森と海の恵みを感じる、写真家が旅する沖縄本島

「沖縄といえば真っ青な海と白い砂浜。そんな場所を少し違った旅がしたい」
家族・友人と、そして修学旅行でも旅した沖縄。青い海で思いっきり泳いだ後は、白いビーチでのんびりし、おなかがすけばソーキそば。何度も訪れたことがあるのに、振り返るとそんな王道な旅が多かった。透明できれいな海に囲まれ、世界自然遺産に登録された森を持つ沖縄のこと、実はあんまり知らないのかも、とふと気づく。その土地のことを深く知れば、旅自体も豊かになるはず。そんなことを思いながら2021年秋、沖縄本島の森と海を旅してきた。
コーヒー愛好家も、そうじゃなくても訪れたい 「又吉コーヒー園」

那覇空港に降り立つと、真っ青な空が迎えてくれた。今までなら、真っ先にビーチへ向かっていたかもしれないが、今回は本島北部「やんばる」の森へ。お目当ては世界自然遺産に登録された森のそばで、沖縄産の貴重なコーヒーが飲める東村(ひがしそん)の「又吉コーヒー園」。日本広しといえども、沖縄でコーヒーが栽培できることに驚いた。
もともと先代はこの土地でバラやツツジを育てていたが、2代目の又吉拓之さんが無農薬で育てられるものを求めて、コーヒー栽培にたどり着いたという。豆を焙煎(ばいせん)する「焙煎士」、コーヒーをいれる「バリスタ」がいることは知っていたが、コーヒー豆にするまでの、実の収穫、洗浄、乾燥、豆の選定までの一連の流れは、ほとんど人の手によって行われている。ここでは、飲むだけじゃなく、その全ての工程を体験しながらコーヒーについて学ぶことも出来る。


2時間半〜3時間かけて全ての工程を終え、出来立てほやほやのコーヒーを飲んでみる。正直なところ、自分はブラックコーヒーにはいつも豆乳や牛乳を入れて飲んでいた。けれど、ここでは何も入れずにストレートで飲むことが出来た。自分で手摘みから焙煎までしたからかもしれないが、コーヒーの苦味と酸味は爽やかで味わい深く、香りも味もしっかり楽しめる。コーヒー愛好家じゃない自分が、こんなにコーヒーにのめり込んでいるとは!


コーヒー豆が収穫できるといっても、沖縄本島は「コーヒーベルト(栽培の適地)」から外れている。通年を通して暖かい気候でも、苗木はビニールハウスで育てるなど手がかかる。しかも、1本のコーヒーの木からは年間20杯分の実しか採れず、1杯のコーヒーがどれだけ貴重かということがわかる。口に入るまでの手間や苦労を体感すると、生産者の思いや情熱が伝わってくる。

「又吉コーヒー園」はコーヒー愛好家にとってはもちろん訪れたい場所でもあるが、自分のようにブラックコーヒーが苦手だったとしても、この大自然に囲まれた場所でのコーヒー作りは楽しく貴重な体験。自分の好きなコーヒーに出会えたり、コーヒーが苦手な人でも、コーヒーのイメージが変わったりするかもしれない。

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