九州最南端の路線で見つけた、遠く幻想的な海

白沢駅で出会った、オレンジの世界
このとき日没まで30分を切っていたが、どうしても行きたい駅がもう一つあった。隣の白沢駅だ。
列車を待っていると日が暮れるため、あらかじめ呼んでおいたタクシーへと足早に乗車。距離にしておよそ3キロ、5分ほどで到着した。
薩摩板敷駅とは違い、白沢駅は集落の家々に挟まれるように、ひっそりと立っている。

民家の脇にある砂利道を通って、誰もいないホームに上がると、視野が一変。家並みが途切れ、足元から草地が広がった。薩摩板敷駅で見た眺めよりも少し荒涼としていて、こちらは崖の上の草原、といった様相だ。その向こうには、まだわずかに青色を残した東シナ海。空はもう、淡い青色からぼんやりとしたオレンジ色に変わっていた。

白沢駅は、海の情景もさることながら、カーブした線路の風情がたまらない。しかも、線路の行く先には夕日。雑草に隠れていた線路は光の筋となり、ホームの上屋はシルエットとなって夕焼け空に浮かび上がる。日没前にしか見られない、美しい逆光の世界だ。

夢中でシャッターを切っていると、どこからか汽笛の音。午後6時44分。太陽が山の陰に沈むと同時に、鹿児島中央方面へと向かう、帰りの列車が到着した。
薩摩板敷駅と白沢駅。それぞれ短い滞在だったが、どちらにもほかでは見られない印象的な場面があった。時間をかけて遠くへと足を運んだぶん、新しい景色に出会える。そう確信できた旅路になった。
九州新幹線鹿児島中央駅からJR指宿枕崎線で約2時間30分。
■JR九州
https://www.jrkyushu.co.jp/railway/index.html
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1960年代に子供のころこの指宿枕崎線が開通するのを見て育った者ですが久しぶりに写真を見て感激しました。アメリカ在住53年で帰る度に懐かしい指宿枕崎線で故郷の水成川(駅)まで行きたいのですが日2~3回しか走っていないスケジュールに合わすのが難しく乗ったことがありません。廃線にならないかとハラハラしています。
旅行で鹿児島に行った際、西大山駅に行きました。
夕方に行ったので幻想的な空の色と開門岳、駅の組み合わせがとても素敵だった印象があります。枕崎線はどの駅も美しい景色が楽しめることを知りました。