花のない花屋
連載をフォローする

明るい笑顔が消えた母。心とからだをほぐすお庭のような花束を

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
柳田由美さん(仮名) 50歳 女性
主婦
神奈川県在住

    ◇

元気でひょうきん、人付き合いが良好な母のおかげで、すこぶる健康的な幼少時代を過ごしました。母のまわりにはいつも人が集まり、近所の人やお友だちがいつも出入りしている、そんなにぎやかな家庭でした。

ところが私が高校に入学する前に家を購入してから、母は少しずつ人が変わっていきました。あんなに明るかった母から笑顔が消え、別人のような暗いキャラは数十年たった今も変わっていません。

思い当たることのひとつは、家の経済問題です。引っ越してしばらくたったころ、父が借金の保証人になった知り合いが破産し、我が家に肩代わりした大きな借金がのしかかりました。次第に父と母の仲もうまくいかなくなっていきましたが、それでも母はそうした不幸なできごとに立ち向かいながら、家庭を守り続けました。

私は弟と2人姉弟で、弟は大学卒業後に地方の会社に就職して家庭を持ち、実家がある東京に戻る予定はありません。私は結婚後、夫の転勤も含め引っ越しを繰り返し、やっと実家から1〜2時間の場所に落ち着いています。私たち夫婦には子どもはなく、自分たちの人生を楽しんでいますが、母は子育てが終わりきった今も老後を楽しんでいるようには見えません。

明るかった性格は、さみしがり屋で心配性、そして極度の変化を嫌うような、正反対の性格に。今も生活に追われ、ほとんど無趣味です。かたや父は持ち前の楽観的な性格で、ゴルフやお酒などの趣味を楽しむ余裕もありました。

そんな父も近年は糖尿病を患い、父の1日の過ごし方や食生活に、母は常に目を光らせています。つくづく母には、安心して過ごせる時間がないのです。そのため、ひどい肩こりで体じゅうがカチコチに固まっていて、入眠にも時間がかかるほど。旅行も行きたがりません。 

そんななか唯一、母の好きなものといえばお花です。とはいえ、外車などパーッと消費してしまう父の浪費をカバーするように、母はいつも節約を心掛け、それが今の母の性格にもつながっていると思います。実家には庭がなく、母は「お庭があれば植物や野菜を育ててみたい」と、よく言っていました。

母がお金を出して花を買うのはお彼岸やお正月くらいですが、ご近所さんからいただいたお花や野の花を上手に組み合わせて、季節を感じさせてくれるアレンジのようなものに仕立てています。口には出しませんが、そのお花たちに、母の優しさやセンスを感じていました。リボン、フリル、パステルカラーなどのモチーフも好きなようです。

本当なら、母の唯一の願いをかなえて、お庭のある家を母にプレゼントしてあげたい気持ちは山々なのですがままなりません。その代わり、凝り固まった母の心とからだをほぐして癒やしてくれるような、小さなお庭のような花束を東さんにお願いしたいです。母の明るい笑顔がまた見たいです。

明るい笑顔が消えた母。心とからだをほぐすお庭のような花束を
≪花材≫スイートピー、キルタンサス、スカビオサ、ブルースター、デルフィニウム、チューリップ、トルコキキョウ、アカシア

花束をつくった東さんのコメント

フリルやリボンなどのモチーフや、パステルカラーがお好きというお母様。そんなお母様に笑顔になってほしいと、パステルカラーをたくさん盛り込んだやさしいアレンジに仕上げました。

ちりばめたのは、春を先取りしたスイートピーやキルタンサス、縁がギザギザしたユニークなチューリップなど。周囲を淡いピンクのトルコキキョウでぐるりと囲み、やさしい春の日差しで包み込んだような仕立てです。

そして最後にふわふわしたアレンジをキリッとしめるのは、アカシアの大人っぽいグリーン。そんな小さいお庭のようなアレンジです。スイートピーなど香りのいいお花も使っていますので、お母様の心が少しでもほぐれるとうれしいです。

明るい笑顔が消えた母。心とからだをほぐすお庭のような花束を
明るい笑顔が消えた母。心とからだをほぐすお庭のような花束を
明るい笑顔が消えた母。心とからだをほぐすお庭のような花束を
明るい笑顔が消えた母。心とからだをほぐすお庭のような花束を

文:福光恵
写真:椎木俊介

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

応募フォームはこちら

REACTION

LIKE
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら