京都ゆるり休日さんぽ
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「夜座禅」の妙、心と身体をリセットし一日を終える 町家ギャラリー「る」

座禅と聞くと、早朝、お寺で行うイメージを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。今回訪ねたのは、京都市南区の東寺近くで展示会やイベント、ワークショップなどを催すギャラリー「る」で行われる「坐(すわ)る 夜坐禅(ざぜん)会」。ストレッチや呼吸を調えることから始まり、住職にナビゲートされながら行う座禅は、初心者でも気軽に参加できると評判です。

暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。

夕食の心配いらず 一日の終わりを座禅で締める

東寺からほど近い路地にたたずむギャラリー「る」。一文字の名前は「イメージのつきすぎない無為の音がよかった」という意図から
東寺からほど近い路地にたたずむギャラリー「る」。一文字の名前は「イメージのつきすぎない無為の音がよかった」という意図から

しんと静かな夜の町家に、一人また一人と人々が集まってきます。仕事を終えた人や、旅の夜の最後に。一日の終わりを座禅で締めくくろうと「る」を訪れる人々の表情はとても穏やか。緊張や気負いよりも、今日なすべきことをほぼ終えたという安堵(あんど)感が浮かびます。

月一度のペースで開催される「坐(すわ)る 夜坐禅会」(座禅会60分+茶礼60分。一人2000円。税込み。要予約)。まずは身体と呼吸を整えるストレッチから始まる
月一度のペースで開催される「坐る 夜坐禅会」(座禅会60分+茶礼60分。一人2000円。税込み。要予約)。まずは身体と呼吸を調えるストレッチから始まる

「帰ってから晩ごはんの心配をしなくてもよいように、座禅のあと『茶礼』として軽い食事の時間を設けているんです。帰宅してまだやるべきことがあると、座禅に集中できないかなと思って」

そう話すのは「る」のオーナー・黒木康太さん。本職はフォトグラファーとして活躍する傍ら、展示やイベントを行い、人が集まることのできる場として「る」をスタートしました。

岐阜県・蓮華寺の羽賀浩規住職のナビゲートで、徐々に静かな無言の座禅へと切り替えていく
岐阜県・蓮華寺の羽賀浩規住職のナビゲートで、徐々に静かな無言の座禅へと切り替えていく

食のイベントやアート・工芸の展示会などさまざまな企画を催しつつ、定例で開催しているのが、かねて黒木さんと親交のあった岐阜県・蓮華寺(臨済宗妙心寺派)の羽賀浩規住職を迎えての座禅会。身体をほぐすストレッチや呼吸法、自身を鑑みる内観のあと約20分の座禅を行い、最後に毎回異なる料理家による軽食をいただき、結びます。参加者のリラックスした表情は、夜ゆえの解放感と、終わったらそのままお風呂やベッドに直行できる安心感の現れ。眠る前の瞑想(めいそう)やストレッチのような感覚で参加することができるのです。

座禅=我慢ではなく、心地よい瞬間を見つけること

座禅会をナビゲートしてくれる羽賀住職は、お寺を飛びだし「る」をはじめカフェやギャラリーなどでも座禅を教えています。

「心はあっちにこっちに動き回る性質を持っているので、いきなり心を静めようとせず、まず身体と呼吸から自分を落ち着かせます。『座禅=我慢大会』のようになってほしくないので、体操や内観の時間を長くとることで『気持ちいいな』という感覚を知ってもらえたら」(羽賀住職)

指先や足先など、身体のすみずみにまで意識を行き渡らせることで、心より先に身体を落ち着かせる
指先や足先など、身体のすみずみにまで意識を行き渡らせることで、心より先に身体を落ち着かせる

身体をほぐしたあと、足を組んで静かに姿勢と呼吸を調える時間は瞑想のよう。羽賀住職の導く声を聴きながら、心から一番遠い指先や足先にまで意識を巡らせ、雑念が浮かんでも一度受け止めて、再び身体と呼吸に意識を集中させます。

羽賀住職の鈴の音が座禅の合図。無理のない形で足を組み、半眼(はんがん)で静かに座禅を続ける
羽賀住職の鈴の音が座禅の合図。無理のない形で足を組み、半眼(はんがん)で静かに座禅を続ける

この内観の時間のあと、いよいよ座禅。住職がリーンと鈴の音を鳴らし、無言で約20分間、座禅を行います。警策(けいさく)という、住職による背中を打つ棒が必要だと感じたら、参加者は静かに手を合わせて合図を。住職が参加者の前に立ち、お互いに合掌してから、背中を打っていただきます。同じ沈黙と時間を共有しながら、それぞれの人が自分のペースを探りつつ行う座禅は、終えたあとスッキリと身体が軽く感じられます。

警策は参加者本人が必要と感じたら打ってもらう
警策は参加者本人が必要と感じたら打ってもらう

自分を調え、癒やす手段を伝える場所に

この日の茶礼は、香港出身で台湾や広東料理、フレンチまで幅広いジャンルで活動する「ajiLABO」による「広東粥(かゆ)〜小菜(小皿料理)と薬味とともに〜」
この日の茶礼は、香港出身で台湾や広東料理、フレンチまで幅広いジャンルで活動する「ajiLABO」による「広東粥(かゆ)〜小菜(小皿料理)と薬味とともに〜」

毎回さまざまな国やジャンルの料理が登場する座禅のあとの茶礼、この日は「広東粥(かゆ)」。「お米の花が咲く(=米が割れる)」まで炊き上げるクリーミーなお粥が、薬味や小皿料理とともに供されました。「生飯(さば)」と言って自分たちが食べる前に3〜7粒の飯粒を取り分け、餓鬼や鳥獣に施す作法を行ったのち、皆で感謝していただきます。座禅で頭と身体をクリアにしてから、その時間を共有した仲間といただく食事はいつも以上に滋味深くしみわたります。

座禅の後、参加者で食卓を囲む。取り分けた「生飯(さば)」は黒木さんが「る」の庭に還(かえ)す
座禅の後、参加者で食卓を囲む。取り分けた「生飯(さば)」は黒木さんが「る」の庭に還(かえ)す

「以前、救急病院で放射線技師をしていたことがあったんです。病院は、容体の悪いかたをなんとかプラスにするよう手を尽くす場所。でも、そうなってからではなく、身体が健康でも前向きなエネルギーを必要としている人に、プラスの力を届けることができたら……。12、3年前から思い描いていたことでしたが、ここを開いて僕自身も色々な人と出会い、元気になれている気がします」

オーナーの黒木康太さん。放射線技師を経て現在はフォトグラファー、ギャラリーオーナーというユニークな経歴を持つ
オーナーの黒木康太さん。放射線技師を経て現在はフォトグラファー、ギャラリーオーナーというユニークな経歴を持つ

そう語る黒木さん。座禅も、食も、そして人との出会いや過ごした時間も、健やかに日々を過ごすためのセラピーなのかもしれません。修行ではなく、心身を調え凝り固まった自分を手放す手段としての、座禅。リセットされた身体のまま一日を終えられる心地よさは、すぐまた体験したくなるはずです。

■る https://www.instagram.com/ru_kyoto/

フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)

BOOK

「夜座禅」の妙、心と身体をリセットし一日を終える 町家ギャラリー「る」

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&Travelの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。

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