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せり鍋、赤貝……冬の美味が朝市に集結! 宮城県名取市閖上

東北の玄関口を担う仙台市と隣り合う名取市。奥羽山脈に水源を持つ名取川の河口域に位置することから、江戸前寿司(ずし)には欠かせない赤貝を始め、海の幸の宝庫だ。一方で広大な名取平野には、仙台国際空港、そして冬に旬を迎える「せり」などの農地が広がる。ここで毎週日曜日、宮城県内はもちろん、近隣県からも多くの人が足を運ぶ「朝市」が開催されている。そのほとんどの人は買い物以外に、食べることが目的だ。吐く息も白い2021年12月。出身地である宮城県を離れて35年以上になる筆者が、幼い頃の思い出が残るこの地のおいしい旬のものを巡る旅へ。

「閖上」と書いて「ゆりあげ」と呼ぶ

せり鍋、赤貝……冬の美味が朝市に集結! 宮城県名取市閖上

仙台国際空港の横を南北に延びる運河がある。「貞山堀(ていざんぼり)」だ。貞山堀が名取川河口域と合流する場所は「閖上」と書いて「ゆりあげ」と呼ぶ。

見慣れない「閖」という漢字は、仙台藩第4代藩主伊達綱村が、当地の「ゆりあげはま」を「山門の中から水が見える故、今後は門構えに水を書き『閖上』と記すように」と下されたことからだと教わった記憶がある。と言うのも子供の頃、ここから車で30分ほどの場所に住んでいた筆者にとって、小学生時代、度々、父と釣りに来ていたなじみの場所なのだ。

しかし、その頃の面影が感じられない。震災を経て、閖上が生まれ変わっていたからだ。それを牽引(けんいん)したのが「ゆりあげ港朝市」だ。

「ゆりあげ港朝市」で美味に出会う

せり鍋、赤貝……冬の美味が朝市に集結! 宮城県名取市閖上

まだ朝6時だというのに、威勢の良いかけ声とともに陳列された商品が次々と売れていく。今から45年ほど前に始まったこの朝市は、2011年3月11日に起きた東日本大震災の被災地のひとつだ。しかし、直後の3月27日には大型商業施設の駐車場を借り、トラックによる臨時の朝市を開いた。以来、震災で離ればなれになっていた住民の交流の場となり「ここに来れば、誰かに会える」という心のよりどころになったという。

そして2013年5月、もとあった場所で再スタートを切った「ゆりあげ港朝市」は、震災後いち早くよみがえったことで知られる。現在、鮮魚店から漬物屋まで約50店舗が集結し、日曜日の朝を盛り上げている。

せり鍋、赤貝……冬の美味が朝市に集結! 宮城県名取市閖上

そんな「ゆりあげ港朝市」は、季節ごとの海の幸や野菜などを安価で買えるのが魅力だが、人々を引きつけるものは他にも。市場内には、テイクアウト可能なグルメを販売する店舗が多く、それを食べに訪れる人も少なくない。そのひとつが、今や冬の宮城を代表するグルメとなった「せり鍋」だ。

せり鍋、赤貝……冬の美味が朝市に集結! 宮城県名取市閖上

閖上のある名取市は古くから「せり」の産地だが、自分の記憶をたどっても、せりは子供の頃にお雑煮に入っていたくらいで「せり鍋」の記憶はない。それもそのはず、2014年、2015年の「仙臺(せんだい)鍋まつり」で2年連続グランプリを受賞したことにより、人気に火がついたのだ。

そのグランプリ店が朝市に出店している「スズタケ」。ちなみに「せり鍋」は単にせりを具材とした鍋ではなく、冬に旬を迎えるせりを根っこまで余すことなく頂く、せりが主役の鍋のことだ。だからこそ、新鮮なせりでないと、そのおいしさは半減する。スズタケでは、通常9月から4月ぐらいまで販売している。

せり鍋、赤貝……冬の美味が朝市に集結! 宮城県名取市閖上

せり鍋と双璧をなす人気グルメの「水餃子(ギョーザ)」に、閖上から始まった大手「ささ圭」がその場で揚げた笹(ささ)かまぼこ「遊里揚(ゆりあげ)」、カニ汁やアップルパイなど、冬の宮城らしいグルメに目移り必至。また、炉端焼きのコーナーでは市場内で買ったものを使用料無料で自由に焼いて食べることが出来る。炭火にあたりながら焼き立ての海の幸を頰張れば、満悦至極の時間になるに違いない。

お目当ての商品で「競り」を体験!

せり鍋、赤貝……冬の美味が朝市に集結! 宮城県名取市閖上

午前10時。「競り」が始まる。と言っても、朝市に来場している誰もが参加出来る体験型の競りだ。まずは番号の書かれたうちわを受け取り、会場で待機する。ハンドベルの合図とともに競りが始まると、競り人の威勢の良い声が響く中、競り落としたい商品の時にうちわを掲げる。競り人からうちわの番号を呼ばれれば落札となる。時間は30分ほどで、リンゴや白菜などの商品が競り落とされていくスピード感は見ているだけでも楽しい。

せり鍋、赤貝……冬の美味が朝市に集結! 宮城県名取市閖上

商品を売るだけの朝市に満足することなく、様々なアイデアを出しながら「ゆりあげ港朝市」を盛り上げるのが、競り人を務める代表理事の櫻井広行氏だ。震災を経験し「前に進むことの大切さを知った」と語る櫻井氏は、今後、シーカヤック体験などのアクティビティーを導入する計画があると話していた。ここを訪れる楽しみがまたひとつ増えそうだ。

■ゆりあげ港朝市
名取市閖上東3-5-1
営業時間:6:00~13:00
開催日:毎週日曜・祝日
https://www.yuriageasaichi.jp/

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