楽園ビーチ探訪
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神が作りし箱庭か 鳥取・浦富海岸の絶景 ジオパークを歩く

浦富海岸を含む山陰海岸ジオパークは、さまざまな時代の地形や地質がそろう「地形・地質の博物館」=鳥取県岩美町

当初、鳥取県を訪れたのは、鳥取砂丘が目当てでした。それが、たまたま泊まった岩美町の民宿で、壁に貼られた浦富(うらどめ)海岸のポスターを見て、一目ぼれ。さらに生まれも育ちも在住も鳥取、同宿の女性いわく「鳥取県強火(つよび)推し(熱狂的に愛する)」の女子トークで興味津々に。浦富海岸にちょっと寄り道することに。

連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する筆者が訪れた、各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。

アニメ「Free!」のロケ参考地、岩美町

鳥取砂丘の存在が大きいため、砂丘のイメージが前面に伝わりがちな鳥取県。でも、東西120キロあれば、東部・中部・西部で言葉も違うし、文化も違う。そして推しのアニメも違うとか。西部の境港は、故・水木しげる氏の出身地ゆえに『ゲゲゲの鬼太郎』。中部の北栄町は、作者の青山剛昌氏の出身地ということで『名探偵コナン』。そして東部の岩美町は作品のロケ参考地になっている『Free!』。実は、昭和・平成・令和にわたっての人気アニメゆかりの地がそろっています。

鳥取県推しの彼女がファンのアニメ『Free!』にも登場している浦富海岸は、西は駟馳山(しちやま)から東は兵庫県境の陸上(くがみ)岬までの、東西約15キロの海岸線を指します。さらに視野をワイドにしてみれば、西は鳥取市青谷町、東は京都府京丹後市の経ヶ岬(きょうがみさき)までの東西約120キロは山陰海岸ユネスコ世界ジオパーク。浦富海岸は山陰海岸ジオパークにも含まれています。

変化に富む地形、海食の進み方がくっきり

山陰海岸ジオパークの大地ができる過程は、大きくは三つの時代に分かれます。「日本が大陸の一部だった時代」「大陸から離れ、海水が流れ込み日本海ができた時代」「日本列島が生まれ現在の姿になる」まで。それぞれの時代の特徴的な火成岩類や地層、砂丘などが見られるのです。

鴨ヶ磯(かもがいそ)の手前の蜩(ひぐらし)洞門。透明度もバツグン!
鴨ヶ磯(かもがいそ)の手前の蜩(ひぐらし)洞門。透明度もバツグン!

浦富海岸でみられる主な岩石は、3000万年前(大陸の一部だった頃)にマグマが冷えて固まった花崗岩(かこうがん)や石英斑岩(せきえいはんがん)、約2000万年前(日本海が形成される頃)の火山活動による火砕流の堆積(たいせき)物である凝灰角礫(ぎょうかいかくれき)岩、約300万年前(日本列島が誕生する頃)の溶岩が固まった安山岩や流紋岩など。浦富海岸をはじめとする山陰海岸ジオパークが「地形・地質の博物館」と呼ばれることに納得です。

浦富海岸には離れ岩や洞窟が多く、変化に富んでいます。目の前で見ている地形も、海食がどのように進んでいったかがわかると、面白さも倍増。たとえば五つの離れ岩からなる菜種五島。かつては地続きのひとつの岬が、波風によって浸食され、海食洞(洞窟)が形成。さらに浸食され、洞窟が貫通した海食洞門に。やがて海食洞門の天井部分が落ちて、分断された離れ岩のできあがり。いろんな段階や条件の海食を見ることができるのです。

こちらが菜種五島。一番大きな島が菜種島。春には菜の花が咲くことが名前の由来
こちらが菜種五島。一番大きな島が菜種島。春には菜の花が咲くことが名前の由来
花崗岩の礫(れき)が敷き詰まった、菜種島へ続く道。かなり歩きづらい……
花崗岩の礫(れき)が敷き詰まった、菜種島へ続く道。かなり歩きづらい……

菜種五島、鴨ケ磯……白砂と透明な水、「穴場」の絶景

菜種五島へは、県道から浜へ下りていくこともできます。階段は急こう配な上に、浜には花崗岩がくだけた礫(れき)がごろごろしているので、足元はかなり不安定。下ばかり見て歩き、ふと見上げると、視界いっぱいに高さ60メートルの菜種島がドーンと鎮座。菜種島の前には、離れ岩が直線に連なり、斜めに柱状節理が走る岩脈も障壁のように立ち上がっています。

近くの菜種五島よりも年代が一桁違う、若い黒島
近くの菜種五島よりも年代が一桁違う、若い黒島

県道から菜種五島を見下ろすと、その右手後方にひとつだけ、やや黒っぽい岩礁の黒島が浮かんでいます。これだけ、凝灰角礫岩。菜種五島と黒島の間には、断層が走っていると、推定されています。

菜種五島の近くの鴨ヶ磯(かもがいそ)も、駐車場から遊歩道で浜へ下りられます。これは菜種五島のよりも、やや長く、アップダウンがあります。けれど、展望台から見る日本海や高い位置から見下ろす岩のフォーメーション、蜩(ひぐらし)洞門の向こうに見える青い海など、たどり着くまでの見どころもたくさん。

展望台から見下ろす小鴨ヶ磯(こかもがいそ)。浜へ向かう道程も楽しめます
展望台から見下ろす小鴨ヶ磯(こかもがいそ)。浜へ向かう道程も楽しめます

鴨ヶ磯はキラキラ輝く白砂の浜と、離れ岩が折り重なるように浮かぶ、絵になる入り江。まるで、神様が作った箱庭のようです。砂を手にとってみると、長石や石英などの白や透明の砂粒。透明度も水の存在が感じられないほどクリア。海に浮かぶ岩の中には穴が貫通した洞門もあります。人もあまりおらず、穴場感もたっぷりな絶景です。

離れ岩が折り重なる鴨ヶ磯。気の遠くなる年月をかけて、海食によって生まれた絶景
離れ岩が折り重なる鴨ヶ磯。気の遠くなる年月をかけて、海食によって生まれた絶景

浦富は「山陰の松島」か? いや「浦富は浦富」

入り組んだ海岸線の浦富海岸は、日本三景・松島になぞらえて、“山陰の松島”や“西の松島”とたとえられることがあります。けれど文豪・島崎藤村は紀行文『山陰土産』の中で、それに異を唱えます。松島は岸から離れた島々の面白さがある。一方の浦富は岸に寄り添う島々。海岸全体が積み重ねる感じで迫ってくるのが特色。「松島は松島、浦富は浦富」。別ものの美しさがある、と。

浦富海岸の何がこんなに心に響くのかと考えていたところ、藤村さんの指摘でその答えがすっきり腑(ふ)に落ちた気がします。文豪の観察眼の鋭さに、敬服です。

【取材協力】
山陰海岸ジオパーク推進協議会事務局 https://sanin-geo.jp/know/geosites/
岩美町観光協会 https://www.iwamikanko.org/

フォトギャラリー(クリックすると、写真を次々とご覧いただけます)

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