手軽にグラタン気分を。鱈とじゃがいものドフィノア

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんがリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回はベシャメルソースを作らなくても手軽にグラタン気分が味わえる、ドフィノアをご紹介します。
―― 冷水先生、こんにちは。今日もどうぞよろしくお願い致します。
冷水 はい、今日もどしどしリクエストに応えていきますよ。
―― 今日のリクエストは、いつも以上に読んでいる人の多くが「そう、そう!」と賛同してくれるものだと思います。
冷水 なんでしょう!?
―― 寒い日が続くので、熱々のグラタンを作りたいのですが、ベシャメルソースを作るのがおっくうです。簡単に作れて、それでもグラタン気分を味わえる料理はないでしょうか……、とのことです。
冷水 なるほど(笑)。
―― 私はすごくわかります、その気持ち! グラタンを食べたいけど、小麦粉とバターを練ってベシャメルソースを作るのって、やっぱり大変なんですよね……。
冷水 わかりました。じゃあ、今日はベシャメルソースなしでもトロッと仕上がる「グラタン・ドフィノア」を教えましょう。
―― ドフィ……ノアですか?

冷水 ドフィノアはフランスのドフィネ地方の郷土料理で、とてもシンプルなじゃがいものグラタンです。ベシャメルソースを使わなくても、牛乳と生クリームだけでトロッと仕上がるんですよ。
―― それは素晴らしい! でも、なんでトロッとなるんですか?
冷水 じゃがいもに多く含まれるでんぷん質のおかげなんです。本来は肉料理などの付け合わせとして食べるものなのですが、今日はメイン料理にもなるよう、鱈(たら)も加えて作ろうと思います。
―― 今の時期は鱈もおいしいですもんね、賛成です!
冷水 じゃあ、まずは鱈の下準備から。食べやすいように皮と骨を取り除いて、ひと口大にカット。塩を揉(も)み込んで30分ほどおきます。
―― 鱈は意外と大きな骨がありますからね。
冷水 鍋に鱈と白ワイン、芯を取り除いてスライスしたにんにく、ローリエを入れて、中火にかけます。
―― 鱈がふっくらして、おいしそうです〜。
冷水 煮汁がなくなる手前まで煮たら牛乳を加えて、沸騰したら弱火にして10分くらい煮ます。
―― 目を離すと牛乳が噴きこぼれそうですね。
冷水 弱火で10分ほど煮たら火を止めます。ローリエを取り除いたら、生クリームを加えましょう。

―― 生クリームは火を止めた状態で加えるんですね?
冷水 はい、生クリームは加熱すると分離しやすいので、火は止めておきましょう。
―― わかりました。
冷水 次に、主役となるじゃがいもの準備です。一般的にドフィノアにはメークインが向いていると言われますが、そこはお好みで。メークインはねっとりした食感、男爵やきたあかりはホクホクした感じに仕上がります。今日はきたあかりを使います。
―― 色々な種類で作って、食感の違いを楽しむのもいいですね。ところで先生、スライスしたじゃがいもは水にさらす必要はないんですか?
冷水 はい、というか、今回は水にさらしてはいけません。
―― そうなんですか! 私としたことが、ついいつものクセで水を用意していました……。
冷水 水にさらすとじゃがいものでんぷん質が落ちてしまうので、仕上がりがトロッとしなくなるんです。

―― あ、そうでしたね! ドフィノアの命はじゃがいものでんぷん質でした!
冷水 はい、なので今日はスライスしたじゃがいもはそのまま耐熱皿に敷き詰めていきます。皿にバターを塗るのもお忘れなく。
―― はい!
冷水 あとは牛乳で煮た鱈を流し入れて、オーブンで焼くだけです。
―― ん? 耐熱皿にアルミ箔(はく)をかけて焼くんですか?
冷水 じゃがいもにしっかり火を通したいので、まずはアルミ箔をかけて、190度のオーブンで40分ほど焼きます。アルミ箔に数カ所穴を開けておきましょう。
―― この段階ではまだチーズはのせないんですね。
冷水 じゃがいもに火が通ったらアルミ箔を取り、チーズをのせてシナモンパウダーを振ります。そこから5分ほど焼けば完成です。
―― たしかに、最初からチーズをのせて焼いたら、焦げちゃいますもんね。
冷水 シナモンも香りが飛びやすいので、最後の段階で加えてください。
―― あとはチーズがとろけるのを待つだけですね。

冷水 さあ、焼きあがりましたよ。グラタン気分、盛り上がってますか?
―― わ〜、グツグツしてておいしそう! シナモンがふわっと香って、食欲をそそります。
冷水 熱々のうちに召し上がれ。
―― う〜ん、チーズが濃厚で香り高い!
冷水 今日はグリュイエールを使いましたが、エメンタールもよく合います。もちろんピザ用のチーズでもいいですよ。
―― 具材がシンプルな分、チーズにこだわるのもいいかも。あと鱈の塩けがすごくいいですね。程よくほぐれた鱈がソースの一部になっていて、いい塩梅(あんばい)です。
冷水 お魚がないときはネギやマッシュルームなどを入れても。
―― ドフィノア……なんという包容力!
冷水 もちろん、じゃがいもだけで作ってもシンプルでおいしいですよ。その場合はソースに少しだけ塩を加えるとバランスがよくなります。
―― 色々な具材を入れて作ってみたいです!
鱈とじゃがいものドフィノア
材料(2人分)
-
鱈1切れ
-
じゃがいも3個
-
白ワイン30ml
-
にんにく1/2片
-
ローリエ1枚
-
牛乳300ml
-
生クリーム100ml
-
グリュイエールチーズなど30g
-
シナモンパウダー少々
-
塩適量
-
バター少々
- 鱈は皮と骨を取って、ひと口大に切り、塩を少々揉み込んで30分ほどおく。
- 鍋に1.の鱈と白ワイン、芯を取り除いてスライスしたにんにく、ローリエを入れ、中火にかけて煮汁がなくなる手前まで煮る。
- 2.に牛乳を加え、沸いたら弱火で10分ほど煮てローリエを取り除く。火から下ろした状態で生クリームを加える。
- 耐熱皿にバターを塗り、皮をむいて2mm程度の厚さにスライスしたじゃがいもを敷き詰める。3.を流し入れ、数カ所穴を開けたアルミで蓋(ふた)をして190度に予熱したオーブンで40分ほど焼く。いったん取り出し、チーズをのせてシナモンパウダーを振り、アルミは外して再び5分ほど焼く。