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作家同期がつづる往復育児エッセー。子育てを通して見える風景とは

撮影/馬場磨貴

『ミルクとコロナ』

私が勤める二子玉川店は、ご家族連れのお客様が多く見られる。売れていった本のタイトルを眺めていると、いろいろなご家族のストーリーが見えてくる。

例えば育児の棚では、最初の贈りものである赤ちゃんの名前を一生懸命考えているところだなとか、生まれたばかりなのにもう離乳食の準備かなとか、小さいけれど他の子と違うところを心配しているのかな等。そんな中に、育児エッセーのタイトルを見つけると少しホッとする自分がいる。子どもと向き合う毎日でそれらを手に取るという行為に、なんとなく余裕を感じられるからだ。

文章を書くことを生業(なりわい)とされている方が、お子さんを持たれご自身の妊娠や育児体験を本にされることは多い。独特の捉え方と表現で綴(つづ)られる文面に感服し、読者は同じような体験に皆そうなんだなと安堵感(あんどかん)を覚えてほっこりしたりするエッセーも多い。家庭内での家事や育児参加のエッセーだ。がんばってはいるけれどなかなかうまくいかない、でも頑張ろう!な本は職場の同僚へ結婚や出産祝いのプレゼントにする方も見受けられる。

作家同期デビューである白岩玄さんと山崎ナオコーラさんの共著であるこの往復育児エッセー『ミルクとコロナ』は、それらとは少し違う感じだった。小さなお子さんを育てているお二人ではあるが、この本にはそういった概念はない。父親の育児参加を叫んだり、愚痴なるものを代弁したりという内容ではなく、山崎さんにおいては「育児が楽しい」とひたすらに書かれているが、聖人君子のような悟った内容でもない。

どちらにも共通して言えることは、ご自身のお子さんを所有しているとは思わず、ひとりの人として、家族の一員としてみているということだ。そんなことは当然のことのようだが、実は意外と難しい。

往復エッセーなので、時には疑問や質問を投げかけ、それに答えるやりとりがある。それは決して父親と母親の立場からというわけでもない。読んでいるうちに「区別」はもはやそんなに必要ではないと思えてきた。

世の中の急激な変化と成長する家族の形

やりとりは3年半にわたり、0歳児だったお子さんが4歳に成長された。その間に世の中が急激に変わったことといえば、本書タイトルにもあるコロナだ。書籍の中でも途中でコロナ前からコロナ後へと変わる。

いろいろなことを吸収し始めた年頃の子どもたちと家の中にこもった生活、その中でのリモートワークは思うようには進まなかったことが分かる。新たな世の中の変化について、自由に文章も書けなかったようだ。そんな状況で往復エッセーの間隔が長くなってしまった大変な時期を乗り越え、再びコロナ禍でのやりとりが始まる。そこには、現状をどのように家族で受け入れてきたか、悲観的というよりは前向きだ。

小さな子どもにコロナウイルス感染について説明するとしたら、どのように話すのかと考えてみた。「ウイルス 絵本」と検索し本を探して一緒に読むのか、「バイキン、バイバイ」と言いながらマスクや手洗いをさせるのだろうか。山崎さんのお子さんへの説明は、それを受けた白岩さんの文章にもあるように心に残り、脳内で久石譲の音楽が流れた。そしてそのあとに続く、この度のパンデミック・ストーリーの見解は大変勉強になった。

そこから何を思うかは、それぞれの自由ということも書き添えられている。少なくとも私自身もそのように捉えられる容量を持ちたいなと思うのだ。

個人の出来事を社会の動きに反映させ、世間の理想や設定を打破した内容には、もちろん心配や悩みも語られている。3年半の間に、お子さんの成長とともに家族のかたちが膨らんできたのが、どちらのエッセーにもうかがえる。

お二人の小説の背景には大切な家族のストーリーがあり、これからの作品もとても楽しみになった。

作家同期がつづる往復育児エッセー。子育てを通して見える風景とは
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PROFILE
岩佐さかえ

いわさ・さかえ
二子玉川 蔦屋家電 健康・美容コンシェルジュ
女性向けフィットネスジムにて健康・美容相談を受けながら、様々なイベントやフェアを企画。自身がそうであったように、書籍を通して要望にお応えできたらと思い、蔦屋家電のBOOKコンシェルジュに。「心と体の健康=美」をモットーに勉強の日々。

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