花のない花屋
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96歳の今もがんばり屋のお母さん。これからは自分のために

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
中居真生子さん(仮名) 69歳 女性
主婦
東京都在住

    ◇

私の母は大正生まれの96歳。私の兄弟との2世帯住宅で、一人暮らしをしています。青春時代は戦争中でオシャレもできず、独身時代に就いた医療関係の仕事を結婚後も続けながら、何よりも私たち家族に尽くしてくれた母。また父の晩年はその介護に打ち込むなど、いつも人のために生きてきました。

そして母は大変ながんばり屋なのです。例えば私が小学校のときは夜勤明けで帰っても、寝ないで家事をして、私たちを学校に送り出してくれました。また保護者会などの学校の行事にも、夜勤明けで行ってくれることがたびたびでした。

そんな無理がたたったのかもしれません。私が高校3年のときにはついに体を壊して、私は一時、大学受験を諦めました。ところが半年ほどで母は病気を奇跡的に克服。まだ4年制大学で学ぶ女性が少なかった時代、母の「女性にこそ学問が必要」という言葉に応援され、受験勉強を再開して大学に入学することができました。

女性に学問は必要ないと言っていた父に代わり、入学費などの費用は、すべて母が出してくれました。おかげで私は憧れだった教員という職につくことができました。

現在私は母の家の近くに住み、毎日のように母の家に料理や食材を届けていますが、96歳になった今もなお、母はがんばり屋を通しています。先日も、「転んだ」というので驚いて理由を聞くと、なんと布団を自分で干そうとしたとのこと。「なんで私に言わないの?」。ついそんなお小言を言ってしまいました。

このときの転倒は幸い事なきを得ましたが、万事がこの調子。週に一度はデイサービスの体操に通い、お風呂もトイレも食事も、人の手を借りずに自分で生活することを心がけているようです。

がんばり屋なだけでなく、人を笑わせるのが大好きなおちゃめなところもある母ですが、2年前に父を亡くしてからは、「さみしい」「心細い」と口にすることも多くなりました。戦争という大変な時代を生き抜いて、平和な時代が来てからは家族のためにすべてを尽くしてきたのですから、これからは自分のために何もかも使って、自由に楽しく生きてほしいと思っています。

福島の山に育ち、芯は強いけれど、少女のようにかわいらしい面も持っている母。「アルプスの少女ハイジ」のイメージで、母の喜寿のお祝いには、ハイジのふるさと、スイスの旅行をプレゼントしたこともあります。一方、お花に例えるとしたら……可憐(かれん)だけれど、実は強い、フリージアでしょうか。お花を習っていたこともあるほど、花が大好きな母に、感謝の気持ちとともに東さんのお花を送っていただき、母がそれを見て1日でも長生きしてくれたら、私は幸せです。

96歳の今もがんばり屋のお母さん。これからは自分のために
≪花材≫アイリス、グロリオサ、バラ、アスター、マム、ソリダスター、カランコエ、スターチス、デルフィニウム、スカビオサ、カーネーション、ケイトウ

花束をつくった東さんのコメント

元気でかわいらしいアルプスの少女ハイジのようなお母様。そんなイメージから、野花を中心にしたナチュラルなアレンジを作りました。

例えばバラも小さい花がスプレー咲きになったものを。アスターやマムといったキクも花が小さく咲くものを選び、できるだけたくさんの種類の花を入れるようにしています。そうした野花と相性がいいのが、アイリス(アヤメ)のパープルなどの色。野山の上の大きな空に近い色だからかもしれません。 

投稿者様がお母様を思うお気持ちが、お花とともに届くことを願っています。

96歳の今もがんばり屋のお母さん。これからは自分のために
96歳の今もがんばり屋のお母さん。これからは自分のために
96歳の今もがんばり屋のお母さん。これからは自分のために
96歳の今もがんばり屋のお母さん。これからは自分のために

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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