インタビュー
連載をフォローする

『るろ剣』を支えたアクション監督が、挑戦を続ける理由

『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』撮影現場。右が谷垣さん、中央がドニー・イェン(提供:ギャガ)

『るろ剣』がもたらした、日本の可能性

――さきほど、『るろ剣』を見て、現場に呼ばれるということがあると言われましたが、やはり注目度が高い作品ですか?

僕の場合は、やっぱりドニー・イェンとやっているということもあるでしょうけど、最近は『るろ剣』が世界中の皆さんお好きなようで、それでオファーを受けるということが多いですね。でも、それはいいことで。やっぱり日本国内で声がかかると、結局『るろ剣』の二番煎じのようなものを求められてしまうけれど、そんなイージーな志で『るろ剣』以上のものを作れるわけがない。なめんなよ、って感じです(笑)。それが中国だと『るろ剣』好きっていっても、いざ内容を聞いたら「本当に『るろ剣』見たの?」っていうぐらい違う方向の作品だったりすることが多くて(笑)。でもその方が僕としても違う挑戦ができるので、楽しいですね。

『るろ剣』を支えたアクション監督が、挑戦を続ける理由
現場の指揮をとる谷垣さん(提供:ギャガ)

――ハリウッドからも声がかかったりしていますよね。

まぁ、アメリカでやることは頻繁ではないですけど、『ジョン・ウィック』のチャド・スタエルスキ監督が来日した時に会いたいと言ってくれて、それ以降、彼とは交流がずっとありました。いろんな作品で声をかけてくれたけど、なかなか実現できなかったんです。結果的に『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』では、チャドがプロデューサーに薦めてくれて、僕がやることになったんです。最初はファイト・コレオグラファーとして入る予定だったのが、チャドが「ケンジにセカンドユニット監督をやらせるべきだ」と言ってくれてセカンドユニットの監督になり、DGA(全米監督協会)にも入ることができました。そんな感じで第三者が『るろ剣』を見て、僕がどういうことができるのかを判断してくれて、任されることは増えましたね。だから、これからは僕を必要としてくれるところだったら、どこにでも行きたいし、むしろ知らないところに行きたいと思っています。

――コロナ禍で撮影に入れない時期もあったとは思いますが、その後は、本当に精力的にやられている印象ですよね。

やっぱり、『スネークアイズ』が終わったときは、ちょうどコロナ禍になったころで、それから日本で長いこと休みました。今年になって中国に渡ってからは、もう7カ月くらい日本に帰ってないですね。今は香港で映画を3月までやったら、そのあとはボストンでアメリカ映画を1本やる予定です。今はこういうスタンスでやるのが楽しいなと思います。

――今、海外の作品の勢いを感じて、日本の作品も頑張ってほしいと思ったりするのですが、谷垣さんから見ていかがですか?

個人的にはもう国はあんまり関係ない気がしますね。どの国でも面白いコンテンツはあるし。ただ『ONE PIECE』にしても『カウボーイビバップ』にしても、Netflixが実写版を作っているので、そういう日本の素材はどんどん海外で撮られていくんだな、何だかなとは思います。今は、どこの国だろうと、まとめる力のある人がまとめたら面白くなるんだと思います。

――プロデュース側の企画力やまとめる力は、お金の面も含めて確かに重要になっている気がしますね。一方で『るろ剣』に出ていた方だと、『ONE PIECE』に新田真剣佑さんが出演しますし、谷垣さん監督の『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』にも丞威さんが出演されました。日本の俳優陣の海外での活躍が目覚ましいですね。

やっぱり僕が真剣佑さんや丞威さんが好きなのは、彼ら自身がとてもフラットなスタンスで、海外に行くとかアクションをやるってことに、挑戦という匂いが全くないところなんですよね。息をするように日本語の演技も英語の演技も普通にやるし、気負いなくアクションをするっていうところが、すごく頼もしいなって思いますね。彼らもだし、僕らのように現場に立つ人間としては、これからはどこでもフットワーク軽くやっていくのがいいのかなっていう気はしています。

『るろ剣』を支えたアクション監督が、挑戦を続ける理由
『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』撮影時、香港にて撮影。(提供:ギャガ)

そういうときに最終的に武器になるのは、自分だけのスタイルを持っていることだと思いますね。英語しゃべれてボクシングをやっていても、そんな人はアメリカにいっぱいいるけど、『るろ剣』がなぜ海外でウケたかというと、それはドメスティックなものを突き詰めたからだと思っています。2000年代に入ってからでいうと、『マッハ!!!!!!!!』はムエタイで、『ザ・レイド』はシラット、『るろ剣』は刀のアクションだったりするし、やっぱりその人たちにしか出せない独自のものの方が響くんだということはあるかもしれないですね。だから、香港らしいものとか、日本らしいものとか、そこにしかないものを大事にした上で、いろいろやれたらいいなとは思っています。

「苦い青春」が、アクション映画界を支えている!?

――『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』のプロモーションのときに、ディーン・フジオカさんのラジオに谷垣さんが出演されて、その中で「香港アクションのDNAが日本で引き継がれている」というようなことを話されていたのが印象的でした。

これは日本に限らないことかもしれないですね。ドニーの現場は、日本人のスタントマンを使うことが多いですし、僕とか下村(勇二)くんとか大内(貴仁)くんとかを含めてドニーの現場を踏んだことのある日本のスタントマンは、それをひとつの基準にするところはあるんですよね。でも、さっき言ったチャド率いる87イレブン・アクション・デザインの人たちも僕らと同じ世代で、同じジャッキー・アクションとかを見て育った人たちなんです。

チャドが手がけた作品で最近上映されていた『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』なんかも、完全に『五福星』とか『ゴージャス』みたいな香港アクションを意識していたし、みんなジャッキーの映画に影響を受けてきたんだなと思うんですね。そういう意味では、香港ではアクション監督になる人は少なくなっているかもしれないけれど、そのDNAは世界中に散らばっている気がしますね。もともと香港人も流れてきた人だから、日本でも、アメリカでもそのDNAが引き継がれているんじゃないかなと思います。

――韓国のリュ・スンワン監督とかもそうですよね。

みんな、ジャッキーの影響のもとで、同じような「苦い青春」を送って来たんだと思いますね(笑)。

――「苦い青春」なんですか!?

アクション映画のマネを公園とかでやって、白い目で見られてきた世代だと思います(笑)。チャドも二つ上だし、そう考えると感慨深いですね。たまに海外で同じ歳くらいのスタント・コーディネーターと話すと、生まれ育った国も、仕事としてやってきた映画も違うけれど、『マトリックス』とか、ジャッキーの『レッド・ブロンクス』を通ってきた人たちなんですよね。僕が香港や日本で奮闘しているときに、同じように彼らもアメリカやカナダで奮闘してきたんだなと思うと、親近感を覚えることが多いですね。

『るろ剣』を支えたアクション監督が、挑戦を続ける理由
『スーパーティーチャー 熱血格闘』撮影現場にて。(提供:ギャガ)

――そういう同じ青春を送っていた人が世界中にいて、それがアクション映画で交わるというのは、すごくいい話ですね。最後になりますが、さきほどから「成り行き上」という言葉が多かったですが、今後もそのようにやっていく感じでしょうか。

今後も、あんまり決めないでいきたいと思ってます。日本では『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』でやり切った感があって。あの時間と予算と精神状態の中であれだけのものができて、評価されたということで、どんな状況でもできるという自信になったんです。だから、もっと肩の力を抜いた感じで、おおらかにいろんなことを試したい、そのほうが次の何かが出てくるかなという感じなんです。だからしばらくは自由に。

この年になって、またいろんな友達ができるのって楽しいですからね。しかもその友達が全く見知らぬ友達ではなく、同じ青春を送ったような、親近感のあるような人だとすると楽しいわけですよ。それにスタントマンって、世界中どこいってもスタントマン同士は話が通じるし、ジャズのセッションみたいな感じで、ちょっとやったらお互い手の内がわかる。そうやって合わせられる人がいると楽しいし、今はみんなが僕のことを知ってる場所より、誰も知ってる人がいないところでやりたいなと思います。

僕にとって、20代は冒険で、30代は苦しんで、40代は収穫のある10年だったんです。だから、50代はもう一回ちょっと冒険しようかなというか、そういう機会が与えられるならそれもいいかなと思っているので、暴れまくりたいと思っています。

PROFILE
谷垣健治

1970年、奈良県出身。1989年に倉田アクションクラブに入り、1993年単身香港に渡る。香港スタントマン協会(香港動作特技演員公會)のメンバーとなり、ドニー・イェンの作品をはじめとする香港映画にスタントマンとして多数参加。2001年に香港映画『金魚のしずく』でアクション監督デビュー。2018年台湾の金馬奨で『邪不圧正』(未)で最優秀アクション監督賞を受賞。2019年にはDGA(全米監督協会)のメンバーになっている。近年の主なアクション監督作に、映画『るろうに剣心』シリーズ(12, 14)、『新宿スワンII』(17)、『スーパーティーチャー 熱血格闘』(18)など。『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(20)、アメリカ映画『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(21)ではアクション監督を務めている。


『レイジング・ファイア』
監督・脚本・プロデュース/ベニー・チャン 主演・アクション監督・プロデューサー/ドニー・イェン 出演/ニコラス・ツェー チン・ラン スタント・コーディネーター/谷垣健治 配給/ギャガ 公開/12月24日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

『るろ剣』を支えたアクション監督が、挑戦を続ける理由
©Emperor Film Production Company Limited Tencent Pictures Culture Media Company Limited Super Bullet Pictures Limited ALL RIGHTS RESERVED

<ストーリー>
逮捕のためには躊躇することの無い、警官のチョン。彼は、麻薬組織の壊滅作戦中に、謎の仮面の集団に襲われ、仲間を惨殺される。黒幕は、警察組織にはめられ投獄された、かつてのチョンの同僚、ンゴウだった。しかも、ンゴウは更に恐るべき計画を立てていて……。

『レイジング・ファイア』の詳細はこちら

REACTION

LIKE
COMMENT
0
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら