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「日本記録」という重圧と苦しみ 鈴木健吾選手はどう乗り越えたのか

3月6日に開催された東京マラソン2021。日本勢トップの4位でゴールする鈴木健吾選手=代表撮影

年を取ると人間誰でも涙もろくなるというのは本当のようだ。今年開催された東京マラソン2021(3月6日)のフィニッシュ直後のインタビューで、男子の日本人トップで総合4位に入った鈴木健吾選手(26=富士通)が涙を流しているのをテレビで見て、なんだかわからないけど涙が止まらなくなった。「昨年、日本記録を出してから1年間とても苦しかった。きょう乗り越えられたと思います……」。そんな選手の言葉が筆者の涙腺を刺激したのだ。

きっと他人には窺い知れない重圧があったのだろう、と想像はできたが、「1年間とても苦しかった」というのは尋常ではない。それについて改めて本人の言葉で聞いてみたい。11日午後に開かれた鈴木選手のオンライン会見(ナイキ主催)に参加した筆者の最大の関心は、そこにあった。鈴木選手は静かに語り始めた。

「日本記録」という重圧と苦しみ 鈴木健吾選手はどう乗り越えたのか
鈴木健吾選手 ナイキ提供

「日本記録保持者になって1年間、周りからの期待だったり、たくさんのものが知らず知らずのうちに重圧となって、苦しいなという気持ちになっていました。出る試合、出る試合、ありがたいことですが注目されて、自分自身でも、もっともっとってプレッシャーをかけているようなところもあって……。まだまだ強い選手はいっぱいいて、本来なら僕は挑戦していきたい立場なんですが、周りからはやっぱり日本記録保持者として追われる立場っていうふうに見られる。それが、苦しかったなっていうのはありましたね」

昨年の日本新記録「2時間4分56秒」

鈴木選手が2時間4分56秒の日本新記録を打ち立てたのは昨年2月のびわ湖毎日マラソンだった。大迫傑選手(ナイキ)がマークした2時間5分29秒の日本記録を大幅に更新し、日本人としては初の2時間4分台という快記録だ。レース後、鈴木選手自身が「こんなタイムが出るとは思っていなかったので、正直、自分がいちばんビックリしています」と語ったほど。ちなみに、その前年(2020年)の同じ大会では2時間10分37秒の12位に終わっている。

「日本記録」という重圧と苦しみ 鈴木健吾選手はどう乗り越えたのか
昨年2月のびわ湖毎日マラソン。日本新記録で優勝した鈴木選手=朝日新聞社、金居達朗撮影

本人的には、いきなりトップに躍り出てしまったという感覚だったのだろうか。

とはいえ、今回の東京マラソンでの記録も2時間5分28秒で自らが持つ日本記録に次ぐ歴代2位の成績なのだ。これが、冒頭に紹介した「きょう乗り越えられた」ということなのか。鈴木選手はプレッシャーを克服できたのは周囲の支えがあったからだと振り返った。

「日本記録」という重圧と苦しみ 鈴木健吾選手はどう乗り越えたのか
びわ湖毎日マラソン優勝から一夜明け、記者会見を終えて富士通の福嶋正監督(右)と笑顔で握手する鈴木選手=2021年3月、代表撮影

「私の周りにはトレーナーやスタッフだったり、もちろん妻もそうですけれど、たくさんの支えがあって気持ちをリセットできた。もう一度、チャレンジャーとして東京マラソンに臨むことができたことが、今回のような結果につながったのだと思います」

「1回日本記録を出しただけじゃないか」というアドバイス

“妻”については後述するとして、いったい周囲のどんな言葉が奏功したのか?

「いちばんよく言われたのが、たかがまだ1回日本記録を出しただけじゃないか、日の丸背負ってる立場じゃないんだから、もっと自分らしくチャレンジャーでいけというふうな言葉でした。いろんな人から同じようなことを共通して言っていただいたので……」

なるほど、“守るな、攻めろ!”というアドバイスが効いたということのようだが、当日は必ずしも絶好調でなかったというから驚きだ。

「元旦のニューイヤー駅伝まではしっかりと距離を増やしつつ駅伝向けの練習って感じだったのですが、駅伝が終わると調子が上がらず、うまくマラソンの練習に切り替えていくことができませんでした。1月中旬くらいから少しずつよくなったのですが、2月に入るとヒザが気になる状態が続いて、1週間以上ジョグもできない時期がありました」

こうした不調や練習不足を抱えた鈴木選手が考えたのが、レース中盤で“早めに仕掛ける”という作戦だった。

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