結城紬の風合いしのばせる蔵の街並み 茨城県・結城市

茨城県西部の結城は紬(つむぎ)と桐(きり)の伝統工芸で知られるが、鎌倉時代から結城氏の城下町、市場町としてひらけた歴史の町である。
高級絹織物で栄えた町
城下町の面影は薄いが、結城家18代秀康(家康の次男)開基の弘経(ぐぎょう)寺や、結城に滞在した与謝蕪村(よさ・ぶそん)の恩人の墓と蕪村の詩碑のある妙国寺など数ある寺社にしのばれる。高級絹織物の結城紬(つむぎ)で栄えた名残は、大通りや路地のそこここにたたずむ数々の蔵や町家にうかがえる。

特産物や観光情報を備えた駅前の観光物産センターを出て駅前蔵通りを歩くと、織元や問屋をはじめみそ、しょうゆなどの醸造蔵や薬、米、菓子などの店蔵があちらこちらで目につく。

蔵は木造建物の外壁を土塗りしっくいで厚く塗り込めた防火建築で、全国各地で建てられたが、結城では明治から大正期にかけて見世蔵と呼ばれる蔵が多数出現。多くは国登録有形文化財となっている。
そのシンボル的存在が1907(明治40)年創業の結城紬製造卸問屋の奥順(株)が開設する「つむぎの館」。木戸門をくぐった右手の土蔵造りの資料館・手緒里(ており)には、製作工程や道具、資料、着物など結城紬について分かりやすく展示している。

目をひくのは往年の名俳優、高峰秀子さんの「洗えば洗うほどしなやかになり、艶(つや)を増す。丈夫で長持ち、そして上等……」の後に「結城は高価なのが玉にキズですが、思い切って買えば、まさに一生もの」と続くエッセーだ。
敷地には奥順店舗、紬専門店の結城澤屋など五つの登録有形文化財の建造物が集まっている。結城紬の小物の売店もあった。

名物の「ゆでまんじゅう」
つむぎの館の一筋南の大町通りは、蔵の街並みが続く趣ある一角。その中ほどにある富士峰菓子舗で結城名物の「ゆでまんじゅう」を買った。甘い小豆餡(あずきあん)を小麦粉生地でくるんで、蒸さずにゆでたちょっともちもちしたまんじゅうである。

由来を聞けば江戸末期、疫病が流行した時、当時の殿様が病払いにみこしを奉納し、領民にまんじゅうを振る舞ったのが始まりとのこと。以来、大祭に各家庭でゆでたまんじゅうをお供えする風習が生まれた。蒸していたのではみこしがくるのに間に合わないのでゆでた、という。

つむぎの館で教えてもらった食事処の甘味茶蔵真盛堂は和菓子店の経営で、ランチは滋味豊かな家庭料理。食後のデザートに「ゆでまんじゅう」が付いていた。

結城は人口5万余。ひっそりとして派手ではないが、歩くほどに結城紬のような味わいが伝わってくる。
〈交通〉
・JR水戸線結城駅下車
〈問い合わせ〉
・結城市商工観光課
0296-32-1111
・つむぎの館
0296-33-5633
※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。