自分にやさしく、周りにやさしくするべき時があるとすれば今

戦争をスマホで見るようになってしまった。2022年2月末にはじまったロシアによるウクライナ侵攻について、そう感じた人も多いのではないでしょうか。
ウクライナの人々はほんの少し前には、家族や友人と街を歩き、カフェに行き、子供たちは学校に行っていたはずです。戦争が起きて、何の罪もない人が砲撃で亡くなり、美しかった街が炎に包まれて跡形もなく瓦礫になっていく。子どもを守れなかったと泣き叫ぶ親の姿が何度もニュースで流れていました。まだ少年の面影を残すウクライナの大学生が銃を取り、とても怖いけれど祖国を守ると語ります。一方で若いロシア兵も祖国に帰ることなく、亡骸(なきがら)となっています。
もちろん世界を見渡せばウクライナでの戦争の前にも、内戦が続くシリアでは数百万人単位の難民が出ていますし、紛争が続くパレスチナのような土地もあります。こうした悲劇にもっと向き合わなかった欧州先進国のダブルスタンダードという批判はあるでしょう。一方でウクライナがヨーロッパの国であり、近隣国であるロシアの軍事的脅威もあいまって、欧州先進国が自国に直接的に関係があると肌身に感じたともいえます。
スマホを通して見える不条理と無力感
日本に暮らす私たちが通勤電車でスマホを見れば、困窮する戦禍の人々の様子や、ウクライナ在住の日本人が日本語で語るツイートや画像を見ることができてしまいます。

でも悲惨な状況に対し、スマホでつながっている私たちには何もできません。画面の向こうの人々は空爆を避け、地下鉄の床で寝ています。今、さっき見た人はもう砲撃で亡くなっているかもしれません。不条理と言えば、こんなに不条理ということもありません。世界がつながっているがゆえに、あなたは無力感を覚えて、平和に生活していることに罪悪感を覚えるかも知れません。
世界がコロナ禍から立ち直っていないなか、まったく合理性のない暴力を止められない現状を私たちは見ています。現地では核兵器が使用される可能性さえ示唆されています。もしかしたら長い歴史のなかで、これまでの私たちはたまたま束の間の穏やかな平和な時期に暮らしていたのかも知れません。日本も戦後80年近く経っていますが、それは偶然、平和だったと。
海の向こうの戦争で大勢の人々が亡くなっていくことに何もできずに、情報だけが入ってくる。コロナで外出は減り、外に出れば誰もがマスクをしていて、表情もわからない。こんな環境では気が滅入ってしまうのは当たり前ですし、他者への共感力の高い人ほど辛く感じることでしょう。
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深い共感を持って、読み進めて深い感銘に打たれていると、なんと今回が最終回。
塩野さん、今まで本当に有難うございました。
貴方の素晴らしい「パイロット(水先案内)」にどれだけ救われたことか。
塩野さんの明確な指針を心に秘めて、この難航路をを渡っていきたいと思います。有難うございました。
先日連載を知ってバックナンバー含めて楽しく拝見していたのですが、連載終了とのこと残念です。意外と反応が少なかったのでしょうか?読者の方から質問が来なかったのでしょうか?&wの方で東京の台所と並んでたら良かったのでしょうか?以前近所でお気に入りの本屋が閉店したのですが、同じようなショックを受けています。
政府からも自助が大事と言われて何だかモヤモヤさせられる時代の中で、ビジネスの第一線で活躍されている塩野さんの冷静かつ他者への思いやりを感じられるメッセージを読んで、自分も日々の仕事に前向きに取り組もうと思っていた所でした。
塩野さん、担当の編集者さん、どうもありがとうございます。たまに連載読み返したいと思います。
因みに、近所の本屋さんはその後少し形を変えて復活しました。また違った形で塩野さんの文章が読める日を楽しみにしています
すみません、今更ですが塩野さんは本を出されたり他の媒体でも発信されてるので、少し失礼なコメントに感じたので補足させて下さい。
この連載はビジネス系のメディアより幅広い読者層に向けて書かれていたかと思うのですが、個人的にはその点を特に良いなと感じていました。
仕事に取り組む姿勢は人それぞれ、同じ人でも人生の時期により変わり得るものかと考えますが、この連載では、様々な立場の方が自分の持ち場で少し頑張ろうと思えるようなメッセージを伝えていただいていたかと感じます。改めてありがとうございました。
ありがたい言葉でした。
不意に意味もなく、簡単に涙がこぼれるようになりました。
無理せずに暮らさないといけませんね。
連載が終わってから拝読させていただきました。
最近は戦争などの暗いニュースばかりで、見ているだけで辛くなってしまうことが多くなりました。
人と会う機会が減って、その辛さを吐き出すことも難しい人もいるのかもしれません。今繋がっている人との縁を大切にしていきたいです。