彩り豊か、健康気遣うスリランカの優しい味わい「セレンディッブ」(東京・蔵前)

2021年、最後に紹介するカレー店は、都営大江戸線・蔵前駅近くの「セレンディッブ」だ。4月に仕事で訪れた蔵前で、たまたま見つけて食べたのが初めて。色彩豊かで、食べ終えた時の満足感も大きく、再訪をうかがっていたが、ようやくかなった11月には、すでに行列のできる人気店になっていた。
「人を元気にする店を作りたかった」と、シェフの奥様でサービス担当の金澤恵美さん。もともと抗がん剤を開発する製薬会社に勤めるバリバリのビジネスウーマンだったが、病気と向き合っているうちに、病気になりにくい身体づくりを考えるように。そこで出会ったのがアーユルベーダだ。迷うことなく会社を辞めて本場インドやスリランカで本格的に学び、その時に知り合ったラヒル・タラカさんと結婚。コロナ禍真っただ中の2020年10月に店をオープンした。
カレー作りを担当するのは夫のタラカさんだ。故郷・スリランカの五つ星ホテルでフロントの仕事をしていたとはいえ、シェフの経験はない。ただ、近所に振る舞うほどの料理上手な母に育てられ、舌は鍛えられていた。

カレーのレシピの基本にあるのは、タラカさんの母の味とスリランカの生活に根付いているアーユルベーダ。アーユルベーダでは、甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味の六味を摂(と)るとよいとされているが、ランチにもそれが盛り込まれている。メニューは2種類。「ランチプレート」(800円、以下税込み)は、肉または魚のカレーを1種類選ぶ。この日は、チキン、ポーク、サバの中から選択。他にレンズ豆のダールカレー、ほんのり甘いビーツのカレーと、たっぷりのライムが絞られてサラダ感覚のつぼ草のサンボル(和え物)が、バスマティライスを覆い隠している。

さらに副菜が追加された「スリランカプレート」(1200円)には、つぼ草のサンボルのほか、かぼちゃのカレー、ブロッコリーのマッルン(さっと炒め)、ココナッツのサンボルなどが盛りだくさん。六味に加えて、さまざまな食感が混ざり合って最後まで飽きさせることがない。小麦粉を使わず、油も少なめで、スパイス感は保ちつつも、どれも軽やか。そしてみずみずしいフレッシュさがある。

スリランカには、それぞれの家庭に”母の味”とも言うべき、オリジナルの混合スパイスがあるそうで、セレンディッブでも、タラカさんの母親が調合するスパイスを取り寄せて使っている。家族の健康を気遣う母のレシピを受け継いだ、スリランカの家庭の味なのだ。健康が気になる昨今、元気をくれるセレンディッブのカレーで、新年に向けて体調を整えたいものだ。

セレンディッブ
東京都台東区寿3-8-3
03-6231-7325
https://www.serendib.jp/