粒々ホールスパイスたっぷり 色鮮やか、香り際立つ「スパイスカレー青藍」(東京・高円寺)

今週訪れたのは、粒のままのホールスパイスにこだわり、パンチがあるスパイス感が売りのカレー店「青藍(せいらん)」だ。オーナーシェフの梶田健一さんは、カレー好きが高じて店をオープンしたカレーマニア派。最初は身近な友人にふるまっていたが、それが評判を呼び、定期的なイベント開催へと進化。間借りカレーを経て、2017年の11月に高円寺に店を構えた。5年目を迎える今もTV、雑誌に引っ張りだこ。常に行列ができる人気店だ。
店の一押しメニューは、たっぷりの野菜がカレーとともにワンプレートに盛られた「スパイシーチキンカレーZ定食」(980円、以下税込み)。舌をまひさせるような辛さを嫌い、それぞれのスパイスをしっかり味わってもらうことを重視している。注文が入るとまずはフライパンでクミン、カルダモン、コリアンダー、フェンネル、花椒(ホワジャオ)など独自にブレンドしたホールスパイスを、少量の油で炒め始める。香りが十分に引き出されたところに、ずんどう鍋からすくったカレーを合わせて完成させるのだが、このひと工夫で仕上がりはまるで違う。香り立つスパイスによって食欲は全開。スプーンを口へ運ぶピッチが格段に速くなる。

青藍のカレーのすごさは、このスパイスに負けないルーのうまさだ。「うちは油も少量、小麦粉や化学調味料も使わないから、その分コクやうまみを出す工夫がいる」と梶田さん。例えばタマネギは3種類を使い分ける。濃いあめ色になるまでじっくりと炒めたタマネギに加えて、すりおろしたフレッシュな生のタマネギも一緒に煮込み、仕上げの時に、粉末状のオニオンスパイスで風味をプラスする。うまみを引き出すには時間を掛けることも必要だそうで、素材を落ち着かせるために、火を入れたり、寝かせたりを繰り返し、作り始めてから完成まで4日間ほどかかるという。

さらにカレーをグレードアップさせているのがたっぷりと盛られた付け合わせの野菜。季節ごとに多少の変化はあるが、クミン風味のキャロットラペ、キャベツのアンチョビ炒め、白菜の浅漬け、塩昆布とゴマであえた紫キャベツなど4種類ほど。塩昆布やゴマなど、日本人好みの隠し味もまた新鮮でいいのだ。彩りが目的ではなくて、野菜もたくさん食べてほしいという、このボリューム感もうれしい。

「店をやるなら人の生活が感じられる場所でやりたい」という理由で高円寺の商店街を選んだという梶田さん。自分が食べたいと思うカレーを提供して、みんなにおいしいと言ってもらえることが何よりうれしいという。カレーマニアの店主がこだわる絶妙なスパイスカレーをぜひ一度味わってみてほしい。
