いしわたり淳治のWORD HUNT
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ありそうでなかなかない歌詞 『ありがとうございました』 

誰とでも話せる、ちょうどいい温度感

ありそうでなかなかない歌詞 『ありがとうございました』 

ほぼ日刊イトイ新聞で、阿川佐和子さんと糸井重里さんが対談をしていた。二人ともよくインタビュアーをされている印象があるけれど、意外なことに、二人ともインタビューをするのは苦手なのだという。

糸井さんは、自分はちゃんとしたインタビューは絶対できないと断言した上で、「どんな人と話すときでも『バーのカウンターでたまたま隣同士になったとして話しましょう』ということに決めたんです」と話していた。

たしかに、たまたまバーで隣同士になっただけと思えば、誰とでもそれなりにいい温度感で話せそうだ。私もこのところ、誰かと対談をさせて頂く機会が増えてきた。失礼のないように事前に相手のことを調べたり、質問や話題を用意したりすればするほど、本番で空回ってしまうこともある。

バーでたまたま隣り合わせただけ。その言葉を知っていたらどんなに良かっただろう。それとなく挨拶(あいさつ)から始まって、まともな自己紹介などしなくても、自然に話すうちに何となくお互いの仕事や性格や生活がわかり始める。また会うかもしれないから、変に冷たくはしないし、だからといって妙になれなれしくもせず、せっかくだから相手に楽しんでもらおうと、お互いの笑えるエピソードなんかを話していく。その夜、お互いがおもしろければそれでいい、そんな温度感の言葉のやりとり。

私は人見知りなタイプだから、これからは世界中がバーのカウンターなのだと思って暮らすことにしよう。ただ、問題は「バーなら酒がある」ということだ。酒の力を借りずに、「バーでたまたま隣同士になったように話せるか」というのは、もう少し訓練しておく必要があるかもしれない。

ありそうでなかなかない歌詞 『ありがとうございました』 

コタツ記事という言葉がある。この言葉が生まれたのは10年くらい前のことだそうで、初めはブログや海外記事、掲示板、他人が書いた記事などを総合して評論した、机の上だけで完結できる記事のことをそう呼んでいたらしいが、その後、少しずつ意味が変化して、現在は実体験や取材や調査もせずにネットやテレビなどメディアに流通している情報を再構成して書いたような、内容の薄い記事のことを“揶揄(やゆ)する”言葉になった。

改めてこれはいいネーミングだなと思う。いわゆる「コタツ記事」という言葉に漂う、えも言われぬ「なまぬるい温度感」と、「コタツ」という実家っぽい語感がぴったりである。

と書きながら、待てよ。この連載もメディアで見聞きした言葉について、一歩も外に出ずにああだこうだ書いているという意味では、立派な「こたつ記事」なのではないかしらと気がついた。

なんだかなあ。決してそんな生ぬるい気持ちでは書いていないのだけれど。もしかしたら、世の中のコタツ記事を書いている人も、まさか自分がコタツ記事を書いているなんて、気づかずに書いているのかもしれない。

<Mini Column>酔っ払いがいた頃

新型コロナウイルス蔓延(まんえん)防止等重点措置が延長になって、気楽に旅行に行けない日々が続いている。何もすることのない週末、息子たちと一緒に近所の公園へ行くと、タバコの吸い殻が刺さったチューハイの缶がベンチに置いてあった。行き場のないストレスが凝縮した塊に見えた。息子たちが空を指すので、見上げると飛行機が飛んでいた。誰がどこへ何をしに行くのだろう。

学生時代に青森在住のままデビューした二十数年前、レコーディング、ライブ、取材でほぼ毎週末、飛行機で東京に通っていた。初めは旅行気分で楽しかった飛行機もいつしか苦痛に変わり、いかに早く眠るかしか考えなくなった。

今では考えられないが、当時はまだ飛行機に喫煙席があった。飛行機でも吸えたくらいだから、ほとんどの飲食店は当然吸えたし、一箱は200円ちょっとで、肺がんリスクに関する恐ろしい文言も今ほど大きくは箱に書かれていなかった。私はタバコをやめてもう相当な年月が経つけれど、喫煙者の肩身は日増しに狭くなっているように思う。

もしかしたら、二十数年後には酒が今のタバコのような立場になっているかもしれないと思った。冷静に考えてみてほしい。いい大人が酔っ払って店で大声を出したり、暴れたり、記憶をなくしたり、しまいには道端の植え込みで寝ていたりするのは、どう考えても恐ろしい光景である。そのうち酒がどんどん値上がりして、自宅など限られた場所以外では飲酒できないという未来が来ても、何ら不思議ではない気がする。

「えーっ、まだ店で酒飲めたの?」「酔っ払って外を歩くってどんな感じだった?」息子たちにいつかそんなことを聞かれる日が来るのかも知れないと、ふと思った。

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