発酵デザイナーの食国探訪
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個性豊かな麴たち 発酵の原点に迫る(下)

発酵文化のスペシャリスト小倉ヒラクさんが、「食」を起点に国内外の文化や歴史を掘り下げる連載です。「麴(こうじ)」解説の3回目。麴の正体と働きに続いて、今回はそれぞれの個性と、その生かし方を見ていきます。

南国にすむ個性派麴

皆さま、発酵してますか? 小倉ヒラクです。

さらに麴の話を続けます。前回までは比較的スタンダードな麴の話をしましたが、実はさらに個性的な麴のバリエーションもあります。

さいきん僕の運営するお店(下北沢の発酵デパートメント)で大人気なのが、黒麴。黒麴菌という真っ黒なカビをモコモコに生やしたものです。

この黒麴、基本的には沖縄の泡盛や一部の焼酎のもろみを醸すために使います。色は河原の小石のように真っ黒。さらに味もパイナップルやレモンのような刺激的な酸味を含みます。

「あれ? でも泡盛も焼酎も透明だし、酸っぱくもないよね?」

そのとおり。泡盛や焼酎のような「蒸留酒」は、どぶろく状に醸したもろみを蒸留して、透明なアルコールの液体を取り出す酒なので、原料の色や風味(甘味や酸味など)はほとんど反映されないのですね(ウイスキーなど琥珀〈こはく〉色の蒸留酒も、蒸留直後は透明。樽〈たる〉で熟成させるうちに色がつきます)。

なので、焼酎や泡盛を飲むぶんには黒麴の存在はほとんど意識されない。一般的には黒衣(くろご)のように後ろに隠れています。

ところがここ1年ほど、この黒麴でつくる甘酒が突如ブレーク。一般的な黄麴でつくるのと同じように甘酒にすると、甘酸っぱいトロピカルフレーバーの甘酒ができてしまうのです。

これがヨーグルトのような爽やかさで、甘酒がニガテな人でもすんなり受け入れられる。ニューウェーブ甘酒としてじわじわファンを増やしているのですね。

個性豊かな麴たち 発酵の原点に迫る(下)
黒麴の甘酒。笑っちゃうぐらい真っ黒(筆者撮影)

黒麴のもとになる黒麴菌は、もとは沖縄はじめ南の島にすんでいる野良カビでした。本土と違い、熱帯に近い気候ではライバルの菌が多く、強い酸を出してライバルをブロックするタフな菌なのですね。その酸が爽やかな風味を作り出すわけです。

暑いところでも腐敗しない便利な黒麴菌は、やがて醸造所や研究所で培養されるようになります。そのうちに酸を出す機能はそのままで、色の白い突然変異種が発見されます(白いトラみたいなヤツですね)。その突然変異種は「白麴菌」と名付けられ、現在焼酎に広く使われる白麴に使われるようになりました。

この白麴。さいきん日本酒業界でも注目されはじめ、添加物なしでステキに甘酸っぱい酒を醸せるマジカルな麴として重宝されるようになりました。

かつて日本では酸っぱい飲みものは「腐ってそう」と敬遠されていたのですが、ヨーグルトやワイン、キムチなどが普及したからなのか、おいしいものとして認識されるようになってきました。その潮流とともに、南国出身の酸っぱい麴が注目されるようになってきたのですね。

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