唐紙で年賀状を 奥ゆかしい文様と手仕事の風合い「京からかみ体験工房 唐丸」

師走の慌ただしさのなかにも、新しい年への期待や希望に胸がふくらむ12月。クリスマスカードや年賀状、来年の手帳やポチ袋などは、「デジタルではなく紙で」という人も多いのではないでしょうか。今回訪ねたのは、「唐紙(からかみ)」の技法を使ってカード作りが体験できる「京からかみ体験工房 唐丸(カラマル)」。手摺(ず)りの風合いとつつましい文様が宿るカードは、大切な人に送りたくなる特別な一枚です。
■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。
伝統文様の版木を使い、一枚一枚手摺りする楽しみ

「唐紙」とは、文様を手彫りした版木に絵の具を付け、紙に写しとる技法。ふすまや障子などに多く用いられ、和風建築の多い京都では特に発展・成熟してきました。雲母(きらら)や胡粉(ごふん)といった日本画にも使われる絵の具を使って摺る唐紙は、光の角度で見え方が変わり、奥ゆかしい表情を浮かべます。

現在も職人がふすまや壁紙、インテリアに用いる唐紙を製造する、「京からかみ 丸二」の直営店「唐丸」。ここでは、誰でも気軽に唐紙摺り体験ができる工房とギフトショップを構えています。いくつかある体験コースの中でも、初心者でもトライしやすいのが「からかみハガキ摺り体験コース」。9柄の文様、14色の紙の中から好きな組み合わせを選び、摺ったポストカードは持ち帰ることができます。


使用する版木は、古くから唐紙に用いられている伝統文様を縮小したもの。和を感じる古風な文様だけでなく、洋の要素を感じるものやモダンな雰囲気のものも。あらかじめ用意された雲母とゴールドの絵の具のほか、自身で色を調合して摺り色を変えられるので、何通りもの組み合わせを楽しむことができます。

光と影で表情を変える、唐紙の奥ゆかしき美意識

ギフトショップに並ぶ唐紙製品を見ると、文様がくっきりと摺りあげられつつも、絵の具の表情に独特の濃淡があることがわかります。印刷と違って、紙の上に絵の具が「のり」、砂糖がけの和菓子のようなテクスチャーに仕上がるのが唐紙の最大の魅力。絵の具に混ぜられた雲母や胡粉の素材感が生き、たとえば白地に白銀の絵の具で摺っても、角度によって文様を浮かび上がらせるのです。

「唐紙のことをご存じない方も多いので、ご自身で手摺りするという体験を通して、唐紙の魅力にふれていただければと思います」と話す、店長の佐藤さん。ウィリアム・モリスなどの図案も好きで、ここで唐紙を紹介することを通して、日本の文様の美を再確認しているといいます。

色彩豊かで写実的な西洋の図案とは趣が異なり、ほの暗い明かりの和室や侘(わ)びの美学が息づく茶室で育まれてきた唐紙には、しみじみと語りかけるような美しさがあります。

『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』で谷崎潤一郎がつづった古きよき日本の美意識のように、見る人の心を落ち着かせ、繊細な陰影や光の表情に気づかせてくれる唐紙。受け取る人もしとやかで凛(りん)とした美しさに見とれ、じっくりと眺めてくれるのではないでしょうか。一枚一枚摺りあげたポストカードで、新しい年を祝う大切な人と、静かな日本の美をわかちあってみてください。
■京からかみ体験工房 唐丸 https://karamaru.kyoto
BOOK
大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&Travelの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。
唐紙大好きです!京都に行く際はぜひ立ち寄りたいと思います!