フレッシュ&シャープなスパイス感、文字どおりクセになる「curry 草枕」(東京・新宿)

「curry 草枕」のホームページには「当店のカレーは少し変わっています」とあるが、まさに核心をついている。ルックスはいたってオーソドックス。ただ、口にしたとたん独特のフレッシュなスパイス感が口いっぱいに広がる。煮込むことで得られる一体感やまろやかさは求めておらず、ひとつひとつのスパイスの風味を際立たせたシャープな味わい。この特有のスパイス感を言葉だけで伝えきるのは難しいが、とにかく一見ありそうで、どこにもない。クセになるカレーという表現が、まさにしっくりとくる。
オーナーの馬屋原亨史さんが、現在の店からすぐの新宿3丁目に、最初の店を出したのは2007年のこと。2013年2月に現在の場所に移転した。どちらも正直分かりづらい場所にあるが、連日行列ができる。
カレーには一皿あたりおよそ1個分の玉ねぎが使われている。毎日大量の玉ねぎをすりおろし、10~15リットルのずんどう鍋でじっくり火を入れてベースを作りあげる。フレッシュ感を際立たせるため、スパイスは注文が入ってからベースに加える。辛味スパイスが3種類、辛さだけでなく個性的なうまみも持つスパイスばかりだ。それにクローブやカルダモンなど、数種類の香りスパイスをミックスした粉末を投入して完成させる。魔法のような調合が素晴らしく、辛味と香りのバランスが絶妙だ。
米は、オーナーの大学時代の先輩が北海道で減農薬栽培している「大地の星」を使用。ふだんパエリアやリゾットに使われる大粒で固めの食感の米で、カレーとの相性は抜群。米好きを自称する馬屋原さんは、30分から1時間おきに米を炊き、風味を損なわないように炊き立てにこだわって提供する。

私の一押しメニューは、「なすトマトチキン」(1050円、以下税込み)。輪切りにして炒めたナス、甘味と酸味がカレーと好相性のプチトマト、別鍋で軟らかく煮たチキンの入った人気のカレーだ。とろとろのナスがうまいのはいうまでもないが、熱が加わって薄皮がはじけ、果肉が少し溶けたプチトマトがなんともおいしい。

「大豆とひよこ豆とトマト」(950円)は、ヘルシーな100%植物性のカレー。固めに火を通して食感を残した豆のほのかな甘みと、果汁があふれるプチトマトの酸味とのコントラストがいい感じだ。

インド風スパイスカレー店を標榜(ひょうぼう)しているが、店内には掘りごたつがあり、ちょっと見は和風カフェ風。インド一色にはしたくなく、店名もあえて旅の枕ことばの草枕にしたのだそう。ありがたいことにファンが増え続け、特に土日は長い行列ができてしまう。あまり待たせるのも悪いので、もう少し広めの店に引っ越した方がいいかどうか思案中だそうだ。

curry 草枕
東京都新宿区新宿2-4-9 中江ビル2F
03-5379-0790
https://currykusa.com/