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宇宙飛行士・山崎直子氏が語る宇宙と地球、人類の未来

マーケティングや広告をテーマにした世界最大級のイベント「Advertising Week」。そのアジア版である「Advertising Week Asia 2021」は今年、オンラインとリアルのハイブリッドで開催されます。12月7日のオンラインイベントを前に、東京アメリカンクラブで開催されたイベントの様子を一部ご紹介します。2010年にスペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗した宇宙飛行士・山崎直子氏に、宇宙飛行士になるための選抜試験や宇宙から見た地球、また帰還後の活動についてたっぷりと語っていただきました。

宇宙飛行士になるには

宇宙飛行士になるために必要なことは、何だと思いますか?

時代によって求められる条件は変わってきています。以前は虫歯が1本でもあったり、視力が悪かったりするとダメという時代がありました。しかし現在は治療をしていれば大丈夫ですし、眼鏡やコンタクトの着用も可能です。

11月19日に発表された13年ぶりの宇宙飛行士の募集では、理系という条件もなくなりました。身長も150cm弱〜190cm強までと、かなり幅が広がりました。宇宙においても多様性を求める時代となっているのです。

宇宙飛行士になるには1年をかけた選抜を勝ち抜かなければなりません。書類審査に始まり、筆記試験、医学検査、面接、さらに実技と様々な試験が行われます。特に印象に残っているのが最終試験。宇宙ステーションを模した、大型バス2台分ほどが入る大きな施設に1週間、缶詰め状態で行われました。

テレビも窓もなく、完全に遮断された環境で、様々な作業を行います。たとえば真っ白いジグソーパズルを1人で3時間以内で組み立てるという課題がありました。これは非常に難しく、試験を受けていた8人中、誰一人できなかったんです。しかし結果的には私を含めて3人が選抜されました。

宇宙飛行士に選ばれた理由は教えてもらえないため、ブラックボックスです。ただ、「できた」「できなかった」だけが重要なのではなくて、いかに工夫できるか、最後まで諦めずに取り組めるかというような「やり抜く力」が見られているのだと思います。

宇宙飛行士・山崎直子氏が語る宇宙と地球、人類の未来

宇宙に行くまでの11年間

宇宙飛行士候補者に選抜されても、すぐに宇宙に行けるわけではありません。様々なケースがありますが、私は候補者になってから実際に宇宙に行くまで11年かかりました。

1999年に選抜を受けてから、2010年に国際宇宙ステーションの組み立て補給ミッションに行くまでの11年間は、宇宙に行っている仲間のサポートを地上からしたり、開発業務の手伝いをしたり、地上業務をやりながら自分の訓練をして、宇宙に行く日に備えるという生活でした。

印象的だったのはサバイバル訓練で、体力的に苦しく大変鍛えられました。なかにはチームビルディングを目的とした野外リーダーシップ訓練というものがありました。宇宙飛行士だけでなく、企業の経営者や政治家、学生など様々なメンバー10人が1チームとなり、ロッキー山脈で10日間、一緒に過ごします。

ミッションはスタートから100km離れたゴールまで10日後に移動するというシンプルなものです。ただし、条件が一つあります。それは毎日、リーダーを交代すること。つまり全員が一度はリーダーを経験するのです。その日のリーダーを中心にどのルートを通って、どこでテントを張って、どんなことをやるのかをすべて決めていきます。自然が相手なので計画通りにいかなかったり、意見が割れたりする中で、チームビルディングを培っていくのです。

訓練の厳しさはもちろんありましたが、それ以上に精神的に大変だったのが、「いつ宇宙に行けるか分からない」ということです。私の場合は結果的に11年後だったのですが、実際に決まるまでは1年後なのか、20年後なのか全く見通しが分からないのです。

訓練していれば、必ず宇宙に行けるという保証はありません。その中でもモチベーションを保ちながら全力を尽くしていくことが必要です。「このミッション、飛びたいな」「選ばれなかった」「次は飛べるかな」「いや、またダメだった」というのを何度も繰り返して、ようやく宇宙に行けることになります。宇宙に行くまでの間に、宇宙飛行士は悔しい思いをたくさん乗り越えてきているのです。

宇宙飛行士・山崎直子氏が語る宇宙と地球、人類の未来

宇宙での15日間

11年越しに夢がかない、2010年にようやく宇宙に行けました。まず驚いたのが宇宙から見る地球の姿です。昼間は大自然の力強さがとても際立ちます。

無重力の世界では絶対的な上下がないので、自分の姿勢の取り方や窓の位置によっては地球を頭上に見ることが多くありました。地球から400km上空に行ったはずなのに、地球を見上げるというのは驚きました。

もちろん写真や映像はたくさん見ているので、頭では理解しています。しかし、実際に行ったことによって理屈抜きにストンと自分ごとのように感じたことがたくさんあります。地球も一つの生き物なのだなという感覚になりました。宇宙に行く前は、宇宙は特別で、憧れの場所だと思っていましたが、むしろ地球の方が特別な場所だということを思い知らされました。

