そもそも、本は何のために読むのでしょうか?

【質問】ビジネスパーソンとして知性を身につけるために、どんな本を読めばいいのでしょうか。そもそも、本は何のために読むのでしょうか。普段はビジネス書やYouTubeのビジネスチャンネルを見ることが多いです。塩野さんがおすすめする本を教えてください。(20代会社員)*質問は編集部が取材したものですが、読者のみなさんからも募集しています。
人も人生も言葉で出来ています。人について語るにも言葉が要りますし、世界について語るのにも言葉が要ります。ビジネスパーソンにとっての仕事も言葉で表現されるものです。その言葉の塊が本です。本を読めば仕事で評価される、すぐに稼げるということは期待しない方が良いかも知れません。

息をするように本を読み続ける人は、それが何よりも楽しいから読んでいるのです。書物を通じて知らない世界、知らない人に出会えることが楽しくて仕方ないのです。
本ほど世の中で割安なものはない
本ほど世の中で割安なものはなく、誰かが身を削って一生を表現したものを数百円で手に入れることもできます。また、本は自分がおかれている環境や時代で読んだときの感じ方が変わってくるものです。同じ本でも時間をおいて読み返すのもまた発見があるのです。
社会で仕事をしている時期が長くなり、難しい局面に遭遇する経験も多くなってくると、あの本にあった話はこういうことだったのかと、時を経て腹落ちすることもあります。そういう意味ではどんな本であれ、読み手を試しているとも言えます。
本は日々の食事と同じです。ビジネス書やYouTubeなど、端的に今知りたいことを教えてくれることでしょう。巷(ちまた)には「コスパ良くうまくやる方法」や「ライフハック」のアドバイスがあふれています。それはそれで素晴らしくビジネスパーソンとして活用すべきでしょう。
ただし、柔らかいスナックばかり食べていると、堅いものをじっくり食べることが出来なくなります。堅い本物の書物は、人生の岐路においてあなたを救ってくれることがあります。
重要な地位にいても言葉が稚拙で想像力を欠くのは、かなしい
長編のノンフィクションや時の試練に耐えてきた古典、細部まで描かれた実務書というものは、かみ応えはあって大変かも知れませんが、そこから得た知見は長持ちします。ビジネスパーソンが年齢を重ね、重要な地位に就いたとしても、紡ぎ出す言葉が稚拙で想像力を欠くものであれば、とてもかなしいものです。知性がにじみ出る言葉遣いは、一朝一夕には身につきません。
リーダーは言葉でコミュニケーションするので、それが未熟だったりさびていたりしたら、リーダーたりえないのです。それが質問者の方のおっしゃる、見えなくても感じることのできる「知性」だと言えます。

ビジネスは経験と想像力で出来ています。ある意味で誰もが経験と想像力で考えて動き回る役者なのです。もちろん一人の人間が何もかも経験することは難しいので、書物にあたることで想像の翼を広げることができます。そしてビジネスで起こる課題のほとんどが人と人の関係であり、読書を通じて様々な人と出会う疑似体験をすることができます。
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