海と山、湯と花に恵まれた観光文化都市 静岡県・熱海市

東京駅から新幹線で50分ほど。相模灘を見下ろす急斜面にホテルや飲食店、土産店、民家がひしめく熱海は全国有数の温泉地。
コロナ禍で巣ごもりぎみの日、春めく日差しに誘われてふらっと熱海を訪れた。駅前の思いのほかの人出の多さに、変わらぬ人気ぶりを実感する。駅前の「家康の湯」にも数人が足を浸していた。
便利なバスで市内名所めぐり
坂と断崖の町・熱海は1日乗車券(800円)で気ままに乗り降りできる市内名所めぐりの「湯~遊~バス」が便利である。

最初に下車したのが海岸沿いの「お宮の松」。明治時代、尾崎紅葉の小説『金色夜叉』で、悲恋物語と熱海の名が全国に知れ渡ったことをしるす「貫一お宮」の銅像が立っている。

その背後から南に延びるのが青い相模灘を前にする白砂とヤシ並木の「熱海サンビーチ」。夏はカラフルなパラソルや水着で華やぐ熱海のシンボルステージだ。朝に昼に夜に、いつの季節も絶好の散策地や休息地として人影が絶えない。
しばらくはバスに乗らずに海岸沿いを「親水公園」まで歩く。その先の「マリンスパあたみ」に立ち寄って、海を見下ろしながら日帰り入浴やウォータースライダー、プールなどいろいろに温泉を堪能した。

湯遊びのあとは周遊バスで断崖の絶景「錦ヶ浦」や見学施設の「熱海城」、ハーブやバラの花の楽園の「アカオハーブ&ローズガーデン」を経由して市街地へ。途中下車して海を眼下に明るくひらける熱海市街をパノラマで見下ろすのも爽快だ。
芸妓の姿につやめく町

市街地に戻って起雲閣西口から少し歩く「起雲閣」は、3000坪の敷地に“海運王”と呼ばれた内田信也が大正時代に建てた日本建築に始まる別荘。昭和初期からは”鉄道王“と呼ばれた実業家・根津嘉一郎が建築美を駆使した洋館を増築し、庭園を整えた。“熱海の三大別荘”で知られている。

別荘は戦後すぐに旅館として生まれ変わり、熱海を代表する名宿として名をとどろかせた。山本有三、谷崎潤一郎、太宰治、舟橋聖一ら多くの文豪に愛された部屋がそれぞれ保存展示されている。

近くの「熱海芸妓(げいぎ)見番」では毎週土・日曜に「華の舞」が催される。出入り芸妓さんの姿にあたりがつやめく。

バスルート沿いに駅まで歩く道に噴出する源泉の大湯間歇(けつ)泉や小沢の湯、野中の湯に温泉郷・熱海を実感。しらす、桜エビの名物「三色丼」でおなかを満たした。

〈交通〉
・JR東海道新幹線熱海駅下車
〈問い合わせ〉
・熱海市観光協会
0557-85-2222
※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。