私は宇宙での滞在が比較的短い15日間だったので、休日もなく、日中は任務に追われていました。アメリカ人やロシア人の方と一緒に様々な実験装置を設置する作業などを行ったので、国際協力をできたことが私にとっては非常にうれしかったです。業務の合間の休憩時間や寝る前には、地球を眺めていました。

国際宇宙ステーションは地球の上空400kmを秒速8kmで回っており、わずか90分で1周します。45分間が昼、その次の45分間は夜と、慌ただしく景色が移り変わるのです。時間感覚が分からなくなってしまうので、宇宙船の中では腕時計をつけています。人工的に時間を設定し、朝6時起床、夜10時就寝という規則正しい生活を送ります。

宇宙船内で使用できる水は1人1日3リットルです。もちろんお風呂やシャワーはありません。ほとんどを飲み水と宇宙食を戻すお湯として使います。残ったわずかなお湯で体を拭くという感じでした。貴重な水を有効活用するために、トイレで集められた尿をリサイクルして、飲み水に変えていました。

宇宙飛行士・山崎直子氏が語る宇宙と地球、人類の未来

宇宙から地球へ帰還後の活動

宇宙から地球へ帰ってきて、私は宇宙教育に注力するようになりました。次世代の人々にもっと宇宙のことを知ってほしいという思いで、科学館の手伝いをしたり、宇宙教室を定期的に開いたりしています。私たちは宇宙を探査しているのですが、宇宙を知ることは地球を知ることにつながると思っています。だからみなさんに宇宙を通じて、自分たちが住んでいる地球にもっと興味を持ってほしいです。

私の究極の夢は、月の上に寺子屋を作ることです。世界中から人が集まって、地球を見ながら地球のことを宇宙から学ぶのです。そうした体験をして、それぞれの地域に戻っていけば、より国際協力がしやすくなるのではないかと思います。地球のためという大きな目標を共有しやすくなるのではないかなと。

そのためにはもっと多くの人が宇宙に行けるようになる必要があります。そこでスペースポートジャパンという一般社団法人を立ち上げ、代表理事として活動しています。スペースポートとは、空港のように宇宙船が離着陸できる場です。すでにアメリカには12カ所が整備されていて、イギリスやイタリア、グアム、ブラジルなども力を入れています。

日本をアジアの宇宙輸送のハブにするために、北海道、和歌山、大分、下地島で民間のスペースポートの整備を始めました。この中から、人が宇宙に行ける、宇宙近くを通りながら他の国に短時間で行けるスペースポートが実現できればいいなと思っています。アメリカの企業では、ニューヨークと上海が宇宙船によってわずか39分で結ばれるという構想が発表されています。世界各地が1時間以内に結ばれるという未来がそう遠くないうちにやってくるかもしれません。

また、アースショット賞という活動にも力を入れています。アースショット賞はグローバルな環境賞です。「地球をみんなで守っていこう」「地球の修復のために活動しよう」という思いのもとに、イギリスのウィリアム王子が立ち上げました。「気候変動を修復する」「大切な大気を浄化する」「自然を保護し回復する」「ゴミの出ない世界を作る」「海をよみがえらせる」という5分野に対して、毎年賞を授与します。

私は15人いる評議員の中の一人として、授賞者の選定などを行っています。みんなで同じ方向を向いて、大切な地球を一緒に守っていきましょう。

(文・岡村 幸治)

山崎直子さん
PROFILE
山崎直子

宇宙飛行士 
1999年宇宙飛行士候補者に選ばれ、2001年認定。2004年ソユーズ宇宙船運航技術者、2006年スペースシャトル搭乗運用技術者の資格を取得。2010年4月、スペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗、国際宇宙ステーション(ISS)組立補給ミッションSTS-131に従事。2011年8月JAXA退職後、内閣府宇宙政策委員会委員、一般社団法人Space Port Japan代表理事、公益財団法人日本宇宙少年団(YAC)理事長、女子美術大学客員教授、宙ツーリズム推進協議会理事、2025年日本国際博覧会(万博)協会シニアアドバイザー、環境問題解決のための「アースショット賞」評議員などを務める。

宇宙飛行士・山崎直子氏が語る宇宙と地球、人類の未来

このセッションは、「2022年への道標~ Making an impact with purpose driven marketing ~」をテーマに、12月7日に開催されるオンラインイベント「Advertising Week Asia 2021 Leadership Forum」でご試聴できます。

「Advertising Week Asia 2021」をオンラインで

オンラインイベントでは、11月19日に行われたイベントに登壇した宇宙飛行士の山崎直子氏のキーノートセッションや、10月に開催した「Advertising Week New York」のハイライトなど、多彩なコンテンツを楽しむことができます。チケットは一般5000円(税込み)、学生は無料。

詳しいプログラムと参加申し込みは公式サイトから。

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