氷結した湖の静寂と、モール温泉の感触 北海道・白老「界 ポロト」

宿を旅する楽しみのひとつに建築との出会いがあると思います。2022年1月14日にオープンしたばかりの宿「界 ポロト」は、自然との調和を得意とする建築家・中村拓志氏の設計。氷結したポロト湖と、噴煙を上げる樽前山、かつてアイヌ民族の集落(コタン)があった地の雄大な自然の中に、そっとたたずむような静寂の時間を楽しみました。
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■連載「楽しいひとり温泉」は、国内外の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する筆者が、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。
アイヌ民族の建築をモチーフにした湯小屋

ポロト湖の水辺に建てられた三角屋根の湯小屋は、アイヌ民族の家を建てる時の三脚の木組み「ケトゥンニ」がモチーフ。大浴場の内湯からそのままつながる露天風呂は、湖の上に浮かんでいるような造り。地中の洞穴に隠れているようなゾーンから進み出ると、湖へと解放される絶景露天風呂となる楽しい温泉です。実はこれは男性用大浴場の風景です。女性用の露天部分は水辺のアシの間から風景を垣間見るような設計で、守られているような感覚に癒やされます。湯けむりの真っ白なもやに包まれて入る早朝の露天風呂も幻想的でした。

三角形のデザインが織りなす木の空間は温かみがあります。内湯のとんがり屋根にぽっかりと開いた天窓から光が差し込み、黒褐色の温泉が生き物のようにゆらゆらと動くように見えます。ぷーんと漂うのは森のような土のような香り。この色と香りは、モール温泉と呼ばれる植物由来の成分を豊富に含む白老温泉の特徴です。モールとは土にかえった植物の有機成分(腐植質)が含まれる地質のことで、モール温泉はその成分が豊富に溶け込んでいます。泉質は単純温泉で、pH7.8の弱アルカリ性。つるつるとした感触が心地よく、湯上がり肌はしっとりピカピカ。植物エキスたっぷりのモール温泉ならではの仕上がりがうれしくて何度も入ってしまいました。
シラカバの森とたき火の炎

ロビーの中心にはたき火を囲むラウンジがあります。アイヌ民族のコタンで、たき火を囲んで集う気分。奥にはとんがり屋根の湯小屋があり、ポロト湖の水を引き込んだ水庭にシラサギが舞い降ります。

部屋の中にもシラカバやアイヌ民族の文様のモチーフが織り込まれ、シックな色合いで落ち着けます。スタンダードな洋室と温泉露天風呂付きの部屋があり、全室ひとり宿泊も可能です。大きな窓から氷結したポロト湖が一望。静寂の風景を眺めていると、樽前山が時折ダイナミックな噴煙を上げ、生きている地球の息吹を感じます。日本にもこんな場所があったのかと、旅をして来た喜びがこみ上げました。
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オープン前から気になっている界ポロト。
アイヌの空気感を味わいたいですね。
モール温泉が1番気になっています!