京都ゆるり休日さんぽ
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京都の中華はあっさり品よく 花街で親しまれる「広東御料理 竹香」

刺激の強い香辛料や油を控え、あっさりやさしい味に仕上げた「京中華」をご存じでしょうか?  今回訪ねたのは、祇園白川の交差点にたたずむ京中華の名店「広東御料理 竹香(たけか)」。祇園の一等地に店を構えながらも、リーズナブルで気さくな雰囲気が愛される理由です。

暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。

祇園の客に育てられ、行き着いたあっさりやさしい味

祇園白川の石畳にたたずむ「広東御料理 竹香」。数寄屋風の情緒ある外観ながら、手頃な価格も魅力
祇園白川の石畳にたたずむ「広東御料理 竹香」。数寄屋風の情緒ある外観ながら、手頃な価格も魅力

とろりとつやめく澄んだ「すぶた」に、タケノコやシイタケなどぎっしりの具を卵入りの皮で巻いた「はるまき」。広東系の京中華の特徴ともいえるこれらの料理は、「竹香」でも創業以来不動の人気を誇るメニュー。鮮やかな朱色の円卓に運ばれてくる料理はどれもシンプルで、あっさり、ちょっと甘め。それでいてじんわりとあとを引く、奥行きのある味わいです。

「すぶた」(1100円・税込み)。べっこう色の甘酢に、具は豚肉、カリフラワー、パイナップルのみ
「すぶた」(1100円・税込み)。べっこう色の甘酢に、具は豚肉、カリフラワー、パイナップルのみ

「(河原町の)広東料理の老舗『芙蓉園(ふようえん)』で10年修業した父が、独立してはじめた店です。花街という場所柄、祇園で芸事や夜のお仕事に携わる人や、企業の商談・接待などにお使いいただけることが多かった。そうしたお仕事に差し障りないようにと、お客様のリクエストに応えるかたちで、香辛料やニンニク、油を控えたメニューができあがりました。中国の方が召し上がったら『これが中華?』と驚かはるかもしれませんね」

「はるまき」(1人前990円・税込み)。写真は2人前
「はるまき」(1人前990円・税込み)。写真は2人前

2代目女将(おかみ)の永田由美子さんはそう笑います。食への興味が尽きず、研究熱心な人だったという初代。まろやかで透明感ある甘酢の味わいは、親交のあった西陣の造酢店「林孝太郎造酢」と一緒に探し求めたお酢がキモ。パリッとした歯触りとふんわり感を兼ね備えた春巻きの皮は、強力粉と卵を独自の配合で。初代が心血を注いだ味が、舌の肥えた花街の人々から愛される「竹香」自慢の一皿となりました。

街の文化とともに「竹香」の屋号を引き継いで

2階は個室で、商談や接待、子ども連れでの利用に喜ばれる
2階は個室で、商談や接待、子ども連れでの利用に喜ばれる

あっさりやさしい味の「竹香」の中華は、年配客から赤ちゃん連れまでさまざまな年代に愛されます。居酒屋のように気軽に立ち寄れる小上がりとテーブル席の1階、対して2階は円卓のある個室で、接待や宴会にも。階段を上がると、螺鈿(らでん)や蒔絵(まきえ)のほどこされた櫛(くし)やかんざしが額装されていました。

芸妓(げいぎ)でお茶の先生でもあった「竹香」さんが残した髪飾り
芸妓(げいこ)でお茶の先生でもあった「竹香」さんが残した髪飾り

「私のひいおばあさんに当たる、芸妓(げいこ)の竹香さんが残されたものです。この場所は元々『竹香』という旅館で祖母が営んでいたのですが、父が独立する際、縁あって引き継いだそうです。『竹香(という名)を残して』と」(永田さん)

女将の永田由美子さん。子どものころから店を手伝っていたそう
女将の永田由美子さん。子どものころから店を手伝っていたそう

旅館や料亭、高級レストランがひしめく中、地元客に親しまれる気軽さと京中華ならではの上品さを兼ね備えたこの店は、街の和みの場になっていったのでしょう。店の持つ文化や物語が、訪れた人をもてなしていることは言うまでもありません。

「むしぶた」(990円・税込み)は、「竹香」で唯一少量のニンニクが使われている料理。本しょうゆの甘辛いタレが後引く味わい
「むしぶた」(990円・税込み)は、「竹香」で唯一少量のニンニクが使われている料理。本しょうゆの甘辛いタレが後引く味わい

「(女将になってから)この30年ほどで祇園もずいぶん様変わりしましたね。観光客が増えて、お茶屋さんが減って……。コロナ禍で舞妓(まいこ)さんも減ってしまいました。経営者さんを知らない店が増えると、昔みたいな街のつながりがなくなってしまうようでさびしいですね」

京都では、タケノコたっぷりのとろみのない具を卵入りの皮で棒状に包む春巻きが各所で供される
京都では、タケノコたっぷりのとろみのない具を卵入りの皮で棒状に包む春巻きが各所で供される

と永田さんはほほ笑みます。しかし、円卓いっぱいに料理を並べ杯を傾ける人々、女将となじみのあいさつをかわす商談客、小さな子どもを連れた家族……。自粛期間が明け「竹香」を訪れる人々はやはり、街に根ざした京中華の店の居心地の良さを知っているように見えます。花街に生まれ、花街に育てられた「竹香」の京中華。中華レストランとも京料理とも違う、時代と文化に育まれた京都独特の中華の味を、街の文化とともに味わってみてください。

新橋通と白川筋が合流するY字路は、祇園でも特段に風情がある通り。交差点にたたずむのは「辰巳大明神」
新橋通と白川筋が合流するY字路は、祇園でも特段に風情がある通り。交差点にたたずむのは「辰巳大明神」

■竹香 https://gion-takeka.com/

BOOK

京都の中華はあっさり品よく 花街で親しまれる「広東御料理 竹香」

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&Travelの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。

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