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同じコートでプレーしていても テニス・青山修子&柴原瑛菜ペア、“個”の壁越えるコミュニケーション

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言葉にすることで問題を共有できる

 二人のプレーが組み合わさったときの相乗効果を最大限に生かし、練習や実戦で磨きをかけ、地道なコミュニケーションを積み重ねる。そうした努力が実り、2021年にはマイアミ・オープン優勝という快挙を成し遂げる。だがその前には敗戦が続いた時期もあった。

青山 マイアミの前に出場した全豪シリーズではまだ結果が出ていた(ベスト8進出)んですけど、私のコーチからは「勝ってはいるけど試合の内容は全然よくない」と言われ続けていて。このままだと絶対に負けるよという言葉が、全豪が終わってから現実になり始めて、ここで流れを変えないと調子が下がり続けてしまうと思い、初めてエナちゃんに話をしました。その時点ではまだ勝っていたときの貯金でランキングは上がっていたんですけど、「今の私たちはこのランキングの位置にふさわしいテニスをしていない。数字ほど強い位置にはいないんだよ」と伝えて、これからどうしたいか、二人で話し合いました。

 

柴原 難しい話でしたけど、アオさんが思っていることを正直に言って相談してくれたのは、本当にうれしくて。長い時間を一緒にプレーしてきましたし、二人で1位になりたいというゴールはずっとあるので、アオさんが正直な思いを話してくれたことによって、家族のようにみんなで頑張ろうと感じられた。二人にとってすごくいい成長ができたと思います。

青山 当時はランキングが上がってきていた分、心が守りに入っていたというか。それまではとにかく自分たちのできることをやって、積極的にプレーをしてきた中で勝ち星を挙げてきていたんですけど、そうではなくなっていた。だからこそ、もう一回自分たちのいいところを出していこうと話して、そういう意識を持ってやり始めたのが復調のきっかけかなと思っています。

 同じコートに立って、日々共にプレーしていても、すべてを分かり合えているとは限らない。きちんと言葉にすることで、問題を相手に伝えて共有しなければ、二人がスランプを乗り越えて先へ進むことはできなかった。

青山 私もそうですが、選手は常に頑張っているつもりなんですけど、コーチなど第三者の目から見て知らせてもらわないとわからない現実もあるんです。それを私だけが理解していても勝つことにはつながらないと思いました。ただ、エナちゃんに伝えるとなると自分にも責任が出てくるので、本当はあまり言いたくないなというのが本音だったんですけど、勝つためには自分が言わなければいけないなと覚悟を決めました。

家族のように支え合える関係を

 競技のパートナーとして最も重要なのはプレーの相性がよいこと。ただし、お互いが同じ方向を向いて足並みをそろえなければそれも叶(かな)わない。テニスというスポーツが人と人とのやり取りである以上、ペアを組む相手を一人の人間として尊重できるかどうかは、選手生命と切っても切り離せない。

青山 基本的に行動や考え方のパターンがすごく似ているんですよね。だから相性がいいと感じたのかなあと。エナちゃんは誰が会っても純粋でいい人という印象を受けると思うし、実際にその通りの人柄なんですけど、最初から一緒にいて笑顔になれる感覚がありました。

柴原 ありがとう!

青山 あと、ツボが浅いんです。私はわりと些細(ささい)なことでもよく口に出すほうなんですけど、そういうときも冷たい目で見たりスルーしたりせずに、いちいち反応して笑ってくれる。一緒にノッてくれるタイプなので、会話もしやすいなと思います。

 

柴原 そうだね、似ているところは結構多いと思います。一緒にいろんなことで笑えるし、集中するときは集中するけれど、そうでないときはくだらないことでも笑い合って、楽しくいられる。それが私にとってはすごく大事なことです。

 その結果として2021年はウィンブルドン4強入り、柴原が日本国籍を取って挑んだ東京オリンピックでの悔しい初戦敗退を経て、WTA(女子テニス協会)ツアーファイナル初出場を果たし5勝を挙げシーズンを締めくくった。来シーズンはシングルスでの強化を目指している柴原だが、全豪オープンにはこのペアでの参戦を決めている。二人の最終的なゴールはもちろんグランドスラム優勝だ。

柴原 私は前での動きをもっと上手にしたいなと思っています。アオさんみたいにいっぱいポーチに出たい(ダブルスにおいてパートナーに向かって打たれたボールを横取りして打ち返す)というのは、最初に組んだときから持っている目標なので、アオさんの動きを見てまねしながら頑張って練習しています。一緒にいて学ぶことがとても多いので、それを見習って自分も成長したいなと思っているところです

青山 ありがとう(笑)。私は分析力をもっとつけていきたいなと思っていて。たとえば準々決勝で負けたシカゴ・フォール・テニス・クラシック(2021年10月)は、自分たちの中では内容は悪くないと思っていたんですけど、それでも勝ちにつながらなかった。プレーの質は上がってきているのを感じつつも、何が原因で勝ちにつながらなかったのか。そこが見えてくると、より具体的な戦略が立てられると思うので、そういうところを自分でもっと気づけるようにしていきたいなと思っています。

  

 今の青山と柴原にとって、相手の存在は、二人だからこそ成し遂げられる夢の支えとなっている。

青山 ペアを組み始めたきっかけもそうだったのですが、エナちゃんがいいプレーをしていたら自分もいいプレーをしたいと思いますし、自分がいいプレーをすることでエナちゃんもいいプレーをしたいと思うのではないかと。そういう意味でお互いに刺激し合えるパートナーでありたいです。そういう意識を常に持っていることが、いいパートナーであり続ける秘訣(ひけつ)かなと思うので、これからも継続していきたいです。

柴原 ダブルスで一番好きなところは、いいパートナーを見つけたら、家族のように愛のある関係になれること。そういう相手を得られるのは、私にとってとても大事なので、それができるダブルスを大切にしたいです。

■プロフィール

青山修子(あおやま・しゅうこ)
1987年生まれ、東京都町田市出身。日本屈指のダブルスのスペシャリスト。2010年の大学卒業後にプロへ転向し、ダブルスを中心にツアーでも着実に結果を残し、大学卒業の3年後には、世界四大大会の一つであるウィンブルドン選手権で女子ダブルスベスト4に進出。以来、女子ダブルスの世界ランキングでは常にトップ100を維持するなど、世界を舞台に活躍している。身長154cmと小柄ながら、世界の長身選手にも引けを取らない大胆かつ俊敏なプレーが武器。

柴原瑛菜(しばはら・えな)
1998年生まれ、米国出身。日本人の両親のもと、アメリカで育ち、全米大学ランキングでシングルス・ダブルスともに1位となった。2019年に日本国籍を選択した日本テニス界のホープ。21年は女子ダブルスで全てのグランドスラム大会、東京オリンピック2020にも出場し、年間成績上位8組によるツアー最終戦、WTAファイナル出場を果たした。

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