IT系の知識はどうすれば身につけられるのか?

コロナやデジタル化の影響で「働き方」にも変革が迫られる中、組織や人間関係から生じる「ビジネスの不条理」をどう乗り越えていけばよいのでしょうか。連載「不条理とのつきあい方」では、ビジネス、テクノロジーなど幅広い分野で発信するコンサルタントの塩野誠さんが、ビジネスパーソンの悩みに答えます。
【質問】Webサービスのプランニング、SNSによるマーケティングシーンなど、あらゆるところでIT系の技術への理解がないと、判断ができなくなっているように思います。コンピューターがあまり得意でない人は、どのようにIT系の知識を身につけたらいいのでしょうか。*質問は編集部が取材したものですが、読者のみなさんからも募集しています。
「IT系の知識」とは超巨大なお話かと思います。質問者の方が、エンジニアを目指しているのではなく、ビジネスパーソンとしてオンラインサービスについて企画などができるようになりたいのかと推測します。そうであれば、ユーザーとして最近出てきたサービスや顧客タッチポイントであるインターフェースも含めて知っておくべきであり、最善策は自分で使ってみることです。
最先端のアプリを使わない「偉い人たち」
日本企業の既存業務のデジタル化が進まないとよく言われますが、最大の理由は企業の偉い人たちが自分で自社のIT環境にちゃんと苦しんだり、最先端のアプリを使ったりしないことに原因があります。秘書が印刷してくれた資料を読んでいるだけではなかなか改善策や新規事業のアイデアは浮かばないものです。
今やITは、総務部、経理部、情報システムIT部のように部署に並ぶものではなく、全ての部署に関わるレイヤー(層)となっています。全ての部署がITレイヤーに載っているようなイメージなのです。そうしますと、企業幹部は全ての事業に関わるITについての肌感覚が求められます。
アプリランキングの上から順番に使ってみる
世の中の大半の人はインターネットの通信プロトコルであるTCP/IPプロトコル通信の仕組みや階層構造を知らなくても、インターネットで検索して、新しくできたラーメン屋さんを知ることができています。

もしもビジネスに「IT系の知識」を生かしたいのであれば、アプリランキングの上から順に使ってみることで、ユーザーとしての力を鍛えることから始めましょう。「メタバース」や「VR」と聞いても使ってみないことにはわかりません。使ってみることが何より大切です。
商売のネタの多くは、テクノロジーが成熟して人々に安価に提供されるようになり、普通の人の行動が変わる瞬間に生まれます。その波に乗れるかどうかで稼ぎが変わるのです。2007年以降、スマートフォンが普及してきた時に「スマホ・シフト」という言葉がありました。今までパソコンで提供されていた、ゲームや買い物がスマホアプリに変わっていった時期です。パソコンから、スマホという人間が常時携帯できることのできる機器(デバイス)に変わったことで、サービスが変わり、人々のライフスタイルが変わりました。
変化を見つけられるのは、情報に貪欲な人
そういう変化を見つけることができるのは、変化が好きで情報に貪欲(どんよく)な人です。そうした早い人をアーリーアダプターと言いますが、VRゴーグルが世に出たらすぐに買って試してみるような人に気づきが訪れます。
そういう人は「これ買って会社の経費で落ちるかな」などとは考えません。スマートスピーカーでも自分で試して、これは伸びそう、伸びなそう、いやスマホやパソコンの入力が苦手なシニア層なら音声入力はアリかも、 人工知能(AI)の機械学習を使っているなら、日本語の認識にはより多くのデータを獲得するのに時間がかかるかも、などと想像を巡らすことができます。

今はUI(User Interface, ユーザー接点)/UX(User Experience, ユーザー体験)の時代と言われ、どんなサービスでも、UIとUXが、顧客を獲得できるかどうかの要となってきています。人々がスマホの画面で動画を見ていても、つまらなかったら動画が止まった時点で10秒もせずに次のコンテンツに行き、ログインがうまくいかなかっただけで、そのサイトで買い物をするのを止めてしまいます。こんな環境では、様々なサービスを知っている人の「自分だったらこうつくるのに、これじゃお客さんはすぐに離れちゃうよ」という感覚が役に立ちます。
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