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アウディe-tron GT試乗 知らずに乗ったら気づかないほどナチュラルなEV

東京と日本平を往復してもバッテリー残量はたっぷり残った

最近のショッキングなニュースは、温室効果ガスの削減目標を達成しても、今世紀末には世界の平均気温が産業革命前から2.7度上がるとする報告書。国連環境計画(UNEP)が、2021年10月26日に発表したものだ。

目を自動車業界に向けると、それでも、各社はがんばっている。アウディは、再生エネルギーを使い、カーボンニュートラル(温室効果ガスを実質ゼロに)をめざした生産工場などを立ち上げている。ピュア電動スポーツカー「e-tron  GT」の日本発売も開始された。

「持続可能性、社会的責任、そして技術でも、業界のリーダーとしての役割を担う決意を持っています」とするアウディ。26年以降、新型車をすべてEVにすると発表している。

アウディe-tron GT試乗 知らずに乗ったら気づかないほどナチュラルなEV
こちらリアモーターの出力が大きいRS e-tron GT

同時に「電気自動車を品質およびデザインの面でライバルと差別化し、お客様に対する付加価値を高めることが重要」とも。これは、21年8月26日に発表された持続可能性などに関する「Vorsprung 2030」戦略のなかの一節だ。Vorsprungは「先進」などと訳されている。

たしかに売れなきゃ意味がない。好例が、21年2月に日本で発表され、秋からようやく路上を走り出したe-tron(イートロン) GTなのだ。乗ると、21年の日本割り当て台数の100台弱がすぐ予約で埋まった、というのも納得の出来のよさ。

EVって、環境派が乗る我慢グルマ?なんて思いながら乗ったら、走りだしたとたんにびっくりするだろう。たいしたスポーツモデルだ。4ドアで、全長が4990ミリもあるのに、スーパースポーツカー並みの性能である。

アウディe-tron GT試乗 知らずに乗ったら気づかないほどナチュラルなEV
前後輪ともモーターで駆動するシステム搭載

e-tron GTは、前後に電気モーターを1基ずつ搭載する4輪駆動。トップモデルの「RS  e-tron GT」では、475kW(645ps)と830Nmとかなりパワフル。静止から時速100キロまでの加速は3.3秒しかかからない。ポルシェ911カレラは4.2秒である。

21年10月下旬に、上記のRS e-tron GTと、390kWと640Nmのe-tron GTに乗るチャンスがあった。試乗コースは、東京の市街地から東名高速・清水IC経由で、日本平までの片道約180キロ。清水港と、富士山が目の前に広がる絶景を楽しんだあと、そのまま充電なしで東京まで戻るのが、アウディジャパンの指定だった。

驚いたのは、合計360キロほど走っても、あと100キロ以上走れる、とするメーターの表示だ。なにしろアウディジャパン発表による、満充電からの航続距離は534キロ。ジェントルな運転に徹しなかったものの、それでも500キロ走れそうなのには、感心。実用性十分、とするアウディジャパンの言に偽りなし、というかんじである。

アウディe-tron GT試乗 知らずに乗ったら気づかないほどナチュラルなEV
アウディ車に慣れている人にはまったく違和感のないコクピット(RS e-tron GT)

e-tron GTの魅力は、上で触れたとおり、ぶっといトルク。それが、アクセルペダルを踏んだ瞬間に、爆発!というかんじで炸裂(さくれつ)する。速度計壊れているんじゃないの、と思うほどの勢いで加速する。

それでいて、街中の市街地ではジェントルに。静粛で、かつ、乗り心地が快適。バング&オルフセンの高級オーディオで、セロニアス・モンクとかレニー・トリスターノのジャズピアノを楽しみながら、なんて乗りかたもよく合っちゃうのだ。

とくに興味深いのは、知らずに乗ったら、電気自動車なのか大排気量のエンジン搭載のガソリン車なのか、わからないんじゃないかと思う、いってみればナチュラルな感覚を身上としているところ。

アウディe-tron GT試乗 知らずに乗ったら気づかないほどナチュラルなEV
床下にバッテリーが入っているものの後席スペースはおとな2人に十分な広さ

アクセルペダルへの細かなバイブレーションはまるでV10エンジン車みたいだし、オプションで「e-tronスポーツサウンド」を装着すると、加速とともに、なんだか小気味よいエンジンのような爆発音が聞こえてくる。

電子技術をうまく使った演出のせいに加え、ドライブモードで「コンフォート」を選んでいれば、加速は比較的マイルドで、ここでもガソリンエンジンのようななだらかにトルクが積みあがって、エンジンの力がだんだんと高まっていくような感覚すらおぼえる。

カーブを曲がるときなどは、速い。かなり速い。5メートルになんなんとする全長と、2メートル近い全幅なんて、まったく意識させない。太いグリップ径のステアリングホイールを切り込んだときのボディの反応は鋭く、カーブが続く道では、加減速にもすぐれるので、期待以上に速く走れる。そして言うまでもなく、ダイレクトな操縦感覚が楽しい。

アウディe-tron GT試乗 知らずに乗ったら気づかないほどナチュラルなEV
アウディジャパンでは今後150kWの急速充電器を整備していきたいとする

スタイリングは、とにかく目立つ。シャシーを共用する「ポルシェ・タイカン」よりも、はるかに派手。1980年代にラリー選手権で活躍したアウディ・クワトロを連想させる、面ごとふくらませたいわゆるブリスターフェンダーをもつアグレッシブな印象のボディと、ゆるい弧を描いたファストバック的なルーフラインの躍動感とが、上手に組み合わされて個性となっている。

2026年以降の新車はすべてEVに、33年には、中国向けをのぞいてガソリンエンジンやディーゼルエンジンといった内燃機関の製造はやめる、とするアウディ。バッテリー工場を含めた製品製造から、組み立て、輸送、販売を含めて、温室効果ガスの排出量をかぎりなくゼロに近づけていく取り組みのなかに、このすぐれたスポーツセダンであるe-tron GTがあるというのに感心する。

クルマ好きとしてはピュアEVが必ずしも100パーセント正解とは思っていなくても、持続可能性を前提とした社会貢献を考えると、徹底的にカーボンニュートラルに取り組むべき。それが、アウディの企業姿勢とか。それこそもっとも現代的なありかたなのだろう。

価格はe-tron GT クワトロが1399万円、RS e-tron GTが1799万円。価格的にはだいぶぜいたくな買い物といえる。でも買うならどっちのモデルがいい?ときかれたら……じつは絶対にこっち、と断言はむずかしい。後者はよりパワフルで、エアサスペンションによるしっかり感が1ステージ上といえるかもしれない。でも、前者でもまったく不足は感じられなかった。

【スペックス】
車名 Audi RS e-tron GT
全長×全幅×全高 4990×1965×1395mm
電気モーター×2 全輪駆動
最高出力 475kW
最大トルク 830Nm
価格 1799万円

写真=望月浩彦/アウディジャパン

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