〈240〉より広さを感じる余白のある家。アートや香りで居心地良く

Aさんご夫妻(40代)
千葉県柏市 / 築15年 / 70㎡ / 総工費1300万円
都心から少し離れた70㎡のマンション。実際の広さ以上に、全体的にゆとりを感じられる住まいです。リノベーション前は、3LDKと細かく仕切られた個室が多めの間取りでしたが、広めのLDKと寝室という1LDKに変更。さらに、大きめのウォークインクローゼットとシューズクローゼットを作り、たっぷり収納ができるようにしました。同じ広さなのに、リノベーション後のほうが広々と感じられます。
在宅ワークはほとんどないので、Aさんご夫妻にとって家はくつろぐ場所。「広いリビングのソファで本を読んだり、音楽を聴いたりしたい」「スッキリした空間を眺めながら、リビングでくつろぎたい」などの希望がありました。そこで、最初は「広さとは何か?」を、お互いに考えることから始めました。そして、広さ=余白を感じることだと確認し合い、空間作りを始めました。

広めのLDKには、ソファ、ダイニングテーブルと椅子、アンティークの小さめの食器棚といった、最小限の家具だけにしています。あえてテレビは置いていません。テレビ台がないだけで、視覚的にも余裕を感じます。そして、「なんとなくテレビを見てしまう」ということもなく、時間にも余裕を持つことができます。
印象的なソファは、広島のインテリアブランド・ALGORHYTHM(アルゴリズム)のもの。奥行きが広いので、ゆったりと座れます。張り地はお二人で悩まれたそうですが、Aさんの希望で淡いピンク色のなめらかな生地を選びました。
そして、そのソファの上の壁には、アーティスト・増田沙織さんの作品を飾りました。ここにアートを飾りたいと、壁に段差をつけてギャラリー風に。増田さんの個展を訪ねたとき気に入った作品があったのですが、サイズが合いませんでした。そこで、この壁に合うように、横長の作品を依頼しました。作品のブルーとソファのピンクが程良くコーディネートされた、リラックスできるスペースです。

さらに、ソファに座ると、ダイニングを眺めることができます。大きめのダイニングテーブルには、椅子が2脚。これらは、結婚したときに買ったもの。「お金がないときに頑張って買ったなと、懐かしく思い出される大切な家具です」とAさん。余白のある空間作りで、大切な家具が主役になる、アートのような風景です。

余白のある空間作りの、もう一つの特徴は玄関周りです。玄関から続く廊下は広めにし、収納量たっぷりのシューズクローゼットを併設。家の顔である玄関周りに余裕があると、家全体が広く見えます。
シューズクローゼットは玄関からの土間続きで、靴のまま入ることができます。扉はつけずに、収納というよりも生活空間としてとらえています。ペンダントライトには、以前の住まいで使っていたCLASKA Gallery & Shop “DO”のものを使うなど、オープンにできる美しさにこだわっています。

さらに玄関には、お気に入りの香り、イタリアのDR.VRANJES(ドットール・ヴラニエス) のディフューザーを置きました。余白という視覚的な面だけでなく、香りも活用してゆったりとした雰囲気を作っています。
家にいる時間が長くなり、多くの人が「心地良い暮らしとは何だろう?」を考えていると思います。それぞれの人にとって、答えが違っていい。今回のAさんご夫妻の場合は余白。自分たちにとって必要なものだけをセレクトすることにより、余白が生まれ、心地よい暮らしを実現しました。
Aさんご夫妻に聞く
リノベーションQ&A
Q1 リノベーションで一番大切にしたことはなんですか?
「明るさと快適さ」です。 明るさとは、部屋の中に朝日が気持ちよく入ること。そして、内装・インテリアにも明るさを大切にしました。 快適さとは、暮らしやすい生活動線と十分な収納、ゆとりのある空間です。

Q2 自分たちが想像していた以上のことはありましたか?
図面で見ていたより、実際の家のほうが広く感じられました。そして、造作のドア、アート作品、家具、カーテンなどが入ったら、想像以上に家全体が豊かな空間になりました。週末は家で過ごすことが増え、LDKで音楽を聴きながら、ソファでゴロゴロするのが楽しいです。
Q3 リノベーションのプロセスで楽しかったことは?
最初に間取りを考えるとき、ものすごくワクワクしました。それから、床、タイル、壁の色、照明などを選んでいく過程、プラスしていく作業がとても楽しかったです。
構成・大橋史子