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フリー・デザイナーの先駆者G.ミケロッティ、日野やプリンスも

トリノ自動車博物館 ジョヴァンニ・ミケロッティ企画展の会場

購入者が夢見る生活を表現、永遠のフリーハンド

展示を鑑賞した筆者は、3つのことに思いを馳(は)せた。

ひとつは、撮影した動画内でメンゴッツィ館長も指摘しているミケロッティの理解力だ。クライアントの社風やアイデンティティーを的確に把握したうえで、独自の解釈を加えて新たなスタイルを作っていった。それはルネサンスの宗教画家たちが、主題や聖人ごとに定められたアトリビュート(持ち物やシンボル)を守りつつ、またパトロンの要求に応えながらも、独自の作風を模索し提示していったのに似る。

第二に感動するのは、彼の高度かつ精緻(せいち)な描画力である。極めて正確な三面図を制作するいっぽうで、黒などのキャンソン紙にパステルやテンペラで描くハイライト・レンダリングでは、イラストレーションとしても十分成立する力量を見せている。

ミケロッティ
ジョヴァンニ・ミケロッティ《日野コンテッサ1300クーペ》、1963年、キャンソン紙にテンペラ、日野自動車蔵

当然のことながら本人はそれをもって、クライアントに対するプレゼンテーションを成功させ、仕事を獲得することを意図していたに違いない。しかし、車両の形態そのものの誇張は最小限に抑えつつ、その車の購入者が夢見る生活を、見事な背景描写とともに表現しているのだ。

もうひとつは、彼のスタジオに漂う家族的感覚である。もちろん当時から自動車の開発競争は熾烈(しれつ)であったから、部外者の立ち入りは極力避けられていたに違いない。

しかし、会場で紹介されたアーカイブ写真には、スタジオで幼き日の子息エドガルドや娘ダニエラが一緒に写ったものが数々みられる。自動車史に残るさまざまなモデルが、どこか中世の職人工房に似た和やかな環境から誕生したことは、まぎれもない事実なのである。

今日欧州メーカーのデザインセンターでは、素晴らしく整えられた周辺環境のもと最新デジタル設備が導入され、著名なデザインカレッジや名門工科大学を卒業したデザイナーたちが従事している。それでも、ミケロッティがフリーハンドで手掛けたような知性と興奮が均衡した形態が誕生しにくいのはなぜか、深く考えさせられるのは筆者だけだろうか。

「Michelotti World −A hundred years of a designer without frontiers」展は、イタリア トリノ自動車博物館で2022年2月20日まで開催中

(写真/大矢アキオ Akio Lorenzo OYA、日産自動車 動画/大矢アキオ Akio Lorenzo OYA、大矢麻里 Mari OYA)

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