花のない花屋
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あのときの近所のお兄さんが、私の大切な人に。何十年分の感謝を込めて

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
長谷紀恵子さん 70歳 女性
主婦
米国在住

    ◇

のちに姉の夫となる義兄と初めて出会ったのは、私が小学校2年生の頃でした。北海道から上京し、働きながら夜学に通っていた義兄は、近所の子供たちにボランティアで勉強を教えてくれていました。とはいえ勉強だけでなく、遊んだり、冷蔵庫を勝手に開けて好きな物を食べたりと、義兄の家は私たちにとって、とても楽しい居場所でした。

私とは15歳離れた姉が、そんな義兄と知り合ったのは、私が義兄の家に通うようになった少しあとです。当時、お菓子屋を営んでいた母は、お店の前をたびたび通っていた義兄が気になっていたようです。「(勉強を見てくれている)あの人はどんな人?」と母に聞かれ、私が「物知りで楽しい人だよ」と言ったことが決め手となり、母は義兄と姉を引き合わせ、私は姉夫婦のキューピッドになりました。

間もなく2人は結婚。ところが子どもが生まれてすぐに、義兄が大学卒業後に就職した会社が倒産してしまい、独立して1人で仕事を始めることになりました。新婚の家の裏庭に私の父が日曜大工で仕事場を建て、努力家の義兄はそこで毎日夜遅くまで働いていました。

仕事は順調で忙しくなり、もっと広い仕事場がほしいと引っ越して、近所の方たちがパートで働いてくれ、姉も家事・育児をしながら仕事を手伝うようになりました。義兄は世話好きで、パートの方たちを集めては食事会や社員旅行などを催し、お給料も良くしていたらしく、義兄が仕事を引退したときはパートのみなさんに「お陰様で子どもたちの学費になりました」と、とても感謝されていました。

もちろん私も、義兄と姉の2人には、いくら言っても言い足りないくらい感謝の気持ちでいっぱいです。中学生の私をレストランに連れて行ってくれて、「いつか必ず必要になるから」とナイフとフォークの使い方を教えてくれたのも義兄でした。ナイフとフォークの食事を経験する機会など、ほとんどなかった昭和の時代、その後家族と海外に暮らすようになり、ナイフとフォークの生活になった私は、たびたびこのときのレストランでのことを思い出しています。

青春まっただ中の悩みを聞いてもらったことに始まって、結婚後も何かあれば子どもを抱えて義兄の家に行く私を、快く受け入れてくれました。本当に居心地の良い家なのです。何より義兄は私の両親にも本当の親のように接してくれて、食事や旅行にもよく連れて行ってくれるなど、もう30年、家族とともに海外で暮らしている私がなかなかできなかったことを、姉とすべてやってくれました。

そんな義兄と姉は結婚して、今年で60年。義兄は88歳の米寿を迎え、姉は85歳に。ひ孫も誕生して、義兄は「2人で穏やかに暮らしている今が一番幸せだ」と言っています。

耳が遠くなり会話には入れないことが度々ですが、みんなが集まっておしゃべりしていてもほほ笑みながら楽しくお酒を飲むのが好きです。長いこと親のように頼っている義兄の米寿という記念すべき年、義兄と姉に何十年分の感謝の心をお花で伝えられればうれしいです。

あのときの近所のお兄さんが、私の大切な人に。何十年分の感謝を込めて
≪花材≫ダリア、ケイトウ、チューリップ、ソリダスター、モンステラ

花束をつくった東さんのコメント

義兄様の米寿、そしてお姉様ご夫妻の結婚60年と、誰もが経験できるわけではない貴重なお祝い事が続きますね。

近所のお兄さんに勉強を教えてもらう子どもたち、お店の前をよく通った青年が気に入って、娘の結婚相手として考えたお母さん……60年前のお二人の結婚のきっかけを作ったという古き良き日本の町の様子が胸に迫ってきました。

輝くようなダリアとチューリップなど、ゴールド×ゴールドの組み合わせのお祝いのブーケで、お二人の月日をお祝いしていただければと思います。

あのときの近所のお兄さんが、私の大切な人に。何十年分の感謝を込めて
あのときの近所のお兄さんが、私の大切な人に。何十年分の感謝を込めて
あのときの近所のお兄さんが、私の大切な人に。何十年分の感謝を込めて
あのときの近所のお兄さんが、私の大切な人に。何十年分の感謝を込めて

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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