼられるウェットモードでの走行だった。このときの発見は、1000馬力といっても、混んだ市街地でも扱いやすいことだ。

フェラーリ「SF90ストラダーレ」に試乗 エレガントなハイブリッド
カラースキームは多様で、ノーズが車体同色の仕様もある/写真撮影=筆者

最近のフェラーリはどのモデルも、時速30キロでも、扱いをもてあますことはない。オールマイティな設定なのだ。つまりSF90ストラダーレも、その例外ではない。

ハイブリッド走行を選ぶと、だいたい20キロ前後をまずモーターだけで走行。駆動用バッテリーが規定値を下回るとエンジンがかかる。ただし、駆動用バッテリーが空を指していても、モーターが止まることはない。操縦性を確保するためだ。

モーター走行も、意外なほど力強い。加えて、無音のおどろきもある。ビルの駐車場内をフェラーリで走るとき、自分が大きなスピーカーに取り囲まれているような大音響の排気音をとどろかせるのが、フェラーリの常である。それだけに、六本木ヒルズの駐車場内を、SF90ストラダーレが電気走行するときの無音ぶりは、逆に衝撃的だった。

フェラーリ「SF90ストラダーレ」に試乗 エレガントなハイブリッド
コクピットはオプションパッケージの「アセット フィオラノ」仕立て/写真撮影=筆者

エンジンがかかると、おなじみのフェラーリが殻から飛び出してきた、と思った。低いバイブレーションをびりびりと効かせたV8サウンドとともに、車体がぐいぐいと前へと出ていく。ただし、重めのアクセルペダルの設定もあり、つねにドライバーが速度を制御している感覚は失われない。

どこまで加速するかは、一般道でははかり知れない。わかったのは、とにかく速いこと。アクセルペダルをぽんっと踏み込んだだけで、おどろくほどの瞬発力をみせる。いっぽうで、直進性は高く、長距離の移動も問題なくこなすだろう。乗り心地も意外なほどいいので、東京と箱根の往復ていどなら朝飯前というかんじ。

ボディは、1000馬力のハイブリッドシステムをおさめたドライバーがおさまるキャビン背後の大きな存在感と、前後の駆動輪まわりのふくらみが目につく。同時に、きれいな曲線と曲面で、エレガンスも追求している、フェラーリ独自ともいえる美がある。

フェラーリ「SF90ストラダーレ」に試乗 エレガントなハイブリッド
さまざまなパーツが再設計されたV8エンジンはかなり低い位置に搭載されている/写真撮影=筆者

実はボディ各所には、空力のための仕掛けが多い。たとえば、電動でうごいて空気の流れをコントロールし、高速でのボディの浮き上がりを防ぎ操縦安定性を高めるシステム。

ほかにも、熱を持ちやすいインバーター(変換器)や、ブレーキの冷却など、空気をどう入れてどう出すかが、たいへん重要な課題だ。それらを追求しつつ、機能主義的なデザインにおちいっていないのが、SF90ストラダーレの美点だと思う。

昨今、小型車やSUVでもハイブリッドシステムをうまく使って、気持ちよく走れるモデルが多い。まもなく内燃機関が禁止されるかもしれない、なんていうときだけれど、クルマの出来は、じつはどんどんよくなっている。楽しいドライブをしたい、というドライバーの願いに応えようとしているからだろう。

【スペックス】
フェラーリSF90ストラダーレ
全長×全幅×全高=4710×1972×1186mm
3990ccV型8気筒ガソリンエンジン+電気モーターによるプラグインハイブリッド 4輪駆動          最高出力:574kW(エンジン)+217kW(前後モーター)
最大トルク:800Nm(エンジン)+85Nm(Fモーター)+266Nm(Rモーター)
価格:¥53,400,000〜

REACTION

LIKE
COMMENT
0
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら