古代の色に思いをはせる 奈良橿原・明日香の旅(下)

奈良県橿原市の今井町を散策した翌日は、朝のすがすがしい空気のなか橿原神宮を参拝しました。九州の日向国(ひむかのくに)高千穂宮から、東に向かった神武天皇が、ここ畝傍山(うねびやま)の東南の地に橿原宮を築き、第一代天皇として即位したとされていることから「日本はじまりの地」とも言われています。
(「町家散策に個性的なグルメ 奈良橿原・明日香の旅(上)」はこちら)
橿原神宮とゆかりの深い酒蔵へ

見上げると圧倒されてしまうほどの大きさの鳥居をくぐり、カシの並木がつくる緑の回廊のような表参道を歩きます。踏みしめる玉砂利の音を聞きながら進んでいくと、次第に背筋が伸びるような気持ちに。2022年が良い年でありますようにと手を合わせてきました。

続いて訪れたのは、大和の地酒「御代菊(みよきく)」を醸す喜多酒造。ここ奈良橿原の地に創業したのは1718年といいますから、300年以上の歴史ある老舗の蔵元です。そして橿原神宮と深いゆかりのある酒蔵でもあります。
というのも、橿原神宮の敷地内にある神饌田(しんせんでん)で採れたお米で、神様にお供えするお神酒(みき)「かむやまと」を造っているのがこちらの喜多酒造。毎年2月11日に執り行われる、橿原神宮で最も重要な祭典「紀元祭」に合わせて、年明けから仕込むそうですよ。

喜多酒造では、予約制で酒蔵の見学を開催しています(12月は休止)。冬場の11月~2月には、実際の酒造りを見ることもできます。今回訪れたときには、酒米を蒸す大きな蒸し器や、ゆっくりと発酵している醪(もろみ)タンクを上からのぞいたりすることができました。最後はお楽しみの試飲タイムも。酒造り真っ最中のいい香りのする蔵では何度も深呼吸をしてしまいました。
ロマンをかき立てる石舞台

喜多酒造から車で15分ほど走ったところに石舞台古墳があります。小学校の歴史の資料集で目にした記憶があるという人もいるかもしれません。のどかな里山の景色がぐるっと見渡せるここは橿原市のお隣、明日香村です。
30個の巨石を積み上げて造られた日本最大級の石室を持つ古墳として有名な石舞台古墳。石の総重量は推定約2300トン、天井岩の南側のひとつだけでも約77トンというスケールの大きなものです。

ボランティアガイドさんによると、このエリアは昔から石が採れる場所で、石舞台古墳の巨石は東に3kmほどいったところにある細川谷から修羅(しゅら)という道具を使って運んできたのではないかと言われているそう。誰の墓なのかは不明ですが、蘇我馬子のものという伝承があるようです。わからないからこそロマンをかきたてられますよね。
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