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帰省もままならない今、心に染みる『望郷じょんから』の一節

ポジティブ&素直に変換された、ギャルの流行語

帰省もままならない今、心に染みる『望郷じょんから』の一節

毎年、個人的に注目しているギャルの流行語。今年は第3位の「羽ばたいてるね」がいいなと思った。“盛れてるね”や“いい感じだね”の意味で使う言葉だそうで、昔でいうところの「イケてる」に近い使い方をするらしい(「イケてる」が、もう昔の言葉というのも驚きだけれど)。

いわゆるギャル語はもはや何が何だか分からない突飛(とっぴ)な文字面になることが多い。でもその点、「羽ばたいてるね」は、言葉としてはものすごく真っ当な日本語である。つまりこれは新しい言葉が生まれたのではなく、新しい使い方が生まれたということになる。

「いつもよりイケてる」=「羽ばたいてる」というポジティブで素直な変換が、いわゆる毒舌みたいな笑いがあまりウケない今の時代ならではという感じがする。一昔前ならこれを逆の意味で、皮肉や小馬鹿にした言葉として使っていた気がする。

帰省もままならない今、心に染みる『望郷じょんから』の一節

「これホント思ったんですけど、映画観に行った時に自分の席に行くのに足をどかしてくれた人に「すいません」って、僕は言っちゃうんですけど、すごい上品なマダムなんかはみんな「ありがとう」って言うんですよ。何か、心の余裕が違うなって」と言った。

日本人は謝りすぎると昔からよく言われている。あまりいいことではないと思ってはいても、「すいません」と言ってしまうタイミングは、急に何かが起きた時が多いので、考える間もなく、反射的に「すいません」が口から飛び出してしまう。

エレベーターに乗ろうとしたら扉が閉まり出して、中にいる人が開けてくれた時。とっさに出てくる言葉が「ありがとうございます」ではなく、「すいません」である人は多いと思う。人に迷惑をかけずに暮らすという意識はもちろん大切だけど、誰かのやさしさに対して感謝を伝えることはそれ以上に大切なことである。2022年、「ありがとう」がさらりと言える人になりたいものである。

帰省もままならない今、心に染みる『望郷じょんから』の一節

12月28日に再放送されていたBS-TBS『X年後の関係者たち〜あのムーブメントの舞台裏〜』でのこと。eスポーツの先駆けとも言える「全国キャラバン」を開催し、“名人”といった新たなヒーローを生み出しては子供たちを熱狂させた、伝説のゲームメーカー“ハドソン”。そのブームの立役者たちが当時の子供たちの熱狂を振り返る中、高橋名人(高橋利幸)が名作ゲーム『ロードランナー』の開発にまつわる話をしていた。

「ぶっちゃけ言うと、誤魔化(ごまか)しを“裏技”と呼び始めたんですね。(本来なら敵の)ロボットに触れたらミスになるんです。でも、ロードランナーくんがハシゴに乗って片手を上げて止まっていると、ロボットがすり抜けていくんです。ミスにならない。これは、はっきり言ってバグなんです。でも、回収して修正してたら倒産するんで、何とかしないといけない。だから“裏の面白い技っていうことで発表しちゃおう”ってことで、“裏技”にしたんです」と、今では当たり前に使われている「裏技」という言葉の起源について話していた。

今でも「裏技」は現役バリバリで使われている言葉である。インターネットで「裏技」と検索すれば、料理や掃除にまつわる、ちょっとしたアイデアなどが無数にヒットする。今も昔も「裏技」という言葉の響きには無性に胸躍る何かがあって、面倒で地味な作業をしている時などに「それ、裏技あるの知ってる?」などと言われたら、それだけでその人が神様に見えたりする。

今では当たり前に使っている言葉だけど、それ以前はそのことを何て言っていたのだろう、みたいなことを時々考えることがある。例えば、「リセットする」なんて言葉も家庭用ゲーム機がきっかけで広まった言葉だと思うが、それが広まる以前はそのことを何と言っていたのだろう。「ふりだしに戻る」だの「やり直し」だのと言っていたのだろうか。でも、それだと少しニュアンスが違う気がする。

「リセット」が一度広まってしまうと、もう「リセットする」という状況を正しく表現する言葉は「リセットする」以外にないような気がしてしまうから、言葉というのは面白い。おそらく今日もどこかで、暫定一位の言葉が、新しい言葉と「その状況を指す使われ方」の一位の席を争っているのだ。

<Mini Column>最後の花火

昨年末、フジテレビで『ドリフ大爆笑』が再放送されていた。約40年前の映像だった。ドリフターズのメンバーが入れかわり立ちかわりちょっかいを出しては、いかりやさんにメガホンで叩(たた)かれる。冗談抜きで5秒に1回くらい叩かれていたんじゃないだろうか。

我が家の7歳と4歳の息子たちは、最初こそ笑いながら見ていたが、しつこく繰り返されるイタズラと暴力の繰り返しに、途中から完全に引いていた。親としても教育に悪いような気がしてそっとチャンネルを変えた。でも、自分が子供の頃はこれとまったく同じ映像を間違いなくゲラゲラ笑って見ていた。改めて確実に時代が変わっていることを実感した。

そういえば、M-1グランプリで優勝した錦鯉の漫才を見ていた時も似たようなことを思った。長谷川さんのスキンヘッドを良い音を立てて何度もペチンペチンと叩く渡辺さんを観て、4歳の息子が「こんなに叩いちゃダメだよね……」と悲しそうにつぶやいていた。こういうツッコミが良しとされる時代は、もう長くないのかもしれない。ペチン、ペチーン……。最後の花火が上がる音に聞こえた気がした。

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