崖の下に広がる、雪と海の静かな世界 北海道・朝里駅

平日の朝、札幌駅から小樽行きの列車に飛び乗った。職場や学校へ急ぐ人々と一緒に揺られて約30分。車窓が札幌近郊の街らしい景色から一変、いきなり視界いっぱいの海へと変わった。日本海へと続く石狩湾だ。列車はしばらく海岸線にへばりつくように快走すると、真っ白な雪に覆われたホームに滑り込んだ。
連載「海の見える駅 徒歩0分の絶景」は、アマチュア写真家の村松拓さんが、海のそばにある駅で撮った写真を紹介しながら、そこで出会ったこと、感じたことをつづります。
映画にも登場した雪のホーム
ここは小樽市にある朝里(あさり)駅。石狩湾を望む無人駅だ。降り立ったのは、2013年3月初旬。最低気温は氷点下で、初春と呼ぶにもまだまだ寒い。前日まで雪が降り続いていたこともあり、足元は一面まっ白。ホームの脇にも人の背丈ほどの雪が残っていた。

目と鼻の先には海があるはずなのに、雪の塀が視界をさえぎり、その場で背伸びをしても海が見えない。
なんとかして海の見えるポイントを見つけるべく、長くてまっすぐなホームを端に向かって歩く。すると幸い、雪の塀が肩の高さほどになり、ようやく海が姿を見せた。

まぶしく輝く雪の白。対比するように存在感を主張する、石狩湾の鮮やかな青。海の大部分を隠している雪が海の色をいっそう際立たせているのが、憎い演出のように思えた。北国の雪、やるじゃないか。
ちなみに、雪の朝里駅は今まで映画やドラマ、ミュージックビデオでもロケ地としてたびたび使われてきた。2015年公開の中国映画「恋愛中的城市」(邦題「恋する都市 5つの物語」)では、雪に囲まれた待合室やホームが登場。その後、大勢の外国人観光客が朝里駅に詰めかけ、マナーの問題とともにニュースで取り上げられたこともある。

筆者が訪れた日はこの映画の公開前だったが、1組のカップルが雪のホームで楽しそうに写真を撮っていたのが印象的だった。
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