欧州おいしい旅
連載をフォローする

21世紀に残る郷土色といえば  ドイツビールとおつまみ

ヨーロッパを知り尽くした作家・写真家の相原恭子さんが、欧州の気候や風土に育まれ、長く愛されてきた食べ物や飲み物を紹介する連載「欧州おいしい旅」。今回はドイツビールについてのあれこれです。南部バイエルン地方、西部ケルンそれぞれの流儀に加え、世界的なホップの産地では、意外な珍味も食べることができます。

私が最初に書いた本は「ドイツ地ビール夢の旅」(1996年)でした。以来ずっとビールには思い入れがあり、書こうとするとつい熱が入ってしまいます。

ドイツビール醸造者協会の2020年の統計によれば、ドイツには1528カ所のビール醸造所があります。生産量は減少傾向にあるものの、醸造所数は2012年以来、少しずつ増え続けて、2019年には1552を数えました。しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年は1528カ所と多少減りました。ビールの生産量や消費量も微妙に減る傾向にはありますが、販売総額は少し増加しており、ビールの種類も増えて高級なビールが好まれる傾向にあります。

ヴァイスヴルストとヴァイスビア バイエルン地方

ドイツビールには、その発達の歴史を背景にして、今も地方色が色濃く残っています。たとえば、北ドイツではハンザ同盟の交易品として、また、南ドイツ、特にミュンヘンを中心としたバイエルン地方では「修道士の飲むパン」「液体の栄養素」と呼ばれ、カトリックがさかんな地域らしくキリスト教と深く結び付いています。

神とビールにまつわる大切な言葉があります。「Hopfen und Malz, Gott erhalt’s」(ホップとモルトに神の加護あれ)です。神に護(まも)られたビールであり、神聖なものだという認識が感じ取れますね。特にバイエルン地方では巡礼者をビールでもてなした歴史があり、ヴェルテンブルク修道院やアンデックス修道院など今もビールを醸造・販売している修道院があります。

写真15 修道女もランチにビール。バイエルン州のレーゲンスブルク郊外にて
修道女もランチにビール。バイエルン州のレーゲンスブルク郊外にて

ペストが流行した時代には、煮沸して醸造するビールは安全な飲み物でしたから、中世の修道院では、栄養のある安全な飲み物として修道士や修道女にビールを支給しました。写真の修道女たちに聞いてみると、今でもキリスト教の祭日などには修道院でビールが出るそうです。

2月下旬頃から、バイエルンではシュタルクビアツァイト(強いビールの季節)が始まります。キリスト教(カトリック)の断食の期間にアルコール度数の高いビールが醸造されます。この時期をバイエルンでは「第5のシーズン」と呼びます。断食はするものの、飲むのは良い、ならば水よりは栄養のあるビールを飲もうというわけです。ミュンヘンのビアホールはシュタルクビアを楽しむ人々でにぎわい、風物詩となっています。

手前が白ソーセージ(ヴァイスヴルスト)
手前がヴァイスヴルスト(白ソーセージ)

ミュンヘンを中心としたバイエルン名物のヴァイスヴルスト(白ソーセージ)。元々は午前中、11時頃までにだけ食べるソーセージでした。なぜかといえば、日曜日に教会へ行き、教会の礼拝が終わると小腹がすくので帰りにビアホールへ寄り道して、このヴァイスヴルストとヴァイスビア(=ヴァイツェンビア)を仲間で楽しむというライフスタイルがありました。

ヴァイスヴルストと共に味わうのは、もちろんヴァイスビア(ヴァイツェンビア)です
ヴァイスヴルストと共に味わうのは、もちろんヴァイスビア(ヴァイツェンビア)です

昔は男性はビアホールへ、女性は家へ帰って食事の支度をしたそうですが、今はそうはいきません! 男性が家で料理をするという家もありますし、礼拝には行かないけれど、日曜日のブランチ代わりにカップルで、または1人でビアホールへ行く人も少なくありません。

シュタムティッシュ。ミュンヘンのビアホールで
シュタムティッシュ。ミュンヘンのビアホールで

仲間で集まる場所をシュタムティッシュ(おなじみさんのテーブルというような意味)と呼び、特にビアホールには必ずというほどこのテーブルがあります。たとえば、ハイキング、聖歌隊、チェスなどの仲間で曜日を決めて毎週、特に約束は無くてもそのテーブルへ行くと誰かがいる、誰もいなくても店の人とは親しいので楽しく過ごせる、というわけです。シュタムティッシュで飲むビールが、人の絆を強くしています。

バイエルンではヴァイツェンビアのことをヴァイスビアと呼びます。ヴァイツェンとは小麦のことで、小麦のモルトを使って醸造する上面発酵ビールです。比較的苦味は少なく、モルトの甘みと快い酸味があり、爽やかでありながら味わいのあるビールで、私が好きなビールの一つです。

ヴァイスとは白という意味。なぜヴァイスビアと呼ぶのかと知人のブラウマイスター(国家資格を持つビール醸造家)に聞いたところ、ヴァイスの方が言いやすいから、または、ヴァイスビアは白く濁っているからではないか、と言います。ヴァイツェンビアは濾過(ろか)しないで酵母が残っているので白っぽく見えます。しかし、ヴァイツェンビア全体に占める割合は少ないものの、濾過して濁りのないクリスタルヴァイツェンもありますし、濃い色をしたドゥンケルヴァイツェンもあります。

ビールにピッタリなシュマルツブロート
ビールにピッタリなシュマルツブロート

写真は、上質なラードに、茶色くなるくらい炒めたタマネギを混ぜてパンに塗ったものです。これはバイエルンの小さな村のビアガーデンで私も手伝って作ったシュマルツブロート。子供の頃からお肉の脂身が嫌で、取り除いて食べている私は、わざわざラードを塗るのか!?とあきれたのですが、食べてみると香ばしくておいしいのです。好みでコショウを振ったりします。

少しおシャレに作ったシュマルツブロート
少しおシャレに作ったシュマルツブロート
NEXT PAGEパブじゃありません、クナイペです ケルン

REACTION

LIKE
COMMENT
1
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら