21世紀に残る郷土色といえば ドイツビールとおつまみ

パブじゃありません、クナイペです ケルン
さて、次は私の第二の故郷ともいえるケルンのビールです。
ケルンでは小さなグラス(200ml)でケルシュ(ケルンのビール)を飲みます。たとえば、お買い物の途中に町なかにあるクナイペ(ビールを主に出す居酒屋)に立ち寄り、「のどが渇いた。ちょっと飲もうかな」と一杯、「もう少し飲みたい」とまた一杯、「まだ飲みたい感じ」とまた一杯というふうに、何となく続けて飲んでしまいます。爽やかで、すんなりと体になじむビールです。
クナイペはビールを醸造しているところも多いです。一般的にはパブのイメージに近いのですが、ケルンの人たちは「パブとは違う。クナイペはクナイペだ!」と思い入れています。

クランツと呼ばれるトレイにグラスに注いだケルシュをたくさんのせて運ぶウエイター。ケルシュは上面発酵ビールです。ちなみに、ケルンの方言もケルシュと言います。
クナイペでは、メニューやビールにまつわる言葉も独特な言い方があり、またケルシュ(方言)で呼ぶこともあります。たとえば、ウエイターはケーベス、厚切りのチーズを挟んだライ麦パンはハルヴェ・ハーン、ビールのたるはピターメンヒェン、ケルシュを飲むグラスはシュタンゲン、などという具合です。

サッカーの試合当日ともなると、仲間同士でクナイペに集まって盛り上がり、その勢いでスタジアムへ「乗り込もう!」という人たちがいます。
私は小学生の頃、男子に交ざってサッカーをしていました。しかし、日本では観戦に興味がなかったのですが、ドイツに居ると特に周囲の男性たちの熱気に押されて気分が高揚して、スタジアムへ行ったり、クナイペへ集まってケルシュを片手にテレビ中継でサッカーを見たくなるから不思議です。
ホップの芽、実は貴重な珍味
ところで、ビールの醸造に必ず使われるホップ。ドイツは世界でも有数のホップの産地です。中でもハラタウは、一つの地域としては世界最大の作付面積とされています。

ホップは、つる性の多年草で10m近くつるを延ばしますので、5月頃に余分な枝や芽を取り除いて手入れします。炎天下なので、重労働です。見渡す限りのホップ畑の風景を見ると、心が癒やされます。

取り除いた余分なホップの芽は、アスパラガスのように、ゆでていただきます。多少の苦みがあって、爽やかなこの時期だけの味わいですが、量が少なくホップの産地でしか手に入らないため、貴重な珍味でもあります。
「まさに今日」という日にホップ収穫 ビットブルク

ビール「ビットブルガー」の醸造所があるビットブルクです。ホップの畑もあり、9月下旬に収穫の様子を見ることができました。「まさに今日」という日を逃すとホップの毬花(まりはな)が開いて香りが飛んでしまうので、雨の中でも一家総出で朝から収穫です。ホップの良い香りが納屋に立ち込めていました。

ホップの香りは鎮静や安眠を促すとされています。乾燥したホップをいただいて枕に入れたら、気持ちよくて疲れやストレスがスーッと抜けていくようでした。ドイツのホップの産地は、ハラタウのほかに、テットナング、シュパルト、エルベ・ザーレ、ビットブルクがあります。

少しでもビールについて知ると、今晩飲むビールはいつもとは一味ちがって、さらにおいしくなるかもしれませんね。
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どこの国でも昔から酒は百薬の長だったわけですね。
エッセイを拝読してオクトーバーフェストに行きたくなりました。