次女の小学校生活から「こんな教育を受けたかった!」

思い思いのスタイルで、自然と本を楽しめる図書館
続いて、朝の親子図書タイム。朝7時50分、娘の小学校に行くと、図書館のあちらこちらで、親子が仲良く本を覗(のぞ)き込んでいる光景を目にする。学校の開始時間は8時20分だが、早く着いた親子は、教室には入れないけれど、図書館で、本を読んで良いことになっている。

図書館といっても、日本の小学校のような立派な「図書室」があるわけではなく、本棚が「壁」の役割を果たし、なんとなく長方形のスペースが作られ、その真ん中に、カラフルなカーペット、小さな椅子やテーブルが並べられていて、子どもたちは思い思いのスタイルで本を読むことができる。カーペットに寝転んでいる子もいれば、足を前に投げ出し、本棚に寄りかかるようにしてくつろいでいる子もいる。きちんとした図書室ではないので、もちろん扉もない。教室から教室へ移動する間、お手洗いに行く途中、子どもたちはいつでも本に触れられる環境にある。わざわざ行く感覚がないので、気軽に本を楽しんでいる様子が窺える。娘は、朝の図書タイムがお気に入りで、早起きをして、授業前の読書時間を楽しんでいた。おかげで、13歳になった今でも本が大好きで、本屋さんが心のオアシスと言い切る。

さらには、自分の好きな絵本や本の主人公に扮してパレードをする「BOOK PARADE」もあった。赤ずきんちゃんの狼(おおかみ)もいれば、魔女の姿も。娘は、『3びきの子ぶた』の絵本を片手に、子ぶたになりきって行進した。「あの子はなんの格好?」「絵本はなんだろう?」とパレードをきっかけにして、お互いの本に魅せられ、本を交換して持ち帰るなんていうこともあった。本は勉強の道具ではなく、楽しむものというイメージが子どもたちの心に残るようだ。我が身を振り返ると、小学校の頃は、本は読まされている感があった。読書感想文のため、夏休みの宿題のために仕方なく読む。こんな風に、自然と本を楽しめる環境にあったならば、もしかしたら、もっと本好きになっていたかもしれない(笑)。

政治に熱く、世の中の動向に関心
そして、最も印象的なのが、子どもたちの政治への関心だ。こちらに来た2016年は、ちょうどドナルド・トランプ VS ヒラリー・クリントンの大統領選挙の直前だった。授業では、大統領候補それぞれの主義主張や公約を比較し、掘り下げる。子どもたちがさらに探求できるように、図書館には、選挙や大統領候補に関する本や絵本の特別コーナーが設けられていた。自(おの)ずと、家の食卓でも話題は選挙に及び、「この候補の主張を支持したい」「こちらの候補は何を言わんとしているのかよくわからない」と娘たちが熱弁することも。
民主党支持者が多いとされるNY。大統領選翌日、娘たちの学校ではトランプの勝利にショックを受け、涙する子どもたちや先生が続出した。学校からは、「子どもたちや先生はもちろん、親御さんもカウンセリングを受けたい人は申し出て」と心の状況を心配する異例のメールが届いた。それくらい子どもも大人も、世の中の動向に関心を持っている。政治に熱くなる。少し羨(うらや)ましいような気がした。

学校で学ぶべきことはなんだろう? 国語も算数も、知識を蓄えることはもちろん大切だと思う。でも、それと同じくらい重要なのは、この多種多様な世界で、互いのことに興味を持ち、理解し、尊重しあう力。自らしっかりと考え、意見を持ち、どんな状況にも柔軟に対応できる力。そんな「生きる力」を養うことが大切なのではないかと、娘の教育を通して考えさせられるのである。
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久保ちゃん、いつも身近な目線でのレポートとても面白く読んでいます。自分達の時代と異なり、今の時代はWEBもあり本なんて・・って思うかもしれないけど、本は色々な想像を働かすとても重要でかつ色々な目線での気が付かなかった目線を教えてくれる。年齢を重ねてさらに好きになったりしますね。その環境大事ですね。大人もたくさん本を読みましょう。久保ちゃんのすばらしい目線。
学校で政治に関して意見を言い合うってのは、日本にはない教育ですね。時事テストで誰が総理大臣?という問題は出ても、その主義主張を深く議論することはないですね。興味深いポイントでした。
今回も素敵な記事を楽しく読ませて頂きました。アメリカの自立心を育てる教育は素晴らしいですね。褒めて伸ばすところも好き。私もそんな教育を受けたかったと思います。でも、改めて自分が日本で学生の時は嫌だった掃除文化とか、アメリカにはない家庭科の授業とか日本も素晴らしいと思える!感謝です。