発酵デザイナーの食国探訪
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個性豊かな麴たち 発酵の原点に迫る(下)

タフな中国の麴

和食の根幹となる麴の文化ですが、実は発祥は中国から。紀元前から酒や調味料をつくるためにカビの発酵技術が使われてきました(日本で独自に進化したという説もあるのですが、僕はアジアをあちこちフィールドワークしてみて、大陸経由で日本に伝播〈でんぱ〉してきた説に一票)。

それでは最後に中国の麴を紹介しましょう。現在一般的に使われている麴は、麦のフスマを水で練って固めたものに、クモノスカビ(あるいはケカビ)という日本のコウジカビとは違うカビをつけたもの。大陸のカビは日本のカビと違って深く根(菌糸)を張り、草の部分(胞子)はそこまで伸びません。なので表面のモコモコよりもくっつく食材の深さを優先します。

日本の麴が穀物の小さな粒をモコモコさせるのに対し、中国の麴は大きな穀物のブロックにどっしりと根を生やさせます。同じカビを発酵のスターターとするのですが、見た目は全然別物。これは大陸と島国の菌の特性の違いに由来するのですね。

ブロック状のフスマ麴。菌がしっかり生えた後に砕いてパウダー状にし、主に蒸留酒のもろみの発酵スターターとして使います。寒い地域ではハダカムギやそば粉、あたたかい地域ではトウモロコシなど、様々な食材と合わせてもろみを醸していきます。それを蒸留して焼酎のように飲むのが中国のスタンダードな郷土酒。ただ日本の焼酎よりも断然アルコール度数が高く(最低40度以上)、ロックや水割りにはせずストレートでクイッと飲みます。

個性豊かな麴たち 発酵の原点に迫る(下)
中国焼酎の蒸留現場。田舎では自家醸造が盛ん(筆者撮影)

大陸のクモノスカビは、日本の黒麴菌のように酸を出し、さらに苦みのようなものまで出して他の菌を寄せ付けないなかなかタフなヤツです。しかも分解能力も高く、蒸し煮したハダカムギやトウモロコシに振りかけてしばらくすると穀物をドロドロに溶かしてしまいます。

日本のスタンダードなコウジカビは、専用の部屋で丁寧に守って育ててやらないといけない繊細なヤツなので、中国のカビのタフさを見た時はびっくり仰天。半野外のような場所でわりとテキトーに育ててもしっかり麴ができる「手がかからないたくましい野生児」のような感じです。

とはいえ日本と中国の麴を比較すると一長一短。中国の麴は鋭い酸味と苦みを出すため、日本酒のようなフレッシュなお酒には不向き。もろみを搾って飲む時はある程度熟成させて風味を丸くしないと飲めない。この熟成させたお酒がつまり紹興酒なのですが、かなり手間がかかるため中国でもごく一部でしか飲まれていません。中国のお酒といえば紹興酒、というのは実は正しくなく、お酒はだいたい蒸留して焼酎のように飲むのです。

もともと中国で生まれた麴の文化ですが、千年以上の時を経て、大陸と島国では違う道に分岐して、全く異なる食文化を花開かせたのです。

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